第32話幼い姿で友達たちと過ごす妹
「市ちゃん、可愛いね~」
「生意気な零とは大違い」
零の友達たちはこの場に突如現れた零の妹を名乗る市を猫可愛がりしている。
零としてはそれに不服の感情を抱いているようであったが、不満を言う訳にもいかず、それを受け入れる。
「そ、そんな事ない……です。零お姉ちゃんの方がよっぽど可愛らしいです」
こら、零。どさくさに紛れて自画自賛するんじゃない。
そう思ったが零の友人たちは幼くなった零をそれと知らないまま接して大いに可愛がっている。
幼いこんな美少女が突然現れたのに適応力が高い。可愛ければ歓迎するという事か。
「市ちゃん、お兄さんの事好き?」
「え? そ、そんな事は……」
「ないの?」
零は友人たちに問い掛けられ、言葉に詰まる。そんな事はないのか。俺は密かにショックを受けたのだが。
「い、いえ、お兄ちゃんの事は好きです。何かと面倒を見てくれるし……」
その後に続いた言葉に少し気分が明るくなる。
これが零の本心なのか、状況に合わせて言った言葉なのかは分からなかったが、そう言われれば嬉しい。
「お兄さん、妹さんたちに慕われていますね」
「零もなんだかんだでお兄さんの事、慕っている感じですしね」
「え? そうなのか?」
零の友人たちから思わぬ事を知らされ、俺は驚く。俺は零にあまり好かれていないと思っていたが。
「そ、そんな事はありません。零お姉ちゃんはお兄ちゃんの事をあまり好きじゃないと思います……」
本人の口からそうではないと否定される。そうだよな。俺が零に慕われているなんて事はないよな。ちょっとショックを受けつつもそれが当然と思う。
「そんな事ないよ、市ちゃん。零はお兄さんの事がわりと大好きだと思うな」
「ブラコンの域には達していないと思いたいけどね~」
しかし、零の友人たちはそう言って零が俺を慕っていると主張する。
その度に零は反発していたが、どうなんだろう。俺もシスコンではないが、妹には嫌われているより好かれている方が嬉しい。
そうして、零の友人たちと一緒にあちこち見て回ったが、ふと零が大あくびをした。それに零の友人たちは当然反応する。
「あらあら、市ちゃん。もうおねむの時間かな?」
「子供だもんねー。仕方がないね」
そう思われる事は零にとっては不服のようだった。
「そんな事はありません」と言い返すが、目はしょぼしょぼで眠気を覚えているのは事実だった。
「これ以上、連れまわすのは市ちゃんに悪いか」
「お兄さん。市ちゃんをおうちに連れて帰って上げて下さい」
「それで一緒に寝てあげればいいかもね」
口々に言われるが、そう言われるまでもなく、そろそろ幼い体になった零は家に連れて帰るつもりでいた。俺は頷く。
「ああ、それじゃあ、みんな、これで」
「わ、わたしはまだいける……のに」
言葉に説得力がまるでない。俺は零の友人たちと別れ、幼い姿の零と共に家に帰る事にした。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
幼い零可愛いよ、猫可愛がりされて戸惑う零可愛いよ、さりげに兄への気持ちを暴露される零可愛いよ。
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