第67話・腹を割るとは……?

 最優先で決めなければならないこと。それは……


「「連合チーム……」」


 その瞬間、ウチとアンジーの視線が交差し、バチバチと火花を散らせた!


「ダブルアッキー!」

「白あん!」


 ……なんてセンスのない謎女なんだ、アンジーは!


「ちょ、アンジーなによ白あんって? 腹減ってんの?」

「いやいや、八白さんこそずい(注)って。連合チーム・ダブルアッキーです! とかありえない」

「恥ずいって失礼な。いいじゃん二人ともアキなんだから」

「八白の白と、アンジュラのアンで白あん。こっちの方が洒落が効いててイイって!」


 力説し始めるアンジー。だが断る……ウチはつぶあん派だ!


「さすがに今回のはないわ~。アンジー衰えたり!」

「衰えたりって失礼な。女子大生に向かってそれはない」

「ええ? アンジー……女子大生なん? マジで?」


  まあ、知っているけど。ここは驚くフリをした方が面白い反応が見られそうかな~と思ったんだ。


「あ~、うん、異世界転生前は……」


 一瞬、視線が泳ぐアンジー。


「その異世界に何年いたのさ!」


 ……よし、面白くなってきましたー!


「まあ、十年ちょいくらい?」

「それすでに女子大生じゃないから! アラサーじゃん。ウチと同世代じゃん」


 それでもJDと言い切る胆力は認めるぞ。なんたってウチも『永遠の十七歳教』信者だからな。


「え、マジ? 八白さんって結構年下だと思っていたよ」

「それってウチが女子高生に見えたってこと? ウチJKってヤツっすか?」

「小学生くらい……とか?」

「ひどっ、アラサー小学生がおるかい!」

「JKでもいないってば!」

「二人とも息ピッタリだすな(キリッ)」


 さりげなくウチとアンジーにどんぶりを手渡し、箸を配り始めるキティ。


「キティちゃん、これのどこを見て言って……」


 って、あれ? みんなエントラ……宴会場でのんびりしているかと思ったら、いつの間にかウチ達囲んで会食モードに突入してるし。


「なんかわからんけど、ジュラっちも食おうぜ!」

「ちょいまち、ジュラっちって私のこと⁉」


 と言いながらもティラノに促されて『ずずず……』とスープを飲み始めるアンジー。複雑な表情してるけど、嫌がってる感じはない。


「だって二人ともアキっちじゃわからねぇし」

「そうっスよ、ジュラ姐さん」 

「その呼び方やめて~」

「だからダブルアッキーでいいじゃん」

「いや、そうゆう問題じゃなくて。ありえないって!」


 アンジーが壊れかけている……楽しいぞ、このカオスっぷり。こんな風に人と話すことがあるなんて、白亜紀ここに来るまで考えられなかったよ。引き籠りのウチを連れ出してくれた女神さんに感謝しなきゃ。


「ところで、みんなどうしたの?」

「お二人が楽しそうなので、こちらで食べることにいたしましたの」


 と、今度はタルボがレンゲを配っている。なんか、皆手際よくなったな……。


「あ、八白さんはお子様だから半ラーメンにしてあげてね」

「まだいうかアラサー女子大生が。ウチは全ラー食うで!」

「え? 脱いでいいんスか?」

「全裸ちゃうわ!」

「もう、腹割って話し始めたらこれだよ!」


 ……アンジー、あんた腹割って壊れてんじゃん。


「よし、決めた」

「ん? アンジーどうしたの?」

「ルカちゃん、チーム名決めちゃって」


 おいおいマジか。いきなり恐竜人ライズを指名して名前決めてとか……そんなんで決めるならダブルアッキーでいいじゃないか。更に指名したのがルカって、悪い予感しかしないぞ。『夜露死苦』とか付けられたらどうすんだ。


「自分でいいんスか! それなら……」


 ゴクリ……


 すでに“いつものサラシにボンタン”という最大限許容範囲内の露出スタイルになっているルカが、目に炎を宿し、ハチマキを巻き直しながら命名する!


「チーム……レックス・ドライヴ!」


 あ、なんか普通じゃん。つかカッコイイ様な気がする……めっさキラキラした笑顔でティラノとグータッチをするルカ。


「いいじゃん、それ。シンプルでいいと思うよ」

「ジュラ姐さんあざっス!」

「……それやめて」

「ところでルカちゃん、名前の由来は何?」

「自分とティラさんで湾岸流していた時のチーム名っス!」

「そうきたか……」


 恐竜がチーム組んで湾岸を爆走してるって、どんな光景だよ。ステキすぎてめちゃくちゃ見てみたいわ。





 連合チーム名も決まり、ミノタウロスやドライアド達の捜索、そしてまだ見ぬ新しい恐竜人ライズ探しに行こうと計画したのだが……これはこれでかなり慎重に選択しなければならない内容になっていた。

 ガイアにマナを探ってもらったんだけど、ウチ達の拠点を中心として五か所にマナの塊と、散らばっている恐竜のマナが確認出来た。

 でも、流石にこれは無理をさせてしまったみたいだ。……かなり広域にやってもらったから相当疲れたのだろう。今はウチの膝枕で寝てしまっている。


「ほっぺプニプニ~」



 東方面海沿いに青系の塊、これはアンジーの恐竜人ライズ達だ。

 南東に紫が一人。これは間違いなく初代新生だな。

 そして魔界との門がある北方向二か所に黒系の塊と、南にも黒系の塊。ラミアもなんだけど、魔王軍関係は総じて黒っぽい色らしい。

 実はこれがこれが悩み処だ。ミノタウロス達とドライアド達は別々にいて、もう一つが新たな魔王軍なのか? それとも一緒にいて、もう二つがそれぞれ魔王軍なのか?

 南の黒塊は、位置的に新たな魔王軍の可能性はかなり低い。それでも低いってだけで可能性はゼロではない。向かうにはそれなりの戦力が必要になる。北に主力で行くとしても、最悪もし両方とも新たな魔王軍だったらかなりの危険を伴う。


 そして、それ以外にも所々にある様々な色のマナ。これがまだ見ぬ恐竜なんだけど、先に見つけてライズ化しないと、魔王軍に攻撃されてしまうかもしれない。

 特に北の黒い塊の近くには三つのマナがある。この恐竜達の救助が最優先だ。


 ウチとアンジーの二人で三か所を回るのか。戦闘は一切避けるとしても、もう一手……もう一人欲しいよな。


初代新生あいつ、戻ってこないかなぁ」






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(注)恥ずい-はずい

読んで字の如く『恥ずかしい』の意味。1990年頃に使われていたらしい。


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