第34話兄妹でお風呂? な訳ないだろ!


「はーい、零ちゃーん。お風呂の時間ですよー♪」


 猫なで声で色葉が零に話しかける。それを零は鬱陶しそうに振り払う。


「お風呂の時間なのは分かったけど、なんであんたにそれを言われないといけないのよ」


「え? 一緒に入ってあげようと思って」


「そんな必要はないわ」


 不機嫌そうに零はそう言い捨てる。色葉と真澄は顔を見合わせた。


「でも、零ちゃんは小さな女の子だし……」


「体をちゃんと洗えるのか心配。シャンプー出来る?」


「馬鹿にしないでよ! 二人共! わたしは大人よ!」


 色葉だけではなく、真澄にまでこう言われて憤慨した様子で零は言い放つ。

 体が子供になっている事を存分に弄られているようであった。


 流石に今回は助け舟を出してやるかと思い、俺は口を開く。


「二人共、零は一人で風呂くらい入れるから」


「そう言う総司お兄ちゃんが零ちゃんと一緒にお風呂に入ってあげたらどうですか?」


「な」


 とんだ藪蛇だ。

 俺は言葉を失い、零も顔を赤くする。って、零。赤くなるな。すぐに否定しろ!


「なんでわたしがこの歳になってお兄ちゃんと一緒にお風呂に入らないといけないのよ!」


「その歳なら兄妹と一緒にお風呂に入るのも自然ですよ」


「そう。凄く自然」


 色葉と真澄は二人がかりで零にそう言葉をかける。が、当然、零は断固拒否だ。


「冗談じゃないわ! お兄ちゃんと一緒のお風呂だなんて」


「お、俺も勘弁願いたいかな……」


 いくら子供の姿になっているとはいえ、零と一緒のお風呂だなんて。

 零の精神は大人だと言う思いと子供とはいえ、女の子の裸を見るなんてのは遠慮願いたい。

 しかし、色葉と真澄は食い付いて来る。


「総司お兄ちゃん。零ちゃんがお風呂場で何かあって死んじゃったりしたらどうするんですか!」


「零は赤ん坊か何かか!? いくらなんでもそこまで幼くなってはないぞ!」


「ふぅん……お兄ちゃんもやっぱりわたしの事、子供だと思ってみているんだ」


 いかん。色葉に言い返したつもりだったが、またもや藪蛇。確かに内心では今の零は子供だと思っている。

 それが言葉に出てしまった。


「い、いや、そう言う訳じゃなくてだな……」


「もういい。わたしは一人でお風呂に入る」


 そんなやり取りを一刀両断して、零は風呂場に向かう。これ以上は流石に色葉も真澄もからかいの言葉をかけず、そんな零を見送る。零が去り、リビングに三人残される。


「あらら~、零ちゃんに嫌われちゃいましたね。総司お兄ちゃん」


「馬鹿言ってろ。大体、実際に零があのくらいの年頃の時には既に俺も零も一緒に風呂に入るなんて真似はしていなかったっての」


「冷めた兄妹関係ですね~」


「いや、普通だろう……」



 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 子供の零が可愛い、お風呂事情が気になる。

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