前のエピソード――第22話・生き別れの妹！？

「あんたからは、何か良くない匂いがプンプンするっス！」　

　数メートル先の木陰から出てきたのは、ウチと同じ猫耳しっぽの少女だった。濃紫のジャケットにピンクのストレートロングヘア、見た目だけならクラスで人気になる様な可愛らしい見た目をしている。しかし、その容姿とは裏腹に彼女自身が発する危険な香りにルカは警戒の色を強めた。

「ん～、マジで転生者だったか」

　ベルノが見間違えたのは彼女で間違いなさそうだ。まあ、少女って言っても見た目だけで、中身は判らないけど……。おっさんとかだったらどうしよう。

「転生？　そんなん知るかよ。オレは目的があって来ているんだ、一緒にするな」

「……来ている？　転移ってことなのかな？」

「どうでもいいだろ、うぜえな」

「はあ、そうっすか」　

「魔王軍はてめぇより先にオレがぶっ潰す！　クリア報酬は絶対に譲らねえ、邪魔すんじゃねぇぞ」

　……なんかムカつくな～。腕を組んで顎を上げ、同じくらいの身長なのに無理矢理見下ろしてイキっていた。

「……女神さん、こいつ誰？」

〔わかりません〕

「ってことは、他の神さんが転移させたとか？」　

〔どうやらその様です。転生や転移に関して、私達は一度に一人の人間にしかアクセス出来ないのです〕

「なるほど……」

　目の前の猫耳少女は、手に持った変わった形の剣で女神さんを指し示して口を開いた。

「何をコソコソ話してんだよ。……ってゆうかマジそいつなにもん？　それも恐竜人（ライズ）なのかよ？」

〔失礼な！　私は……〕

「ああ、そうや、この妖精もウチの恐竜人（ライズ）や！　イセカサギノメガサウルス言うんやで。レア中のレアや、知らんやろ！」

　女神さんの言葉を遮りながら、『話を合わせてくれ！』と視線を送る。妖精の姿を知らないってことは、アイツの神さんは実体化出来ないのかもしれない。だとすれば、このことは情報として与えない方が良さそうだ。　

「相手が分からない今は、手の内を明かすのは得策じゃないで」

〔だからってその訳の分からない名前はなんですか……〕

　異世界詐欺の女神さん（イセカサギノメガ）サウルス。お似合いの名前だと思うのですが～なんて言ったらまたカカト落としが来そうなので黙っておくけど。

「だからコソコソしてんじゃねぇよ、うぜえな。おい、タルボ！」

「は、はい……」

　タルボと呼ばれて木陰から恐る恐る出てきた恐竜人（ライズ）。普通にかわいらしい中学生くらいの娘（こ）だ。

「やっちまいな！」

「おま、そんな怯えている娘を戦わせるのかよ」

「はぁ？　こいつ等は目的達成の為の駒だろ。そんなぬるいこと言ってるくらいなら、さっさと指輪置いて帰りな！」

　ウチは死んでからの転生だからな、帰れと言われても帰る場所がないんだっての。それに恐竜人（ライズ）を駒扱いするようなヤツに、大事な娘をやるだけないだろ。

　……ってまあ、ウチも数日前までは大差なかったけどさ。

「ルカちゃん任せた。手加減してね」

「任せて下さいっス！」

「なんで手駒にちゃん付けしてんだよ。お友達ごっこか？　アホが」

「何言ってんだよ……。彼女達は手駒なんかじゃねぇ！　こ（・）の（・）世（・）界（・）に（・）、（・）こ（・）の（・）時（・）代（・）に（・）生（・）き（・）て（・）い（・）る（・）ん（・）だ（・）。（・）存（・）外（・）に（・）扱（・）っ（・）て（・）い（・）い（・）理（・）由（・）は（・）な（・）い（・）！！」