第23話 金の無心
生前の
ピンポーン!
呼び
「初めまして。ノーリス化粧品です。うわ~!奥様!とってもお美しい!」
(いきなり尋ねられて、いきなり美しいと
瑠香はこの行商のあまりの積極性に当惑した。
「すみません。化粧品の販売で営業をしているものです。」
貴重な休日の日曜日だというのに、その中年女性は、玄関で店を広げ始めた。
中年女性は、カタログを見せながら、ノーリス化粧品の素晴らしさについて
「お美しい奥様と、この営業を展開していかれたのなら・・・。」
営業の中年女性は、急に願い事の様に、叶えたい業務形態について独り言を言い始めた。
「ご相談なんですけれども、奥様のご自宅を、ノーリス化粧品の会員様たちとのコミュニティ会場として使用させていただいた場合には、ノーリス化粧品の二万円分の商品を、その都度、無料で進呈させていただけるのですが・・・。」
この営業は、瑠香の勤める『緑赤十字総合病院』の理事長が、個人情報を売りさばいた結果、個人情報を買ったノーリス化粧品が行っているものである。
瑠香の美しさを利用して、ノーリス化粧品の一員として勝手に登録し、瑠香の自宅を、委託業務販売の会場にしようと
瑠香は、訳が分からないが、毎回二万円分の商品を頂けるなら、会場としてこの自宅を提供しても良い、と委託業務販売の会場として自宅を提供することを承諾した。
「今考えれば、何であんなことを承諾したのか、わからないわ。」
女帝幽霊の瑠香が言った。
「必要とあらば、我々が天罰を与えます。」
みーこが言った。
瑠香は月一回、ノーリス化粧品の委託販売のために自宅を開放した。毎回四~五人のノーリス化粧品の会員が来るので、その都度お茶の準備をせねばならなかった。
営業の中年女性は毎回、パウダーやファンデーションや口紅など、二万円分の商品を瑠香に手渡して帰っていった。
しばらくして、その中年女性は、会員の女性たちが帰った後、金の無心をするようになっていった。
「今月、どうしても一万円必要なの。お願いします!私の家族を救って!お願い!」
そんなに切羽詰まって・・・家計のやりくりが苦しいのか、と瑠香は一万円を貸してあげた。
その後も毎回、三万円ずつ、中年女性は無心していった。
しばらくして、瑠香の自宅での委託業務販売は終了すると告げられた。
瑠香は合計、二十万円は貸したであろうか、しかし、金は戻ることはなく、その中年女性と連絡も取れなくなった。
「そのようなことがあったのでございますね。」
みーこが言った。
「そうなのよ。ある意味、懐かしいわね。」
「同額、徴収いたしましょう。」
「社会福祉法人への寄付金として。」
瑠香が付け足した。
実は、中年女性は新宿のホストクラブのホストにはまっていたのだった。
お気に入りのホストの
中年女性は、瑠香から無心した金でなんとか利息を含めた借金を返済していたのだ。
しかし、瑠香に訴えられるかもしれない、警察沙汰になるかもしれない、と恐れて、瑠香の前からは姿を消したのだった。
そして、消費者金融に手を出し始めていた。
◇◇◇
「今夜も相変わらずお美しいねえ、お姉さん!」
「いや~だ~、お上手ね~。」
中年女性は、決して美しいタイプではないが、ホストクラブで
売上げを伸ばして、クラブ内の順位が上がった時の
「飲んで飲んで飲んで!わーっ!い~い飲みっぷり!美しいっ!」
中年女性はまんまと乗せられて、大金を巻き上げられていた。
現実離れした快楽には、痛手が付きまとう。
ある日、売上金を管理する男が、財布を無くした。
現金は二十万円ほど入っていた。
どこで無くしたかは定かではない。
仕事の後に誘った女性と飲んだ時かもしれない。
いや、支払いは自分がしたのだから、そのときではない。
皆目見当がつかないが、財布が見当たらないことは事実だ。
財布は歩道橋から落下し、社会福祉法人のワゴン車の上に落下していた。
洗車の時に運転手が気づき、正直に申告し、
「あははは、良かったじゃないの!ああいうところの酒なんて、数十万円も上乗せされているんだし。」
「元はと言えば、瑠香様のお金です。」
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