第29話ロリな真澄と買い物に緊急事態
デートだなんだと言う真澄を素っ気ない態度で俺はあしらう。
真澄はやや不服そうな顔をしたがそれ以上、言って来る事はなかった。
コンビニに向って歩いていると、「あれ、総司?」と声。
「宏介か」
「おう。何してんだ……ってその女の子は?」
宏介が幼い姿の真澄を見て疑惑の眼差しを俺に向ける。まずいな。面倒臭い事になりそうだ。
「俺の親戚の子だ。冬休みだから遊びに来ているんだよ」
「わたしは総司の親戚なんかじゃ……むぐ」
さらりと嘘をつき、真実を告げようとした真澄の口を手でふさぐ。
宏介は少し胡散臭げにしていたが、とりあえずは信じてくれたようだ。
「ふぅーん。お前の二番目の妹、市とか言ったっけ? あの娘といい、最近なんかお前の周りに小さい女の子がいるなぁ」
「変な風に言うな。親族だから面倒見てやっているだけだよ」
「分かっているよ。お前の性的趣向は。零ちゃんみたいな胸の大きい娘が好みなんだろ」
けらけらと笑う宏介。
妹が好みとか有り得ないと反論したくなったが、この場を平穏にやり過ごす事を考え、反論はしないでおいた。
宏介が真澄に近付くと真澄は見知らぬ男の接近に少しおびえたしぐさを見せて後ずさる。
「傷付くねぇ」
宏介が苦笑いしながらそう言う。
真澄、お前、精神は大人なんだろ。大学生一人が近寄ってきたくらいでそう過剰に反応するなよ。ってか俺の背中に隠れるな、大人だろ!
「あはは、総司は懐かれているな」
「ははは……」
軽快に笑う宏介に、今度はこっちが苦笑を返す番であった。
意外と子供の面倒を見る才能があるのだろうか、俺は。
子供といっても中身は大人……のはずなのだが。
ともあれ変な誤解をされなくて助かった。
俺と宏介は別れて、真澄と共にようやく目当てのコンビニに到着する。
「どんなお菓子がいいんだ?」
「アイスクリーム」
「子供のおやつの定番だな」
そう言うと真澄は不機嫌そうな顔をする。
「わたしを子供扱いしないで。大体、アイスは大人も食べる」
「ま、それもそうだな。夜に零が子供になった時にも必要だろうから多めに買っておくか。グミとかポテトチップスとかも」
「そんなもの大人は食べない」
「今のお前は食べるだろう」
そもそも大人でもお菓子は食べると言ったのはお前だろうに。
真澄は不服そうな顔をしたが、食べたいのは事実なのか、反論して来る事はなかった。一通りのお菓子類をカゴに入れてレジに持っていき清算する。
冬にアイスクリームね、と思わないでもないが、暖房の利いた部屋でアイスクリームを食べるのは夏場に冷房の利いた部屋で熱々のラーメンを食べるのと同じくらい日本では伝統行事だ。
特に何も言うまい。
俺は辛いものは好きだが、甘いものは苦手なのでアイスは食べないが。
ついでにインスタントコーヒーも残り少なくなっていたと思い出したので買っておいた。インスタントコーヒーのパッケージを見せて、真澄に問う。
「コーヒー、飲むか?」
「今は、いらない」
「だろうな」
「何がだろうな、なの」
ムッとした真澄に俺は言ってやる。
「子供にコーヒーはまだ早いって事だ。あ、ウチにミルクはあるけどシロップはないからな」
「そうやって子供扱いする」
「じゃあ、飲むか? ブラックのコーヒーを」
「……飲まない」
苦々し気に真澄はそう答える。今の子供の体ではやはりコーヒーは受け付けないのだろう。
「ミルクと砂糖を入れたカフェオレなら飲む」
「子供だなぁ」
「からかわないで」
やはりムッとして真澄は言うが、子供という感想以外抱きようがなかった。
「夜になればブラックのコーヒーも飲める。零は夜だと飲めないだろうけど」
「零は夜になると子供になるからな。まぁ、ブラックのコーヒーは無理だろうな」
話題そらしか自分と同じような立場の零の事を持ち出して来る。確かに零も体が幼くなると趣味趣向が変化するものだろうが。
本人たちは心は大人だから変わらないと言い張るものの。
それにしたって零のダシにして今の自分への追及を逃れようとするとは子供っぽいとしか言いようがない。やはり体だけでなく精神の方も幼くなっているのではないだろうか。言っている間に夕方の4時近くになっていた。
零は友人に秘密を知られないため7時までには帰って来るだろうし、色葉もまだ中学生なのでそこまで遅い時間まで遊んでいるという事はないだろう。
家に帰って夕食の支度でもして待つか、と思った時、零からメールが届いた。
――お兄ちゃん、助けて! 7時までに帰れそうにないの!
それは緊急事態を告げる一報であった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
ロリっ子と二人で買い物いいなぁ、苦いコーヒー苦手になる真澄可愛い、この先どうなる!?
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