第15話従姉妹に子供扱いされる零
そんな話をしていると扉が中から開き、幼い姿の零が出て来る。色葉は目を丸くする。
「……可愛い」
ポツリとそう言い放つ。それを聞いた零は苦虫を噛み潰したような顔になる。ああ、そんな幼い顔たちを苛立ちに染めるもんじゃない。
「きゃあ! 何、この子! すっごく可愛い!」
そう言って色葉は囃し立て、零を抱き上げる。幼い体になっている零の体は簡単に浮き上がり、「ちょ、ちょっと!」と零は抗議の声を漏らす。
「この子の顔たち、零ちゃんに似てる。まさか、本当に隠し子?」
「いや、それ、零だ」
「それとは何よ、お兄ちゃん」
抱っこされたままの我が身を不服に思っているだろうが、俺に対する突っ込みが先に来た。
「え? 零ちゃん? そんなまさかー」
苦笑いする色葉。到底信じられない様子であった。無理もない。実の兄の俺も信じるまで時間がかかったからな。
「残念な事にお兄ちゃんが言っているのは事実よ。わたしは零。分かったら、わたしを下ろしてくれる、色葉? わたしの方が貴方より年上なのよ」
「大人ぶっちゃって可愛い~」
「ちょ、ちょっと色葉!」
さらにギュッと零を抱きしめる色葉。やはりこうなったか。諦観を抱きつつ、俺はなんとか色葉に納得してもらおうとする。
「零の姿がどこにもないのが証拠だろ。零は夜7時になると次の朝まで子供の体になるようになっちまったんだ」
「まさか、そんな事が……本当に?」
「本当だ」
「どっちでもいいから下ろしなさいって!」
驚愕する色葉だが、その最中も零を抱き上げたままだ。ようやく色葉は零の体を下ろす。零は息を吐く。
「とにかく、わたしは桐原零よ、色葉」
「ホントに零ちゃんなんですね……こんなに可愛くなっちゃって……」
「可愛いとは何よ!」
今の幼い姿の零は可愛いとしか表現しようがない。兄馬鹿で恐縮だが、色葉の言う事に密かに俺は頷く。
零は幼い顔たちに似合わぬ不機嫌顔でリビングの方に行く。
「それよりさっさと夕食にしましょう。わたし、お腹減ったわ」
「あ、零ちゃん、一人でご飯食べられる?」
「食べられるわよ! 子供じゃないんだから!」
体は子供だがな。憤りつつ、リビングに向かう零を追って俺と色葉も向かう。
「夕飯はわたしが作るわ」
「駄目だよ、零ちゃん。火傷したり、包丁で指を切ったりしたら大変だよ」
「子供じゃないんだから、そんな事しないわよ!」
幼い姿の零に気遣いを見せる色葉に怒声を返す零。とりあえず料理に関しては零に任せても大丈夫だろう。
「色葉。零はああ見えて、心は大人のままだ。料理くらいは出来る」
「ああ見えて、って何よ」
「そうですか……? あ、背がキッチンまで届きませんね。足場になる椅子持ってきますね」
余計な事を、という目で零は色葉を見るが、どの道、零が調理するなら足場の椅子は必要なものだ。
「だから知られたくなかったのよ……」
零は嘆くが、色葉がこの家に居候する時点で隠し通すには無理がある。どの道、こうなっていた事だ。零には諦めてもらうしかない。その後も色葉は零がちゃんと料理出来るのか心配しては零に出来る、と怒鳴り返され、零は調理を進めるのであった。
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秘密がバレた零と色葉のやり取りが楽しみ、意地を張る零が可愛い、色葉も可愛い。やはりロリである自分を認めたくない零がいい。
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