第27話二人の留守番
信じているならそんな事をわざわざ口に出して確認したりはしないだろう。
なんだかロリコン扱いは心外なのだが、言っても無駄だと思うので何も言い返しはしなかった。これ以上何か言えば揚げ足を取られて泥沼な気がしたからだ。
昼に近付くと零も色葉も遊びに出掛けて行ってしまった。
家に残されたのは俺と幼い少女の姿の真澄の二人。なんとも気まずい。
俺は零や色葉のように真澄を外見が子供になっているからといって子供扱いする気はないのだが、それ故にどう接していいか迷う。
大人だと分かっていても外見が子供であればやはり何かと遠慮してしまうものなのだ。
いや、他人の大人の女性と二人きりでもそれはそれで気まずいのであるが。
「総司、退屈」
「そう言われてもな……」
こんな小さい子と二人きりで時間を潰すなんて経験がないぞ。
俺は小学校の先生じゃないんだ。……と、しまった。
無意識に真澄を子供扱いしていたな。そんな俺の思考は真澄に読まれていたようで。
「……わたしは子供じゃないと言っている」
不機嫌そうにそう言い放たれる。
「……じゃあ、なんだ。トランプでもするか?」
「やっぱり子供扱いしている」
「いや、そんなつもりは……」
トランプは老若男女問わずの遊びの定番だろう。
介護の仕事でも介護職の人はご老人相手にトランプをやったりするらしいし。
いや、俺は別に真澄を介護するなんて事は考えてはいないが。
「わたしは自分の部屋に戻る。入って来ないでね」
「お前なぁ。別に子供扱いする気はないが、勝手に居候に来てそれはないんじゃないか?」
「じゃあ、総司はわたしと遊びたいの?」
しまった、藪蛇だった。
上目遣いの目で見られて、思わずウっとなる。
可愛らしい女の子にこんな目で見られるのはなかなか体験出来る事じゃない。
零は体が幼くなってもこんな顔はしない。
「その言い方は誤解を招くからやめろ」
結局、こう言い繕うのが精一杯なのであった。
子供と遊びたいとかどう捉えられるか分かったものじゃない。いや、繰り返すが俺は真澄が大人である事を十二分に理解してはいるのだが。
「お前は普段何やっていたんだよ」
「んー、ネットブラウジング」
「……ネカフェ難民らしいな」
大人の姿の真澄は結構な美人だが、結構なダメ人間である事を忘れていた。
ネカフェ難民と言うからにはどこかのインターネットカフェを拠点にして、そこで生活し、体もネカフェに付いているシャワーで洗っているだけだったのだろう。
無論、化粧などもしていなかったと思われる。それでもそれなり以上の美人であるのだから天が人間に与えるものは不公平だと言わざるを得ない。
「この家のパソコン使わせてくれる?」
そんな事を真澄は要求して来る。
流石に家のプライベートなパソコンを居候しているとはいえ、他人に使わせるのは抵抗が残る。
俺は悩んだ末、スマホの契約をした際にサービスで付いて来たが、ついぞ手を付けていないタブレットの存在を思い出し、それを取りに行き、真澄に渡した。
「ほら。これでもネットは出来るだろ。変なサイト見るなよ」
「そんな事分かっている。タブレットは使い慣れてないけど、これで妥協する」
「居候の癖に態度がデカいぞ……」
呆れたため息を吐きつつ、真澄がネットを見ていてくれるのなら俺は冬休みのレポートを進める事にして自室に戻った。パソコンを起動して、レポートを書き進める。
そんな事をしていると扉がノックされ、真澄が顔を出した。なんだ。ネットをやっていれば満足じゃないのか。
「総司。おやつは?」
そんな事を言い出したので辟易する。おやつって……お前、体が子供になって、零みたいに心まで子供になっているんじゃないか……?
疑惑を抱きつつも冷蔵庫に何かあったかな、と俺はキッチンの方に向かうのであった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
二人の留守番が微笑ましい、ロリと二人きりなんて羨ましい、真澄が可愛い。
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