第25話・みじんこも……
「え~と、君。ごめん、名前分からないけど……怪我ない?」
ウチが今、咄嗟に猫玉アタックで吹っ飛ばした
「ウチ達が戦う理由なんてまったくないんだからさ。みんな仲間なんやで?」
「はぁ? 勝手に仲間にしてんじゃねえ」
猫耳ブラックはとりあえずスルー。それよりもこの
「大丈夫?」
「は、はい……大丈夫……です」
たどたどしくしゃべりながら、視線を隠すようにつばの広い帽子をかぶり直していた。やはりこの
「クソがっ! 答えてんじゃねぇよ!」
「だ~か~ら~! そういう態度取ってる間はウチ達には勝てへんで!」
「何がウチ達だよ。てめえのとこの
……言われてみて気が付いたけどキティが見当たらない。辺りを見回すウチを見て、猫耳ブラックは言葉を続けた。
「野生の本能とやらで、勝てねぇと思って逃げたんじゃね?」
「あの娘は、この状況で逃げるような
「そうっスよ、キティはへそ仲間っスから!」
……うん、それは言わんでも良かったとお姐さんは思うぞ。
♢
少し前の事。キティの得意なことや苦手を知っておいた方が良いと思って、なんとなく質問してみたんだ。
「得意なこと、だすか……(キリッ)」
「そうそう、君をもっと知りたくて!」
キティは遠くを見ながら首を傾げ、唇に人差し指を当てて考え始めた。……ってあざとい、あざとすぎる仕草じゃないか! 多分本人は無意識にやっているのだろうけれど、これは可愛いぞ。
「オラは、走ることと……」
「うんうん」
「早く走ることだすな(キリッ)」
……ボケ属性かい!
「え、えと、武器とか何か持ってるの?」
「よく解らないだすが、これが……(キリッ)」
と、胸の谷間から取り出した扇子。ってなんでそんなところから出てくるのよ。そもそも、なんで隠せるのよ。
ルカと言いキティと言い、胸強調しすぎだっての……ウチのHPはもうゼロやで。
「マスター、オラ……使えないだすか?」
ちょっとだけ悲し気な表情で『自分は使えないのか?』と質問してきたキティ。
扇子を取り出した時に『可愛くてあざとくて胸が大きいとか反則だろー』と軽い嫉妬をしてしまったウチ。多分その時の表情を見て、ガッカリしたとでも受け取ったのだろうか。……だとしたら悪いことしちゃったな。
「キティちゃんはウチにない
「……それはないだす(キリッ)」
「え?」
「皆に比べたらオラは非力だけど、仲間を見捨てる事だけはしないだす(キリリッ)」
その時のキティの表情はいつにもましてキリッとしていた。キラキラと澄んだその目を見たときに、心底信用出来る言葉だと確信したんだ。
♢
「彼女は逃げない。あの時のゆるぎない言葉を、ウチは
「うぜえ……おい、タルボ、アクロ、そのまま押さえてろ。オレが直接とどめを刺してやる」
猫耳ブラックは
「やらせるわけ無いだろ。——頼む、キティちゃん!」
ウチのポケットから桜色の光が漏れる。キティのジュラたまの光だ。ティラノやルカがスキルを使った時の様な強烈な発光ではなく、本当に一瞬だけふわっと光った感じだ。
「——ここだすよ!(キリッ)」
突然、猫耳ブラックの真横に姿を現したキティ。
「こいつ、どこから……」
一瞬怯んだ隙を狙い、キティはその場で前方宙返りからのカカト落としを放った!
「喰らえだす(キリリッ!)」
よほど凄まじい速度の蹴りだったのだろう、脚は鞭のようにしなり、摩擦熱のせいか空気が揺らいで見えた。
「これが本当のカカト落とし! どこかの詐欺女神とは全然モノが違うで!」
直後ウチの後頭部に“ぺしっ”と木の枝か何かが当たった感触があった。……うん、多分これはイセカサギノメガサウルス妖精のカカト落としモドキだな。
正確に武器だけを狙い、蹴り落としたキティ。猫耳ブラックは、何が起きたのか理解が追い付いていなかったと思う。武器を蹴りおとされ、たじろいて数歩後ずさっていた。
「ふっ、安心いたせ。峰打ちでござるだす!(キリッ)」
――――――――――――――――――――――――――――
ご覧いただきありがとうございます。
この作風がお嫌いでなければ、評価とフォローをお願いします!
☆とかレビューもよろしければ是非。
この先も、続けてお付き合いください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます