第66話・連合結成

「なるほどね~。……もしかしたらの話していい?」


 ガイアの目に“視える”色の話をしてみたんだけど、なにか思い当たることがあるみたいだ。流石博識アンジー、頼りになる!


「仮定の上に仮定をのっけたような話なんだけどさ」

「それでもありがたい。ウチじゃ仮定すらでてこないし」

「“三原色”って聞いたことあるでしょ。多分そんなじゃないかと思うんだけどさ」


 色の三原色と光の三原色の二種類があって、え~と……なんだっけ? まあ、聞いたことだけはある。美術の授業とか寝てたしな……芸術方面は苦手だわ。


「まあ、その三原色で“視えて”いると仮定してね。円の上に赤青緑を等間隔で配置して、そしてその色を私達みたいなライズ化能力者とする」

「……ふむふむ」

恐竜人ライズ達もそれぞれ色を持っていて、まあ、それがジュラたまの色ってことなんだけど、その色が自分に近い能力者に惹かれる……まあ、相性がいいってやつかな」

「……なるほどなるほど」

「私が空色でしょ。これはほぼ青として、初代が紫。もし恐竜人ライズが赤だったら私じゃなくて初代に惹かれる。そんな感じじゃないかな?」


 ……確かにそう考えると説得力あるな。


「赤に対しては、赤と青が混ざった紫の方が相性がイイのか」

「白い恐竜人ライズってのは、三原色の中心に位置していて……どの色の能力者でも、均等にライズ化が出来るってことなのかもね」

「あ……その……ウチなんだけど、透明ってのが判らないんだよね」

「どの“色”にも属さずに、すべての色に対して均等に影響を持てるって感じなんじゃない?」

「……つ、つまり最強チートってことっすか!」

「そうなるね~」


 その時、“ぱふっ”としたカカト落としがウチの頭を撫でた。


〔……八白亜紀〕

「な、なんすか女神さん……」

〔私、一番最初に『超チート』って言っていますよね?〕

「あ……」


 必死で記憶の糸を手繰たぐってみたら言っていた気がする。でもさ……


「覚えている訳ないだろ。『恐竜を仲間にしろ』なんてインパクト最大の発言にすべて持って行かれたわ」


 ……苦笑いするアンジー。そろそろ彼女にもうちの女神さんの“駄女神っぷり”がわかって来たようだ。


「ま、まあ、仮定の上に仮定を乗せて、更に仮定を掛け合わせたような確証の無い話だけど。でも、実は私にも心当たりがあるんだ」

「マジか……」

「ガイアちゃんが私を『空色』って言っていたんでしょ?」

「うん……」

「今私の恐竜人ライズってみんな青系のジュラたまなんだよ」

「マジで?」

「八白さんがジュラたま無しでティラノを取り返せたのは、白色だったからってのも影響があるんじゃないかな? もし彼女が紫だったら、取り返せないどころか初代との相性でより強くなってた可能性があると思うよ」


 なるほど。そもそもの相性が悪ければ絆もなにもないのか。


「話戻るけどさ。うっし~(ミノタウロス)達探すの手伝ってもらえるかな?」

「もちろん。といっても頑張るのはトリスとランだから、あの達への報酬よろしくね!」

「了解!」


 ま、チョコとかラーメンとか食料しかないけどね。とは言え、この先も協力体制をとるのなら体力回復アイテムを渡せるだけ渡しておくのもアリだよな。戦略のひとつとして考えておこう。

 

「……ってあれ? あの娘の名前ってランちゃんだっけ?」

「うん、初代のやつ、恐竜人ライズの名前すらまともに把握してなかったみたいでさ。“ランフォリンクスのラン”が正しい名前だったよ」

「マジかー。ずっとランフォちゃんだと思っていたよ」

「名前もだけどさ。初代新生あいつがなにも考えずに戦わせていたから、皆に変な癖がついちゃっててね。特長を活かす様にトレーニング中だよ。あ、でも、面白い能力の娘が何人もいるんだよ。癖が抜ければ化けると思うんだ」


 ……まあ、戦術も何もなしに突っ込ませるだけだったからな。


「でも当面の問題として、適材低所って考えた時にメインアタッカーになれる娘がいないんだよ。だからって訳じゃないけど、仲間もうちょっと増やしたいね」


 言われてみれば、アンジーの所はチームバランスが悪いな。


「なるほど……でも、ウチの恐竜人ライズちゃんはあげません!」

「え~。八白さんとこアタッカー多いのに~」

「……マジで狙ってんのかい。ったく、油断も隙もないわ!」

「残念だなぁ~。本音トークしてるのにぃ~」


 ニコッと笑いながら、わざとイタズラっぽい口調でからかってくる。

 ……あれ? 『腹割って』って……これ、さっきのバレてんじゃん。


「ねえ、アンジー。なんつ~かその……」

「いいよ。正式に組もうって話でしょ?」

「え? なんでわかるの……」

「だってこの流れで言うことって他にないじゃん」

「ホントかなわんな」


 ああもう、片っ端からバレバレじゃんか。


 でも、この連合に初代新生も入れたいって思ってる事は、流石に今はバレない様にしておかなきゃな。


「そうなると、があるよね……」

「だね。アンジーの言う通り、がある!」


 視線がぶつかる。バチバチッという音が聞こえるようだった。お互い譲れないものがあり、それをいかにして相手に納得させられるか。

 

 ウチはアンジーに対して、スペック的にはほぼ全敗だが……



 この勝負はアンジーが相手と言えど、負けるわけにはいかない。






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