第73話・姉ちゃん、冤罪やで！
「姉ちゃん、それ
「しつこいですわね。あなたみたいな妹はいません」
「いやいや、同じ顔なんだよ。ミアぴ……ラミアの姉ちゃんだろ？」
「そうですか。ラミアを知っているということは……やはりあなたが、わちきの妹を殺したのざますね」
「そうが、オマエがか……許じておげなよな」
え～、なんでそうなるのよ。どこからそんな情報が伝わったのかわからないけど、完全に思い込んでるな。ウチがマブのラミアを殺す訳ないじゃん。でもこれ、どうやって証明すればよいの？
「いいから話を聞け。でもとりあえずは後ろをなんとかしてからだ」
前の方からルカとタルボが走ってくるのが見えた。スケルトンをサクッと全滅させて、こちらの応援に来てくれたののだけれども……。
「裸族！ 服着ろ！」
さすがに大事な部分はサラシで隠れてはいるものの、ほぼほぼ全裸で走ってくるカルカロドントサウルスのルカ。元々上着を脱いでいたとはいえ、遠目に見たらマッパだぞ。……アンジーのジャケットも捨てて来てるし。
「しゃーないっスよ、もう一発インパクト撃ったら服燃えちまったんスから！」
「マジか……。キティちゃんの蹴りも凄くなってたし、なんか
……いや、ルカに限ってはわざとという可能性も？
それはさておき、キティが作ってくれた十数メートルの余裕がここで活きることになった。ワニの恐竜の前に颯爽と立ちはだかるルカとタルボ。水棲恐竜に対して雷属性のルカなら、かなり優位に事を運べそうだ。
「手加減はするんだよ～」
「わかってるっスよ！」
しかし、やる気満々臨戦態勢300%のルカを手で制して、タルボが進み出た。
「ルカさん、ここは譲っていただきますわ」
「タルボ、そりゃねぇっスよ」
「ダメです。今のあなたでは力加減が難しいと思いますの」
なるほど。パワーアップした雷撃は、まだ手に余るってことか。ここは間近で見ていたタルボの判断を信じよう。
「ルカちゃん、後で出番用意するから。ここは譲って」
「しゃーねーっス。タルボ、気合入れるっスよ！」
「いえ、気合なんて入れませんわ。そんなことしたら
……なんか今スゲー恐ろしいこと言っていた様な？
「ま、まあ、やさしくね、やさ～しく～」
目の前にいる一人の小柄な少女に向かって、一直線に突進してくるワニの恐竜。タルボは二言三言呟くと両手を前に出し、腕を左右に開きながら叫んだ。
「小細工はいたしませんわ。喰らいなさいませ！
「ええ？ タルボちゃん、それって魔法なんじゃ……？」
マジか。この
……ってそうか、なるほど。今までの攻撃も重力属性だったとすれば、あの小さな身体であれだけの破壊力を持つ技を繰り出せるのも頷ける。
「ルカちゃんを抑え込んだパワーの
そして、どうやらその重力魔法がしっかり効いている様だ。ワニの恐竜は足が止まり、胴体が地につこうとしている。あれだけの巨躯を身動き出来なくさせる魔法力ってかなり強力なのだろう。唸り声をあげて必死で抵抗はしているが、
「ごの化げ物め！」
そのとき、後ろから突然叫び声が聞こえた。振り向くとウェアウルフが漆黒の両手剣を肩に構え、身動きできなくなったワニの恐竜に斬りかかろうとしていた。
「化け物ちゃうわ、アホ犬！」
売り言葉を買ってしまいました……。うむ、反省はしていない。
漆黒の両手剣は魔力を帯びているらしく、赤黒いモヤモヤが剣身から出ているのがウチの目にも見える。こんな『いかにも呪われています』なんて剣で攻撃させるわけにはいかない。……いや、普通の剣でもやらせないけどな！
ウェアウルフは一呼吸で間合いを詰めると、身体全体をバネにして飛び上がり、ワニの恐竜に両手剣を振り下ろした。
「——やらせるわけねぇっスよ！」
「——スピードもまだまだだすな（キリッ）」
振り下ろされた剣はワニの恐竜に当たる寸前で止まった。右からはルカの拳に、左からはキティの蹴りに、それぞれに挟まれて真剣白刃取り状態だ。
「ルカちゃん、キティちゃん、ナイス連携！」
二人はウェアウルフが動くと同時に走り込んでいたようだ。ウチが考えるよりも先に、本人たちの意思で動いてくれる。思考というか気持ちというか、なんかとにかく繋がっている感じがめちゃ爽快！
「ぞうか。オマエ、やばり……俺だぢと戦う気なのだな」
「
「もう、だからなんでそうなるんだよ～」
それぞれ獲物を構える魔王軍の二人。ミア姉は魔術師だからウチが抑えるとして、ウェアウルフはルカ達にまかせておいて大丈夫そうだな。あとはワニの恐竜のライズ化だけど……『さて、どうしようか』というタイミングで自称謎女が、海岸の時と同じ様にトリスに乗って空から登場。
「八白さん、お待たせ～」
「アンジー、おっそい。なにやってたのよ」
当然の様にアンジーの顔を見て驚く二人……いや、驚いているのはミア姉だけか。ウェアウルフはよほど肝が据わっているのか、微動だにしない。……こういうのが強敵だったりするから要警戒だな。
「ごめんごめん、ちょっと色々あってね。まあ、それは後で話すとして……」
「うん、手分けしないとだね。ウチは姉ちゃんの魔法を封じるのでいっぱいいっぱいかも」
「そしたらこの恐竜さ、私にまかせてもらっていいかな？」
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（注）欺瞞-ぎまん-
嘘、ごまかし、騙しと言った意味。
ご覧いただきありがとうございます。
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