第78話・やっぱりあいつはエンカウンター
「みんな待って。探すのはウチとキティちゃんだけで行く」
「マ、マスターさん、それは危険ですぅ～」
「そうっスよ。みんなで動いた方が……」
「ここをさ、しっぽの家を守っていて欲しいんだ。みんなが帰ってくる場所だから」
防衛を頼んでいるにも関わらず、拠点をがら空きにしてでも四人で動く選択をした。これにはそれなりの理由があるハズだ。
「ウチはティラちゃん達の判断を信じる。だからこそ“しっぽの家”になにかあったりして、彼女達が悔やむことだけはさせたくないんだ」
「なるほど、そう言うことなら任せてもらうっス！」
「タルボちゃん、敵が来たら問答無用で
「はいですの！」
「それじゃキティちゃん、先導頼むよ」
――しかしこの時すでに、ティラノ達は絶体絶命のピンチに陥っていたんだ。
♢
後で聞いた話だと、ウチ達“遠征組”が北の魔王軍を見つけて岩陰から動向を探っていた頃のことらしい。
ここ“しっぽの家”では防衛組の四人が、それぞれの役割をこなしていた。ガイアは定期的にサーチをかけて、近づく者の監視。ティラノは魚を獲り、ミアは火を起こしたりと、遠征組が帰ってきたときの用意だ。ベルノは賑やかしと言うか……まあ、皆の精神的な
「みんな……集まって。デス」
突如として、警戒心を纏ったガイアの声が全員の耳に届いた。瞬時に魔王軍の襲撃に備え、臨戦態勢をとるティラノとラミア。
「ガイア、どうしたニャ？」
「南の黒が……チカチカ。デス」
「ガイアさん、それは戦闘になっているってことなのかしら？」
ウチと別行動をとる
「俺様の出番がきたか⁉ どこだ、どこ行けばいい？」
「ティラノ落ち着くニャ！」
「お、おう……」
よほど退屈していたのだろう。ベルノに諭され我に返る、戦闘民族ティラノサウルスの
「まず、戦闘になっているとして、誰が戦っているのかですね」
「なんだよミアっち、戦ってんだから敵じゃねぇのかよ！」
「ティラノ落ち着くニャ！」
ベルノのぷにぷに肉球が、ティラノの尻を“ぽふんっ”と叩く。
「ああ、すまん……」
再度、猫幼女に諭されて、素直に謝るティラノ。見た目は昭和ヤンキーだど、根はめちゃくちゃ素直な
「確かその場所には……」
「うん。紫……いる。デス」
「ネネ、えんかうんた～って言ってたニャ」
「紫って、初代か……。苦手なんだよな」
それは当然の話だ。ウチのせいとは言え、一時的にでも初代新生の
「でも亜紀ぴなら」
「助けに行くニャ！」
「だよなぁ……あんな奴でも死んだら亜紀っち悲しむよな」
「亜紀ぴは弱酸性だから。……っと、やさしいって意味ですわ」
ミルクチョコ効果が切れかかっているのか、軽くギャル語が混ざってしまうラミア。そそくさと箱から一粒取り出し、口に放り込みながら会話に参加しなおした。
「行こう……ティラノ。デス」
「ガイアまでそう言うのなら、行くか」
「ですがティラノさん、ここの守りはどうします？」
「みんなでいくニャ！」
「家は壊れても直せるけど、命は直せない。全員で動いて全員で帰る。亜紀っちならそう言うと思うぜ！」
それでも“命を大事に”という基本精神は、皆ちゃんと持ってくれている。……ウチとしては、もうそれだけで十分なんだよな。
「それはわかりますが……」
「もしここが壊されたとしても、皆が無事なら笑って許すんじゃねぇか？ もうみんな家族なんだからよ」
「言われてみればそうですね。優先順だけは間違えない人ですわ」
博愛主義と言えば聞こえはいいかもしれないけど、誰にも死んでほしくないというのはウチのワガママだ。それでも、もしどうしようもない事態が起きて、何かの選択をしなければならなくなったら、ウチは仲間達の命を優先するだろう。
「そうと決まれば……」
「急ぐニャ！」
「ガイアさん、誘導おねがいします」
「がってん……承知の助。デス」
「……ところでそれ、誰なんだ？」
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