ジュラシック・テイル ～猫耳転生と恐竜少女～

第68話・マジもんの？

「アンジー、何か良い案ある？」

「あるにはあるけど、流石にこれはちょっと……」

　なんだろう？　アンジーが躊躇するほどの作戦って。何か余程凄い戦略があるとかかな？

「南は一旦無視して、全員で北に行く」

「ふむふむ。その作戦で何が引っかかるの？」

「私と八白さんが協力体制にあるって事は、ここにいる人しか知らないでしょ？」

「まあ、今決まったばかりだしね」

「北に二つの集団。こちらも二手に分かれる。この状態でもし私がミノかドライアドと遭ったらどうなると思う？」

「あ、そうか……うっし～（（ミノタウロス））も部長（（ドライアド））もアンジーの事は敵だと思っているんだ」

　砂浜での戦いの時もアンジーが姿を見せたら、いつの間にかドライアド達の姿がなくなっていたし。特にミノタウロス達はアンジーがここに来ている事すら知らない可能性がある。

「そうなるとさ。ベストなのは私が魔王軍と戦っている間に、八白さんが恐竜の保護とミノ達との連絡が出来れば。って事になるよね」

「でもそれだと、アンジーは仲間が増えないんじゃ？」

「でしょでしょ？　だからどうしたらいいと思う？　八白さん」

「ったく。アンジー、あんたどんだけ恨み買ってんのよ……」

　ウチが全員ライズ化してからアンジーに渡すってやり方もあるけど……。なんか恐竜人（ライズ）達を物扱いしているみたいで嫌なんだよね。みんな意思ってもんがあるんだしさ。

「とりあえず……北のどちらかに当たりを付けて、アンジーもウチも一旦そちらに行くってのは？」

「ああ、なるほど。最初に遭遇したのが誰かで次の手を考えるのね」

「飛べる娘（こ）と、あとキティちゃんに斥候を頼んで隠密行動で行こう」

「って言うか八白さんってさ……」

「ん？」

「意外と頭回るんだね～」

「……それ、褒めてないっしょ」

　作戦とは言えないような作戦だが、やる事が決まったら行動は早い。アンジーは一旦自陣に戻ってから現地合流する事になった。急を要する事態ではあるけれど、次はどんな恐竜人（ライズ）に会えるのか楽しみでもある。

　そういえば、ドライアド達と戦った後に見つけたあの“ちっこかわいい鳥”は元気だろうか？　近づいたら飛んで逃げてしまって……。飛んだというか、ハングライダーみたいに滑空してたな。

「あの鳥さん、また会えるといいな～」

〔八白亜紀、ちょっと良いですか？〕

　ん？　なんか女神さんが物凄い真剣な顔をしている。

「ほいほい、なんぞあったん？」

〔アンジュラ・アキ、初代新生両名の経歴を調べてきました〕

「うう……聞きたい様な聞きたくないような……」

　結局女神さんから聞かされた話は、ウチが思っていたよりもずっと重かった。聞いてしまってちょっと後悔。“アンジーが抗った理不尽”や“初代新生が絶望した裏切り”は、もしそれがウチだったらと考えると、とても耐えられそうにないものだった。

　マジか……なんかウチ、初代新生に辛く当たりすぎたかな？　というか……

「あいつ、マジもんのJKだったんか。ジュライチ来たわ！」

　それでいてあの威圧感って半端ないぞ。……でもまあ、戦い方や戦略性の無さが理解出来た気がする。ウチだってゲーム知識で戦っている様なもんだから大したこと言えないけど、それでも力押ししかしないのは勝負において致命的な弱点だよな。若さゆえってやつ？

　……それはさておき。頭を切り替えて作戦遂行だ！

「じゃあみんな。遠征組と拠点組の人をわけるね」

「よっしゃ～腕がなるぜ！」

　気合十分のティラノ。しかしすまぬ、今回は……

「まず拠点に残る人だけど。まず、何かあった時の戦力としてティラちゃん」

「え～、亜紀っち俺様が留守番かよ～」

「まそう言わないで～。ガイアちゃんを頼むよ」

「ああ、そういう事か……仕方ねぇな。ルカ、遠征は任せたぜ！」

「了解っス！」

　だから何でそこで脱ぐんだこの娘は～。はっ……もしかして気合が入ると脱ぐのか？　いや、気合を入れるために脱ぐのかもしれない。って、それがわかった所でどっちにしても脱ぐんだからどうでもいいか。

「ガイアちゃんにはここでしっかり体力回復していてほしいんだ。そして体力のケアが出来るミアぴもティラちゃんと一緒に防衛お願い」

「亜紀ぴ、りょ。ちゃけばヤバ気だから気を付けてね！」

　本音を言うと、魔王軍と戦うのが全体の遠征に連れて行くのは抵抗があるんだよね。ラミアだって、本来は白亜紀（ここ）にいるべき娘（こ）じゃないんだから。

「ベルノもガイアちゃんを看ていてあげてね」

　ガイアにペインスローは効果がないけど、まあ、俗に言う“精神的なサポート”ってやつだな。

「了解ですニャ！」

　短い手を真っすぐに上げ、小気味よい返事をするベルノ。このまま素直な娘に育っておくれ～。母ちゃんは願っているぞ～。

「そして残りが遠征組なんだけど。タルボちゃんとプチちゃんは、場合によってはアンジーチームに合流してもらうかもしれないから、そのつもりでよろしく！」

「了解ですの。でもわたくしで良いのでございますの？」

「もちろん。向こうには顔なじみ多いからルカちゃんが行くよりやりやすいでしょ」

　まあ、本音は……ルカは向こうでも脱ぐから。間違いなく。

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