第3話 引継ぎ
そして、みーこが先導し、徐々に町中に下降していく。
スレンダーで髪の長い、ジーンズ姿の女性の上に
「あんた、ステーキなんか食べたの?」
彼女は瑠香に挨拶もせずに、瑠香の思考と直前の過去の出来事を読み取って、独り言のように、しかし瑠香に対して言った。
「あたしなんか、もう百憶枚は食べて、食べ飽きたわ。」
「ご無沙汰しております。サマンサ・ペドロ様。」
ジーンズ姿の女性はサマンサ・ペドロと呼ばれた。
瑠香とみーこは、サマンサ・ペドロの顔が見える位置まで下降して対面した。
美しいが、少し意地の悪そうな顔をした女性であった。
彼女はまだ、生きている人間であった。
しかし、霊界に居る瑠香やみーことも対話できて、瑠香の思考を瞬時に読み取ることができるのだった。
「こちらはサマンサ・ペドロ様。旧女帝です。」
「あんたのお陰で、私の役目は終わったわ。女帝って聞くと、
旧女帝のサマンサ・ペドロは、ラッキーストライクに火をつけて、
「
サマンサ・ペドロは、女帝の仕事がいかに大変なものであったのかと想像させるような、不平不満を吐き捨てた。
「あ、こちらは
女帝にも研修ってあるんだな、と瑠香は思った。
「ああ、じゃあ
サマンサ・ペドロは、ややおっちょこちょいな性格をしているようだ。洞察力が優れているような人格だと思われたのだが、注意力は劣っているのかもしれない。瑠香に対して不注意な言動をしてしまった。
「女帝の義務に関しては後程、天帝、あ、失礼、『世界の支配者A』様から直々にお言葉を
サマンサ・ペドロは、何を言い出すかわからない。
みーこは早々に、引継ぎを切り上げたかった。
「あんたはいいなあ。もうすでに死んでるから、バックラッシュ浴びずに済むし。真面目キャラとしての女帝として設定されたみたいだし。汚されることはないわよ、きっと。いいなあ。」
サマンサ・ペドロは、軽く
「ふう、やれやれ。サマンサ・ペドロ様は、もともとはお優しい方だったのですが、女帝の義務を
「そうだったんですか・・・私としては、いきなりこのようなことになって、納得がいかないというか、何が何だかさっぱりわからないんですけれど。・・・いずれにせよ、もう死んでしまったのだから、予想外の死後の世界を、なるべく楽しく過ごしていきたいと思っています。」
「生前の平吹瑠香様のご活躍については、我々がこれから一部始終精査させて頂きますが、概要は『世界の支配者A』様からお
旧女帝から正式に引継ぎを受けた平吹瑠香の幽霊は、これから女帝になるための本格的な試練を経験することになる。
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