第2話





「な、なになに……『ハーヴァよ、まだ帝国の姫君を分からせる事が出来てないみたいだな?ああ、謝らなくていい。身分の低い第二妃の子供とは言え、腐っても帝国ローレヌの王家の血を受け継ぐ皇女。分からせるのは中々容易ではないだろう。だから、お前にこのめちゃくちゃえっちな下着を授けよう。これを使ってアリシア姫を散々卑しめた上で手篭めにするといい。では、良い報告を期待してるぞ。父より』……ーーはっ、はああああああ!?!?」



 衝撃の内容にハーヴァは目の前に従者がいるにもかかわらず大きな声で叫んでしまう。そして、手紙を何度も何度も読み返したり、手紙を裏返したり、日に翳してみたりするが、特に暗号といった様なものは書かれておらず、ハーヴァは愕然とした。



(な、何も書いてない!?何も書いていないだと……!?まさか本当に本気で父上は俺にローレヌの皇女を手篭めにしろと言っているのか!?こ、この……めちゃくちゃえっちな下着を着せ……着せて……)



 ハーヴァは想像する。いや、想像してしまった。慎ましい体によく似合う扇情的な下着を身に付けたアリシアが恥ずかしそうにシーツで体を隠しながら「そ、そんなに見ないでください…」と言って潤んだ瞳で自分を見上げるという姿を想像してしまい、ハーヴァは思わず



「うわぁあああああ!!俺は敵国の王女に対して何を考えているんだぁあああああ!!」



 と叫び、頭をガンガンと執務机に打ち付ける。無論、突然頭をガンガンと執務机に打ち付け始めたハーヴァにびっくりした従者は「殿下!?どうされましたか!?」と声を掛けるが、完全に脳内がめちゃくちゃえっちな下着を着けたアリシアでいっぱいなハーヴァは近付いてきた従者の胸倉を勢い良く掴むと鬼気迫る形相で叫んだ。



「俺はえっちじゃないいいいいいい!!!そもそもあんな慎ましい体よりもっとむっちりした体が好みだぁああああ!!」

「!? え、えっち!?むっちり!?ハーヴァ殿下一体どういうことですか!?」

「ハァ……ハァ……くっ、くそ!ちょっと顔がこの国じゃあまり見かけないベビロリ甘々フェイスだからって……大国ハルバルドの王子である俺が敵国の王女に……しかも人質ごときに誘惑されるなどありえん!ハァ……ハァ……い、いいだろう……第三皇女アリシア!!貴様がそのつもりなら一秒で手篭めにしてやるわぁあぁああああ!!」

「て、手篭めにする!?帝国の姫君を手篭めに!?お、お考え直し下さい!ハーヴァ殿下!帝国の姫君、アリシア姫は休戦の証としてこのハルバルドにやって来てーー……!!」

「うるさい!退け!」

「ぐはっ!?」



 確実に外交問題になるであろう台詞を言い放ったハーヴァを従者は必死で止めようとするが、大国ハルバルドで毎年開催されている剣術大会の優勝常連者であるハーヴァに力で叶うはずもなく、壁に突き飛ばされてガクリと気を失った。そして止める者が誰もいなくなったハーヴァは下着一式が入った箱をガシリ!と掴むとそのまま勢い良く監禁部屋へと繋がる大きな魔法の鏡に飛び込んだのである。







ーーーーー







 ところ変わって大国ハルバルド王城地下。



「んっ……もう……お昼……?」



 朝食を食べ終え、天蓋付きのベッドの上でフワフワで暖かく触り心地の良い清潔な布団に包まっていたアリシアは扉越しに聞こえてきた物音に瞼を擦りながら起き上がる。日の光が届かない地下故、アリシアには今が一体昼なのか夜なのか全然分からないが、毎日決まった時間に三回支給される食事で昼夜を判別しているアリシアは大分早いが本日二回目となる……昼食にあたる食事が運ばれて来たのだと思い、二度寝で少し乱れた髪を軽く整えてからベッドを降り、帝国の粗末な自室とは全く違う豪奢な部屋の扉の下にある金細工が施された小さな扉を開ける。




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