第59話・Past Story 初代①
~前書き~
Past Story 初代は、理不尽かつ鬱展開です。 キャラクターの掘り下げ話なので、これまでの【ジュラシック・テイル】とはかなり内容・作風が異なります。
内容的に苦手な方もいるかもしれませんので、途中でキツイと思った方は読まずに飛ばしてください(world:04の最後に内容をまとめておきますのでそちらをお願いします)
♢
“物心がつく頃”というのが何歳くらいを指すのかわからないけど、少なくともオレの記憶の中に父親はいない。覚えているのは母さんの笑顔と、ちいさな暖かいボロアパートだけだった。
『なんでパパがいないの?』と母さんに質問して困らせた記憶は数回ある。その母親はと言えば、朝早くから夜遅くまで、ときには朝まで働き、オレを育ててくれた。これには最大限感謝すべきで、今になってみれば、家の中のことぐらいは手伝うべきだったと思う。……だけど、言い訳になるけど、遊び盛りの子供にはそんなことを考える余地はなかった。
中学校までは可もなく不可もない成績で、高校は女子校に行くことになった。これは母さんの希望が強く、特になんの疑問も持たずに言われるがまま進学していた。その頃からかな、なんとなく自分を“オレ”という様になったのは。
「普通に暮らせるのが一番幸せなのよ」
と、口癖の様に言う母さん。……しかし、そんな普通の幸せを壊したのは“会った事もない”父親だった。
その頃は毎日、気の合う奴らとつるんで昼も夜も遊び歩いていた。世間からは不良グループと
オレはそんな母さんに心底感謝していた。もちろん、恥ずかしくて口に出したことはないけど。
だけど一つだけ、内緒にしていることがあった。それは……母さんが仕事でいない時間に、男を家の中に入れていたことだ。
顏は知っていた。母さんと写っている写真があったから。それでも初めて会った時は写真よりも大分痩せこけていて、同じ人間だとはすぐにわからなかった。
その男……父親は母さんのいない時に来て、高校生のオレに“金の無心”をしてきたんだ。
「ふざけんな。自分で働けよ!」
「ああ? そんな事言っていいのか? 俺がお前の父親だって事を学校にばらすぞ?」
「てめぇ、マジでクズだな……」
「そのクズから産まれたのがお前だろう?」
「知るか。親だなんて認めねぇよ」
「かまわんさ。お前が認めなくても、世間の目はどうかな?」
――終始ニヤニヤして見下してきやがる。
オレの父親、
八年前、かなり大きなニュースにもなった誘拐事件で逮捕され、出所後母さんに“たかり”に来たところ、オレと遭遇したんだ。
最初は殊勝な態度で接してきたから、オレもコロっと騙された。もちろん犯罪者だなんて知らなかったし『オレにも父さんがいたんだ』という喜びもあった。だから家に入れたし、母さんが返って来るまで待とうと思ったのだが……
こいつは、オレの学校や母さんの職場に『俺が乗り込んで行ったらどうなるかな?』と脅してきやがった。この男は母親にたかるよりも、未成年相手の方が搾取しやすいと踏んだのだろう。
実際、母さんのことを考えるととても言えなかった。ましてや職場をクビになるかもしれないって思ったら、オレがなんとかしなきゃと……目の前のゲス野郎の要求を飲んでしまった。
……今思えばその選択が全てを狂わせたのだと思う。
アルバイトを増やし、葛城に渡す分の金を稼いだ。仲間内で遊びに行く回数は減ったけど、それでもその分の金も必死で稼いだ。誰にも言えない秘密を抱えるストレス、彼女たちと遊ぶ時間だけが唯一の救いだったからだ。
――しかし、そこにあった友情は結局“貼り付けただけの薄っぺらいもの”で、ほんのちょっとした行き違いで裏切られてしまうことになる。
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