第104話・どんな時でも①

「どんな時でも食える奴が生き残る!」


「……急にどうしたの? 八白さん」

「おい、そこに落ちてるボルト、お前の頭のか?」

 呆れ顏でウチを見てくるアンジーと新生。つか、ボルトなんざ落ちてないっての。

「いや、せっかく食材が無限に取り出せるカバンがあるんだからさ。ラーメンばかりじゃなくて、たまには料理でもと思ってね」

「ガサツな八白さんに作れるの?」

「オレ達を殺す気じゃねぇだろうな?」

 ……君ら酷いわ。

「ふんっ、引きこもりボッチの調理スキルなめんなよ! ガッツリごちそうしたるわ!」

 いち時期ゲームにも漫画にも飽きて、料理しかやる事なかったんだ。そしたら性に合っていたのか、妙に調理スキルが上がってしまって。……って、むなしい事を思い出してしまったじゃないか。


「と、言う訳で、まずはこれ!」

 と、カバンの中をまさぐって取り出したのは……


「かぼちゃ?」

「そして、ニンジンと里芋」

「なんだよ、年寄り臭いものばかり出しやがって」

「おま……それ偏見やぞ」

 でもまあ、自分がJKの頃にも同じ事言っていたような気がしない事もないけど。新生の目の前に追加でシイタケを出したら、眉間にシワが寄って目が死んだわ。


「この野菜見たら、何を作ろうとしているか察しがついたんだけどさ……」

「お、流石アンジー」

「でも、まだ結構気温高いよ? 早くない?」

 ウチが山梨県民という事と、カボチャをはじめとする野菜から何を作るかってのはすぐに分かったのだろう。結構有名な郷土料理だからな。

 でも、アンジーの頭の中には、熱々の【甲州カボチャほうとう】が浮かんでいるはずだ。だから『まだ早くない?』と。しかし、そんな単純なウチではないぞ。


 ウチは二人にチッチッチッと人差し指ジェスチャーをして、衝撃のひと言を発した。


、【おざら】って物があるんやで?」


「え、なにそれ知らない」

「また適当な事言ってんじゃねぇの?」

 反応を見るに、アンジーも新生も全く知らない様だ。そして何だかんだ言っても興味がわいてきたのが新生。ウチがカバンから取り出すものに注視していた。

「じゃ、次は新生ねおたんの好きな油揚げ!」

「おい……」

 あれ? 何か不機嫌?

「何でオレの好きなもの知ってんだよ。ストーカーかっての!」

 ……マジか。冗談のつもりだったのだが。

「あとはネギと味噌。そして……あれ、女神さん、麺が出てこないけどまさか……?」

〔麺は調理品とみなされた様です。食材は小麦粉と塩ですね〕

 そうきたか。めんどいな……と普通なら思う所だけど、力が有り余っている恐竜人ライズ達が大勢いる今は大した障害ではない! 


「アンジー、ティラちゃん、ルカちゃん、それからタルボちゃんも。小麦粉練って麺作りよろしく!」

「御馳走するって言っていたのに、自分で作れって?」

「働かざる者食うべからずやで!」

 ティラノとルカで思いっきり腰を入れて、最後はタルボの重力魔法でプレスすれば上等な麺が出来るのは間違いがない。

 予想外だったのは、料理に関してアンジーは全然役に立たないって事だった。塩の量測らないで1キロの袋全部ぶち込もうとしやがりました。


 ウチの事をガサツとか言っておきながらこの謎女ってばもう……。






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