第10話 初めてのダンジョン攻略 その2
町の外へ出たショウはナビリスが目の前に表示してくれた半透明の地図を見ながら、下級ダンジョンへ向かっていた。
オーウェンの町にあるダンジョンと言っても言葉通りに街のど真ん中にドンっと置かれてるわけが無い。
今ショウが向かっているダンジョンはオーウェンの街から西側の門から外へ出て、そのまま西に見える森に一直線に徒歩で約一時間程の距離を石畳みで整備されている道を徒歩で歩く。
冒険者の街として栄えてる都市オーウェンの町。ダンジョンまでの道が綺麗に整備されており、城門の入り口にはダンジョンで狩った魔物を運ぶ為に荷馬車を行っている商会も居る。石畳みの端には屋台がそこらじゅうにあり、美味しそうなタレを着けた魔物の串焼きや、氷の魔導具を使ったひんやりとした、飲み物。ランプなどの雑貨品。
それにポーションや、毒消しなど売っている屋台もある。
森の入り口にはコンクリートの柵で覆われたこれも立派な砦が設置され、中には荷馬車が大量に何台も用意している。砦の横に設置された食堂が冒険者達で賑わっている、二階は泊まれる部屋があるようだ。砦の城門入り口のすぐそばに広い受付が設置されており、槍を持った門番係の兵士達が楽しそうに喋っている。受付まで近づくと一人の兵士がこちらに気づき、話しかけられた。
「おーい、君もダンジョンに潜るのかい?それなら、ギルドカードを提出してくれるか」
どうやら、ここの受付で出入りの管理をしてるらしい。
「どうぞ」
「…Dランクか。よし、門を潜っていいぞ。だが、その前にこちらの書類に名前とランクを記入してくれ」
紙と羽根ペンを渡されたので、名前、冒険者ランクと職業を記入して。兵士に渡して、門の中に入った。砦の中には魔物を運ぶために集まった冒険者や、探索を終えて食事をする者、怪我を負った冒険者が治療しに行く者もいる。
「銀貨5枚で支援魔法かけますよー!三人で一人タダですよー!」
得意な魔法で小遣い稼ぎをしてる魔法使いも居る。
砦の奥に三つの巨大な建物が薄っすらと見えてきた。
オーウェンの町にあるダンジョンの入り口は三つとも、隣同士で固まっている。砦の中に入って来たパーティーに入っておらず、防具を一切身に着けず、一本のロングソードだけを腰にぶら下げた青年に、食事をしていた冒険者達が、疑わしい目線を向けてきたが、気にせずに、三つの建物へ歩き続けた。
手荷物を持っていなくロングソード一本ぶら下げて、歩き続けるショウに周りの冒険者達からは異質に見えた。丁度近くを歩ていた冒険者のパーティーから一人がショウへ寄ってくる。
「おい君。見たところDランクになったばかりの新顔だが、一人じゃまだダンジョンは早いぜ。それに一発食らったら死にそうな装備だ。パーティーを組んでから潜った方がいいぜ」
ガッシリとした体付きで傷だらけの鉄製のプレートメイルを着こみ、ロングソードを背中に背負い、腰に、投げナイフやポーションが入ったウエストポーチ付けた同い年程に見える青年がショウに声をかけた。
「ん?気にするな。今日はダンジョンがどんな所か確認しに来ただけだよ。ちょろっと見たら直ぐに戻るよ」
『ちょろっと見たら攻略するんでしょ?全く…』
『何を言ってるのかなナビリス君。僕はちょろっと見たら帰る予定だよ?』
『信用できませんね…』
「お、そうか。一様気をつけろよ!じゃあな」
冒険者は手を上げながらそう言って、パーティーの元へ戻っていった。
真っ直ぐ整えられた道を進み。三つの建物に着いた。
ショウは左の建物に入った。ここが今日挑戦する下級ダンジョン『獣の洞窟』。
中に入るとそこは意外に広かった。正面に石で囲われた開口があり、左の広場には身を覚えがある魔法陣が地面に映し出されていた。
「(これは転移魔法陣?どうして物騒な魔法陣がここに…?)」
転移型の魔法陣は確かに便利だが。扱いを間違えると空間が大変な事になる。
『……という事です』
『分かった。ありがとうナビリス』
不思議と気になったのでショウが知る限り一番物知り博士のナビリスに尋ねてみれば、この世界に存在するダンジョン全てに帰還用の転移魔法陣が使われており、洞窟型のダンジョンには五階層事に設置され、塔型のダンジョンでは全階層に安全に帰還できる魔法陣が設置されてるようだ。他の世界より難易度は甘めだが、謎が解けたので、他の事を気にせずにダンジョンに踏み込んだ。
『獣の洞窟』
下級ダンジョンの一つで、Dランクパーティーが二週間で踏破出来る目安とされる。
階層は20階まであり、準備さえ怠らずに慎重に挑めば攻略できるダンジョン。入り口は大きな石で覆われて、地面は石畳みで整られていた。光が無く、真っ暗だが、ショウには神眼があり、昼間と変わらない明るさで見えていた。目の前に表示させた地図通りに進み、10分もせずに下に降りる階段を見つけた。
――つまらない。
地下一階は上の階とは違い、土や岩が剥き出しになった通路が広がっていく。変わらず目の前に表示された地図通りに進んでいく。分岐点を右折すると少し先に魔物を発見した。
見慣れたゴブリンだった。
足を止めず瞬殺した。
――つまらない。
――つまらない。
『一気に進む』
『畏まりました』
瞬殺されたゴブリンを放置し、先に進むことにした。
ショウは目にも止まらない速度でダンジョンの中を走り抜けていく。魔物、冒険者、転移魔法陣。全てを無視し、真横を走り抜けていくショウに魔物や冒険者が反応し振り向くが何も居なかった。
45秒後。そのまま10階まで降りると、目の前には大きな扉があり、その周りには冒険者達が休憩していた。
ナビリスから教えてもらった情報でダンジョンの各10階には門番がおり、倒すことで下の階に降りられることだった。
ショウに気づいた冒険者達がその装備に驚いているが、誰も何を言って来なかった。
視線がショウに集中してると、目の前の扉が開いた。どうやら、先の人が終わったらしい。
ショウは扉が開いた瞬間を狙い、物凄い速度で中に入り、そこに居た門番を一閃で真っ二つにし、下の階に降りた。この間に経った時間は若干2秒。ショウの姿に驚いていた冒険者達は、いつの間にか消えていた彼に混乱した。
11階に降りた後も、雷より速い速度で進んでいき。20階でも同じ事をして依頼品のミノタウロスの角を手に入れた。20階の門番を倒して現れた扉を開き中へ進むと、そこは何も無い空間だった。いや、一つだけ、奥の台座にはバスケットボール程の大きさをした宝玉、ダンジョンコアが置いてあった。普通なら、このダンジョンコアに触れた瞬間、ダンジョン攻略者として、地上に転移される。
しかし、その前に一つ確認することがあった。
「(見つけた…本物のダンジョンコア)」
今の場所から地下深くに4畳ほどの大きさの部屋がポツンとありに中央に本物のダンジョンコアが置いてあった。
しかし本物のダンジョンコアは壊さない。壊すとこのダンジョンが停止し、全てが崩れるからだ。それ故全てのダンジョンには偽物のダンジョンコアに触れた瞬間攻略となる。人類からしても、一つでもダンジョンが崩れると、生活が大変になるだろう。
偽コアに触れて地上に戻って来た。
『ほら、ちょろっと見て戻って来ただろ?』
『ええー、そーですーねー』
「( あれ?物凄い棒読み)」
結局、彼女の機嫌を直すのにダンジョン攻略より時間が掛かった。
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