第123話・大当たりですね!
長い年月をかけて波が作り上げた天然の洞窟。そのゴツゴツとした黒っぽい岩肌の空間にウチ達は避難していた。
砂浜では岩石で生成された巨大なストーンドラゴンと、それに対峙するスーとハーピー。黒ローブの猫耳幼女に翻弄されているルカ。戦局としては良いのか悪いのか全く判断が付かなかった。
「ところで……なにしてるの? ピノちゃん」
洞窟の壁を触ったり足元の石を持ってみたりと、なにか調査しているみたいだ。ベルトポーチから先の尖ったハンマーを取り出し、手に持った石を砕くピノ。ルーペでじ~っと観察していたと思ったら、粉状になった破片をつまんで感触を確かめ、今度はその指先をじ~っと見ていた。
「この辺りの砂や岩にはかなりの比率で鉱物が混ざっている様です」
「……はい?」
なにが始まったかと思えば、見た目のまんま発掘が趣味とか? だとしても今はそんなことをしている余裕はなんだけど。
「多分、遥か昔に北の山からの溶岩がこの辺りまで来たのでしょう」
「ピノちゃん?」
「自分にはスーやルカさんみたいな戦闘力はありませんので。ですが土壌や環境を味方につけることで、戦況を有利に持って行けるはずです」
……うん、言っている意味はわかるんだけど、ピンとこないな。ウチの
「黒雲母か角閃石か……磁鉄鉱でしたら大当たりですね!」
なにがどういう意味で大当たりなのかわからないし、石の種類を言われてもちんぷんかんぷんだけど、これがストーンドラゴンを倒すヒントになるってことなのだろうか。
「道筋が見えました。行きます」
う〜む、わからん。ウチにはわからんけど、ピノは確信を持ったのだろう。スッと立ち上がり帽子の位置を直しながら、ルカ達の状況を確認していた。
「ピノちゃん、気を付けて。
「はい、心得ました」
二人の元へ戻るピノ。走りながら腰に付けている鞭を外し、右手に構えた。
一口に鞭と言っても、その長さや太さによって用途は様々だ。動物の皮などで作られた、しなりが強い軟鞭。そして鉄などで作られた硬い棒状の硬鞭。そしてそれぞれに長い物短い物があり、狩猟や馬に乗るための補助具、所によっては拷問道具になっていた時代もある。
ピノが持つのは軟便の方で、有名な冒険映画の主人公が使っていたようなタイプの物だ。確かにその得物からしても、攻撃力という意味ではルカやスーに見劣りするかもしれない。だけどウチには、ピノが弱いなんて全然思えなかった。そしてそれは、ドライアドも同様に感じていたみたいだ。
「あの
……ああ、そうか。ドライアドは彼女達と戦ったあと、アンジーがトレーニングしていたのを知らないんだ。
「多分、今のピノちゃんが本来の姿だと思う」
「うむ、一切の迷いがない、良い戦士でござる」
ドライアドがべた褒めとか、ピノやるじゃんか。
「しかし、めちゃ博識だったな。初めて聞いたぞ、角閃石なんて」
アンジーの知識も入ってきているだろうから、その影響もあるのだろうけどさ。でも、まあ……
「アンジーに限っては、“博識”と書いてアホと読むんだよな」
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「……ぶぇっくし!!」
「マスター・アンジュ、風邪ですか?」
「いや……。う~ん……なんだろう?」
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