ジュラシック・テイル ～猫耳転生と恐竜少女～

第121話・同じ顔

「姐さん！」

「ルカ殿、さっさと行ってきやがるデス。ピノ殿も、あとは任されやがるでございますよ！」

　スーは自分の身長よりも長い大鎌を構え、岩と小石で出来たドラゴンに向き合った。いくら強いと言っても相手は巨大なガチガチドラゴン”だ。流石にいつまでも一人にまかせておくわけには行かないだろう。

「おい、なにやってんスか！」

　ルカはウチの腕の中から猫耳幼女を引っ張り出し、そのまま無造作に後ろに投げ飛ばそうとした。もちろんその行動は、ウチを気遣っての事で悪気がないのは解っている。……だけどそれはダメだ。

　必死で腕を伸ばし、爪を立てて猫耳幼女のジャケットに食い込ませる。これなら力が入らなくても手が離れる事はない。猫人で良かったと、つくづく思う。美形エルフだったらこうはいかなかったな。

「ルカちゃ……ダメだって」

　流石、恐竜人（ライズ）のパワーだ。ウチもろとも猫耳幼女を片手で引きずるルカ。

「姐さん、何でっスか」

「何でも、だよ。ルカちゃん、ウチはそんな娘（こ）に育てた覚えはありません！」

〔はあ……元気そうな軽口で何よりです〕

　女神さん、そう言わんといて……。刃先が丸々刺さってんだぞ、マジ痛いって、実際余裕なんてないって。

「優しくしてあげてよ。この子は、何も悪くないから」

「ああ、もう……。わかったから爪外してくださいっス」

　猫耳幼女は引っ張られた時にバランスを崩して尻もちをついていた。

「大丈夫っスか？　転ばしてしまって悪かったっス」

　ルカはウチの意思を優先してくれ、猫耳幼女の肩を掴んで起き上がらせると、身体についた砂をはらってあげていた。

「まったく、姐さんも人が良すぎっスよ……」

「まあ、そう言わんといて」

「え……。あれ？」

　直後、絶句するルカ。

「これは一体……なんでっスか？　姐さん」

　どうやらルカも気が付いたみたいだ。多分、どうすれば良いかわからなかったのだろう、目をパチクリさせながらウチの顔を見て指示を待っていた。

　猫耳少女の砂を払うために膝をついたルカ。それは、丁度フードの中の顔が見える高さだった。

　――ありえない。想像すら出来ない。フードの中には、クリクリっとした目の可愛らしい顔があった。それはグレムリンの言う通り、紛れもなく最強の血筋だったんだ。

「そんな、姐さんこの子って……。マジっスか～。いや、でも……え～」

　実はウチも、覆いかぶさった時に猫耳幼女の顔を見ている。多分“素の状態”だったら、ルカと同じ反応をしていたと思う。だけど、幸か不幸か刺された痛みに意識を持って行かれてて、目の前の現実にあまり衝撃を受けずにすんでいた。

　ウチは『この事は二人の秘密だぞ！』っと、人差し指を口に当てて見せた。……黙って頷くルカ。

「亜紀さん、担ぎますよ。痛み、耐えて下さいね」

　なんかピノがものすごいテキパキしてる。応急処置（レスキュー）に馴れている感じ。ルカが短刀を引き抜こうとした時も『出血が増えるから抜かないで』とか言っていたし。なんかまるっと任せて安心できそうだ。

「洞窟に、お願い。セイレーンがヒール使えるから……」

　呼吸はしっかり出来ているし、目も耳もはっきりしている。とりあえず、すぐにも“死にそう”って感じではないのだけが救いだ。

　……先日の“ジュラたま3個全力ダッシュ”の時よりはましに思えるから多分大丈夫なのだろう。

「なんつーか、戦力外通告を受けてしまった気分やで……」

「二軍落ちより酷いですね」

「……ピノちゃん、君は意外と刺さる事言うねぇ」

「亜紀さん、口閉じていないと舌噛みますよ」

　はいはい。と言うかそろそろ声を出すのがキツイから嫌でも黙るけど。

「ルカちゃん、その子の保護頼む」

「わかったっス。ピノ、姐さんの事任せるっスよ！」

「心得ました。すぐ戻るので」

　ピノはウチを担ぎあげると、洞窟の方に向かって全力で走り始めた。ミノタウロスといいピノといい、何故にウチは米俵扱いなんや……。

　猫耳幼女の事は、今は誰にも話すわけにはいかなかった。流石にこの事実は皆にどれだけ影響出るか予測が出来ない。どうすればいいのか全くわからないけど、とりあえずはウチとルカだけの秘密にしておかないとだ。特にアンジーには絶対に話せないし、話してはいけない。

　フードの下にあった“初めて見る同じ顏”。間違いない。あれは、あの顔は……

　……アンジーの妹だ。

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キャライメージ画

安城愛希（妹アンジー）→https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16817330653865715634

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