第31話・敵
ウチにむけて振り下ろされる最恐の一撃。
ギィイイイン……
しかし、直後に響いたのは重く鈍い金属音だった。続けて野太い声が響く。
「——何をやってるか、ティラノ！」
「え？
ティラノの一撃を大戦斧で受け止めたのはミノタウロスだった。
「ラミアに言われて来てみれば、これは一体何事か！」
そうか、上手く合流できたんだ。ちょっと複雑な気持ちだけど、今はホントありがたい。……そして、めちゃくちゃ心強い！
「わりとガチめのメンブレふぁいあ～！」
「この声は
ウチの後方からいくつもの小火球が頭上を走り、弧を描きながらランフォと呼ばれていた翼竜の腕に命中する。二発三発と同じ個所を狙い撃たれ、痛みに耐えきれずにベルノを落としてしまった。
「ニャ～～～～～～!!」
地面に向けて真っ逆さまに落ちるベルノ。ウチは咄嗟に走りだしたけど、乱立する木々が邪魔で間に合わない。
「やば……ベルノ！」
「——大丈夫でヤンスよ」
しっかりベルノを受け止めるリザードマン。ラミアと連携し、落下地点に待機していてくれたみたいだ。
「
「トカげニャ～！」
「……あぁん？ 何で敵がそいつの味方してんだよ」
「て、敵じゃない……」
微妙な立場ではあるけど。それでも、もうお互いに無意味な敵対心はないんだ。だから助けに入ってくれたんじゃないか。
「魔王軍でも、ウチ達の仲間だ！」
「馬鹿かお前？ 攻めて来てる奴らが仲間の訳ねぇだろ。おいティラノ、ケーラ、その牛をさっさと倒せ」
トリケラトプスの
――しかし突然、ケーラは足を止める。
「やらせない……動くな。デス」
残った二枚の
「ケーラちゃん、動かない方がいいよ。ウチも
これは我ながら雑すぎるブラフ。そもそもウチにはケーラと戦える力なんてないのだから。でも、嘘だろうとハッタリだろうと、これが今のウチに出来る最大限の援護なんだ。
「ベルノもトカげニャ〜も戦えるニャ！」
このベルノのひと言が追い打ちになったかはわからないけど、ケーラは周りを見渡すと“ドスンッ”と盾を下ろし、初代新生の方を見て指示を仰いだ。
一方、ティラノとミノタウロスは少し距離を取って構えていた。お互いに間合いを外して息を入れている感じか。
「ティラノ、お主……」
「くっ……ほっといてく……れ……」
「そうはいかん。お主と闘う約束はこんな形ではないぞ！」
「……なんだよ、戦わねぇのか」
初代新生は『ちっ』と舌打ちをすると、さっさと背を向けて歩き出していた。
「どいつもこいつもアホすぎんだろ。お前ら引き上げるぞ！」
「待てよ、ティラちゃんを返えせ！」
「無理無理。最恐を手放すわけないっての。ティラノのジュラたまだけはつけっぱなしにしておくぜ。欲しければオレを殺してみな」
初代新生達は七人。ウチ達も全員で七人。人数の上では互角だけど、ウチとベルノはほぼ戦力外。女神さんに至ってはいないに等しい。ガイアは疲弊しているし、これで戦うのはあまりに無謀でしかない。
……むしろこの場は引いてくれて助かったと判断するべきなんだろう。
「ティラちゃん！」
初代新生に付いて去り行くティラノに、ウチは声をかけることしか出来ないでいた。
「……ごめん……亜紀っち……ミノ……」
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