第10話 二つ目の義務

 結局、瑠香るか海馬かいばから記憶を解析する係を一万人に増員することで、五十年かけてようやく十憶人殺害した記憶を全て消去することが出来た。

 「おつかれさま~!」

 「おつかれさまでーす。」

 記憶解析係の幽霊たちは、ろうねぎらい合った。


 「それにしても、瑠香様の人生のほとんどを存じ上げることが出来た我々は、幸運だよな。」

 「まさにその通り。」

 「瑠香様のお人となりが、以前よりも鮮明になりました。」


 「やはり、『世界の支配者A』の目に狂いはなかったですね。」

 「一部たりとも、なかったな。」

 「こんなに素晴らしい方だったのに、あんなにも報われなかった方、だったんですね・・・。」

 「やはり、亡くなられた後、女帝になるのはこの人しかいないでしょうね。」


 「散々な日々をお過ごしになられていたのですから、死後はせめて女帝として優雅にお暮しになられていただきたいですね。」

 「そうですね。私も、瑠香様が快適にたのしく生活をされていくことだけを願っていくことにしますわ。」


 幽霊の記憶解析係たちは、このような会話をかわすことを楽しみにしているのだが、幽霊同士が、なんらかのコミュニティに所属し続けるためには、共通の話題が必要だった。何故ならば、お互いは意識体でしかなく、可視化できる部分を持っていないので、性格同士で会話のやりとりをできたとしても、何かの事柄について、論じ始めることが難しいからである。彼らの中には、女帝や『世界の支配者A』のような、ある程度可視化できる存在に関する話題を、共通の話題にして盛り上がることが出来るし、ヒマつぶしにもなるという理由で、『Right Cosmos』で仕事をすることにした者もいる。

 

 そしていよいよ、瑠香の二つ目の義務である、生前の瑠香個人の恨みを晴らす時がやってきた。

 海馬の記憶解析係によって、個人的恨み項目としていくつかの項目が選出された。

 生前の瑠香の暮らしぶりを知って涙した幽霊たちが、戦闘部隊に参加を申し込み、瑠香の恨みを晴らす幽霊の戦闘部隊は大幅に増員した。

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