ジュラシック・テイル ～猫耳転生と恐竜少女～

第48話・とりまこみこみのひーる！

　初代新生の意思を継いでいる恐竜人（ライズ）は、敵に対して手加減をするという意識を持っていない。

　当たり前の話だけど、そこに考えが回っていなかった。『君らを殺す事が目的じゃない』とか偉そうな事を言いながらこのザマか。

「プチちゃん、ベルノ連れてきて！　早く！」

　ミルクチョコは効果がない。入っているのは恐竜専用の体力回復剤だと女神さんが言っていたし……そもそもセイレーンのこの状態では飲食物なんて喉を通らないだろう。

　今現在唯一期待出来るのは、ベルノのペインスローだけだ。これは転生者のウチには効果があった。だからもしかしたら……。

「戦いの最中でござる。余計な手出しは……」

「うるせーぞ、黙っとけ。ウチは誰も死なせないと決めたんだ。魔王軍（おまえら）でもな」

「セイレーンは魔王軍の者。故に対処は我々でいたす」

「だから黙っとけって。それにウチは止める気ない、止めようとしても無駄だから口だすなよ！」

　セイレーンの事を気遣って早々に負けを宣言したり、さっきだって敵のウチに対して『お気遣い感謝いたす』とか言ってくるくらいだ。突き放した言い方していても、部下の事をしっかり考えてやっているのがバレバレなんだよ。

「ベルノ、いけそうか？」

「やってみるニャ！」

　ベルノが短い手でセイレーンの体を撫で“痛い”を投げ捨てる！　

　しかし……

「ちょっとしか飛んで行かないニャ……」

　確かにいつもみたいに『回復した！』という感じではない。なんだよ、こんなとこで死ぬなよ。そりゃぁ会話した事すらないしなんなら敵同士だけど。それでも目の前で死なれるのは嫌なんだ！

「ベルノ、ごめんな。もうちょっとだけ頼む！」

　僅かでも効果があるのならやるべきだ。というかウチ、無力すぎじゃないか。『やるべきだ』じゃなくて『やってもらう』が正しいよな。

　と、そんな事考えている場合じゃない。何とか方法は……考えろ。何か手はあるはずなんだ。ベルノだっていつまでも力を使っていられないし。

　あ……アンジー。アンジーなら何かわかるかも！　

「……って、どこにいるかわからねぇ～」

　ったく、肝心な時にあの謎女は！

　あとは……そうだ回復魔法。魔王軍の一部隊なら回復役がいるはずだと思うんだけど……

「誰かヒール使えないの？」

「使えるのは……セイレーンだけでござる」

「アホか……回復持ちを戦わせるなよ」

　他には、何かないか？　回復できる物……

　――そうだ！　女神！　

「おい、女神さん！！」

〔……回復ポーションをくれとでもいうのでしょう？〕

「わかっているなら……」

〔無理です〕

「おま、この期に及んでまだウチのやり方が気に入らないのか！？」

〔いえ、むしろ八白亜紀、今はあなたに協力したいとすら考えています。しかし、現在の私は、あなたの元の時代とこの時代を繋げており、異世界のアイテムを取り出すことが出来ないのです〕

　そういう事か。アンジーみたいに異世界から来ていれば、そちらの物を取り出せたって事か。

「じゃ、令和の時代から薬とかそういうのは出せるよのか？　……って、だから飲めないじゃん」

　意識ないんだから。というか薬もAEDも異世界のモンスターに効果あるかわからないし……。

　お手上げなのか？　ウチには何も出来ないのか？　と、半分諦めかけていたその時。

〔それにしても八白亜紀……。あなたは本当に悪運だけは強い様ですね〕

「何の話だよ、こんな時に」

　ウチの運が良くたってセイレーンが助からなかったら意味がないだろ。

「はぁ～い、ぼーん！」

（訳：おげんき～？）

「……え、なんでここに？」

「留守番とかさりげメンディーだからさ～。来ちゃったよ」

（訳：留守番とか退屈だからさ～。来ちゃったよ）

「ミアちゃん、セイレーンがちょっとヤバ気なんだ。もしかしてだけど……回復魔法使える？」

「亜紀ぴ、マジ弱酸性！　なんでもいっちゃって～」

（訳：亜紀はやさしいね！　なんでも言ってよ！）

　本当に退屈だったからかは解らないけど、とにかく助かった。今は魔王軍と顔合わせたくないはずなのに……。

「セイレンぴ、あげみざわでいくよー！　とりまこみこみのひ～る！」

（訳：セイレーン、テンション上げていくよ！　とりあえずいい感じに色々治るヒール！）

　それにしても……相変わらずギャル語呪文はよくわからんな。

――――――――――――――――――――――――――――

ご覧いただきありがとうございます。

この作風がお嫌いでなければ、評価とフォローをお願いします！

☆とかレビューもよろしければ是非。

この先も、続けてお付き合いください。