第46話・ブラフ
大自然を満喫できる白亜紀の海岸で、魔王軍と戦うことになってしまったチーム猫耳恐竜とチーム
本来ならマイナス2ポイントになっている所だ。横からインプを殴り落したこと、そしてウチがガイアを守る為に乱入したことで本当なら完敗のはずだったけど、口八丁手八丁でノーカンにしてしまった。なんかウチも必死だったから意識してなくて、後になって状況整理したらちょっと変な汗が出てしまった。
そしてここからは本命・ティラノとタルボの出番だ。
「その木刀の代わりに団扇でも持ったらどないや?」
無駄に煽ってくるインプ。対するティラノも応戦する。体力もそこそこ回復し、七割程度の力は出せる感じか。
「砂まみれでほざいてんじゃねぇよ。ラーメンで顔洗って出直しやがれ!」
「ゆうやないかい。ええで、奥歯ガタガタ言わし……」
――瞬間、インプの言葉が木刀にさえぎられた。
“ブオン……”と風をぶち抜く音を纏いながらティラノの木刀がインプの鼻をかすめる。“風を切る”ではなく“ぶち壊す”と言った感じだ。
「今の俺様は、さっきとは違うぜ?」
……あれ、なんか今の凄かったな。確かに動きが全然違う、というか以前の状態に戻った感じだ。『七割なんてもんじゃないぞ』と意表を突かれて驚いていると、ウチの肩に女神さんがちょこんと乗って来た。
〔八白亜紀、あなたの力がジュラたまの影響を上回りかけているのかもしれません〕
「マジ⁉ ウチ強くなってるんか。それって、このままいけばティラちゃんを取り返せるかもしれないってことだよな?」
〔そうですね、あなたの力がティラノに影響を与えているように見えます。これは絆の力が戻りつつあるのでしょう〕
「なんか風向きが変わって来たぞ。このままいい方向にドリフト大爆走や!」
〔やめておいた方が良いですよ。あなたは普段からスベり気味なのですから〕
……めがみさん、いけずやで。
木刀の一振りでインプを黙らせたティラノは、そのまま返す刀で右下から斬り上げた。間髪入れない素早い攻撃で『これは瞬殺!』と思ったんだ。
しかし、残念な事にこれはドライアドに読まれていた。ティラノが攻撃に切り替えた瞬間、インプとの間に入り込み、刀の鞘で彼女の攻撃を止めていた。
「そう簡単にやらせはしないでござる」
相手の動きを読んでいたのはタルボもだった。ティラノとドライアドの交差する刀の下をくぐり抜け、インプの前に躍り出る。これはドライアドと戦うと見せかけてかわし、先にインプを落とす作戦だ。
「さっきの宣戦布告はブラフだったんやで。ティラちゃん、そのままドライアドを押さえこむんや!」
「言われなくても! こんなつえー奴、放さねぇぜ」
この作戦は、ティラノがドライアドをしっかり抑え込むのがカギだ。調子が戻りつつあるとは言ってもまだ不安はある。だからまずは、攻撃よりも防御優先で様子を見るのがベターって判断なんだ。
〔相変わらず、興奮すると変な関西弁がまざりますわね〕
……ほっとけ。『変な』言うなって。
「選手交代かいな。ええで、こっちの
「あら、意見が合いますわね。わたくしもあなたの方が好みですわ。倒しやすそうで!」
めちゃ煽るな~。小柄で清楚なイメージからは想像できない毒舌。う~ん、ギャップ萌えしそうだわ。
「なんやと? ワイをなめとんのか、このアマ」
「あら、なめるだなんてとんでもない。わたくし、腐ったミカンはご遠慮いたしますわ!」
言うと同時にタルボはインプに攻撃を仕掛けた。しかし、明らかに様子がおかしい。何もない所にバトルハンマーを叩きつけたり、足元がおぼつかなかったりと、目標が定まっていなかった。
「ティラちゃんの攻撃が当たらなかったのはこれか~。いくら調子悪いと言っても、あれは酷かったからな」
〔どういう事です? 八白亜紀〕
「タルボちゃんは幻覚を見せられているね。相手の居場所がズレて見えるというか、そんな感じ」
そもそもインプの得意とするのは物理的な攻撃でも強力な魔法攻撃でもなく、相手を惑わせるといった類の魔法だ。そして、タルボにかけられた魔法はおそらく“
魔法耐性をほぼ持たない恐竜人には特に効果が高いのだろうな。
「厄介な魔法やけど……。だが甘いで。この時代の娘には通用しても、ウチには通用せえへん!」
〔対策があるのですか?〕
「まあ、みとけって。ウチの
〔知っているからこそ不安なのですよ。はぁ……〕
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(注)サブカル
サブカルチャーの略。主流ではない文化。時代によって該当するものが異なるが、今現在、令和の日本ではアニメやゲーム、漫画等が該当する。過去においてはロックミュージックやアイドル、声優、鉄道マニア等もその範疇にあった。
※八白亜紀の知識ベースはサブカルであり、それを応用した戦術や交渉術を使う。
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