ジュラシック・テイル ～猫耳なウチと恐竜美少女～【異世界だと喜んでたのに実は白亜紀の地球でした！？仕方がないので転生ライフを守る為、もらったユニークなスキルで恐竜を味方に魔王をぶっ飛ばすことにします】

第65話・３つの道

　――あの後少しして、初代（はつしろ）新生（ねお）はコッソリと黙って出て行った。

　多分、何人かは気が付いていたと思う。女神さんとか女神さんとか女神さんとか。あと、ガイアもわかっていたはず。それでもなにも言わなかったのは、多分ウチに気を使ってくれていたのだろうな。

「……ったく、初代新生の野郎。色々気を回したウチの時間を返してくれ」

「女性に野郎とか言ったら炎上しますよ？」

　ウチが人に対して上手くコミュニケーションが取れないのと同じように、初代新生も人との関係を上手く作れないタイプななのだと思う。だからと言って恐竜人（ライズ）を虐待するのは筋違いだし、許せるはずもないけど。

　でも否定から入ったら物事はそこで止まってしまう。だから対話は続けようと思うんだけど……

「はあ～、ぶっちゃけしんどい」

「それは大変だねぇ、八白さん」

「でしょ？　好き勝手し過ぎだよ。恐竜人（ライズ）ちゃん達のほうがずっと素直でさ。爪の垢でも飲ませたいよ、まったく……」

　アンジーもアンジーだよな。味方なんだか敵なんだかわからないことばかり言ってくれちゃってさ。『謎の女みたいでカッコいいじゃん！』とかいって誤魔化すし。協力して魔王軍と戦わなきゃなのに、こんなにまとまりがなくてどうしろってんだよ。

「もうちょっと、腹割ってくれたらなあ……」

「でも、そういうのってお互いの信頼関係が重要だから、時間かかると思うよ？」

「だよね。でも、いつ魔王軍が攻めてくるかわからないし。そんなに余裕はなさそうなんだ」

　……ん？

　……って、あれ？

「ちょいちょいちょい、アンジー！　なんでここにいるの⁉」

「なんでって、まあ、陣中見舞い？」

「あ、それはご丁寧に……じゃなくて。いつから聞いてたん？」

「しんどいってとこからかな～。初代新生のことだよね？」

　相変わらず勘が鋭いな。見透かされているんじゃないかと思ってしまうくらいに。でも、さすがに途中からアンジーの話になっていることは気が付いてないだろうな。

　……というかアンジーってば、今は敵味方どっちなんだ？　

「……初代新生にとどめ刺しに来たとか？」

「ああ、警戒しないでよ。次は敵同士とか言ったの気にしてんでしょ？」

「そりゃ気にするよ。あのときのアンジー怖かったし」

「あはは、ごめんごめん。なんかさ、その方が……」

「……その方が？」

「謎の女みたいでカッコいいじゃん！」

　……あ、やっぱそれ？ 右手のチョキを顎にあててドヤってやがるでございます。

「ツリーハウス作ってんだね～。なかなかイイ感じじゃない」

「でしょでしょ。恐竜人（ライズ）ちゃん達が頑張ってくれています！」

「宴会場はほぼ完成してるんだね」

「こらこらアンジーさん。宴会場って、酒飲みじゃないんだからさ。もうちょっとこう、ハイソサエティにエントランスとでも言って。そう、エ・ン・ト・ラ・ン・ス！」

「ん～、八白さん。多分ホテルとか高級マンションの“エントランスホール”を想像してると思うんだけどさ」

「うん、まさしくそれそれ！」

　ラグジュアリーな空間演出のソレだよ！　入口を入ると吹き抜けの空間が広がっていて、ど真ん中に木が植えられているんだ。そしてライトアップされたそれを囲むようにソファがあって……　　

「そもそもエントランスって、玄関って意味だよ」

「はう……宴会場でよろしく」

「それはさておき本題なんだけどさ」　

　あ……さておかれた。ウチ、英語に弱いのがバレバレじゃないか。

「そろそろ魔王軍が一斉侵攻してくる可能性があると思うんだ」

「え……マジ？」

「海岸で戦った後、魔王軍みてないでしょ？」

「言われてみれば、うっし～（（ミノタウロス））達も部長達も姿見えないしな……」

「部長って？」

「ああ、ドライアドね。ウチ上司ガチャはハズレしか出なくてさ。アイツみたいにSSRな上司が欲しかったんだ。」

「上司か～。私はそういうの経験ないな……と、それ“も”さておき」　

　またまたさておかれた。つか、アンジーは働いたことがないのか？　ウチより年下ってこと？　いやいや、流石にそれはないよな。うん、ないない……と思いたい。

「多分、死神やドライアド達は先遣隊なんだろうね。彼らが持ち返った情報を元に戦力を整えるつもりだと思うんだ」

「あ、あのさアンジー。……もし部長（（ドライアド））達が情報を魔王軍に持って行ってなかったとしたら、どういう推測になる？」

「そうだな……先遣隊は全滅したと判断するかも。そうなると、情報に合わせた戦力なんかじゃなくて、総力で乗り込んでくるかもしれないよ？」

「ウチはその線だと思うんだ。戦ってみたからわかるんだけど、部長（（ドライアド））は報告をしていないと思う」

　地球に行って『こてんぱんにやられました』だけならまだしも、敵に命を救ってもらったとか、はたまた敵の命を救ったとか、魔王軍としては完全にアウトだろう。これではいくらドライアドが守ろうとしても、直接セイレーン達が責めを受けるかもしれない。部下思いの彼のことだ、まずそれは避けるはず。

「だとすると、魔王軍に帰れなくて放浪している可能性があるな。うっし～（（ミノタウロス））達と合流でもして、どこかに隠れていてくれればいいんだけど……」

「だったらさ、八白さん」

「お、アンジーさんや、よきアイディアある？」

「ここに匿ったらどう？」

　あ……そんな手があったか！

「アンジー、君は天才かよ！」

「うん、そうだね。ところで見つける方法はあるの？」

　この女……『うん、そうだね』とかサラっと言ってくれちゃって。……カッコいいじゃねえか！　めちゃアンジーらしいわ。今度ウチも使ってみよう。

「ガイアちゃんがうっし～（（ミノタウロス））達の色を見つければすぐだと思う。大体の方向だけ探ってもらって、アンジーのとこのトリスちゃん達に飛んでもらうのが早いかな」

「色って……なにそれ？」

「ああ、それはね……」

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