第14話知られる秘密
「暇ですねー、どっか行きますかー? それともゲームでもしますー?」
勝手知ったる親戚の家と言った様子にリビングのソファにもたれかかり、リラックスした様子でくつろぐ色葉。そんな色葉に零がため息を吐く。
「貴方ねえ、いくら従姉妹だからって人の家でよくそこまでくつろげるわね」
「あはは、零ちゃん。私はあまりそういうの気にしないので」
「こっちの事を思って気にしてよ!」
零が強い語気で言うがそれをそよ風の如く受け流し色葉は笑う。
言っている間に昼の2時。
零の体が縮む時間まで後5時間。もはや色葉に帰ってもらうという手段は執れそうにない。
色葉はこの家で少なくとも今晩は泊っていくだろう。ならば確実に零の秘密は露見する。
「ど、どうするのよ……!」
色葉から離れてひそひそ声で俺に零が声をかけてくる。どうしろと言われても。
「打ち明けるしかないんじゃないか」
「っ、他人事だと思って……」
「二人共ー! そんな所で何話しているのですかー? 仲いいですねー」
ひそひそ話に色葉が気付き、声をかけてくる。
やれやれ、相談もしてられないか。分かってはいたが、好奇心旺盛な娘だ。この従姉妹は。
「私がお兄ちゃんと仲いいとかないから」
そう言って零は不機嫌そうに自分の部屋に帰って行った。
このまま自室に籠り、体が縮む所を見られないようにするつもりか?
それはそれで一手かもしれないが、それでも誤魔化し切れるとは思えないぞ……。
「あはは、総司お兄ちゃん、零ちゃんに嫌われちゃいましたね」
「誰のせいだか」
「誰のせいでしょう?」
ニコニコ笑う色葉。やはり零程ではないがそれなりの美少女で表情の豊かさでは零より親しみやすい印象を与えるかもしれない。
友達とかも多いんだろうな。
「なんでこっちに転がりこんで来たんだ? 友達の家とかは?」
「いやー、いくら友達でも家に居候させてもらうのは悪いでしょう」
いとこの家でも居候させてもらうのは悪いとは考えなかったのか。そうなのか。
「まぁ、俺はいいんだが……零がお前が泊るのを納得していないようでな」
「ふぅん。大好きなお兄ちゃんを取られちゃうって心配しているのかな」
「それはない」
そんなブラコン妹では断じてない。零は。俺はハッキリと断言すると、真剣な口調で語り始めた。
「それと、この家に泊るのなら今晩にでもお前は衝撃の事実を知る事になると思う。覚悟しておけ」
零の体の事を知られるのはもはや避けられないのだから、驚きを最小限に抑えるべく俺はそう忠告する。それを聞いた色葉はポカンとした顔をしたが、すぐに笑みを浮かべる。
「なんですか? この家、幽霊でも出るんです?」
「そういうものじゃないが……ある意味、それより驚くかもな」
「へぇ、それは楽しみですね」
楽しみ、か。色葉の事だから零の事情を知ったら大いに楽しむだろうな。先日の合コンで幼い姿の零が女性陣に猫可愛がりされたように。そして、それは零にとっては大いに不服な事になるだろう。
「……あまり楽しみにしない方が当人には望ましいだろうけどな」
「当人?」
よく分かっていない様子で首を傾げる従姉妹。確実に推測出来るが、零の体が縮んだのを知ると色葉は零に対して姉のように接するようになるだろう。零にとっては屈辱的な事だ。なんとか妹を救ってやりたいと思うが、あの幼い姿になるのでは仕方がない。
そんな話をしたり、最近の学校の事を聞いたり、夕飯はどうするか、と話している内に夜の7時。ついに運命の時間がやって来てしまった。零の体は縮み、高校生女子から小学生のような幼い女の子になってしまっているだろう。今頃、子供用の服に着替えている所か。
「そろそろ零ちゃん、呼んできますね」
そんな事を言って色葉は零の部屋に向かう。あ、待て、と俺は言い掛けたが止められず、色葉は零の部屋をノックもせずに開ける。それに付いて行った俺は、
「きゃ、きゃあっ!」
着替え途中で半裸の幼い女児の姿を見る羽目になった。すぐに目をそらす。扉を開けて中を見た色葉は呆然としている様子であった。とりあえず扉を閉める。
「……誰ですか、今の娘」
俺に色葉が問い掛けて来る。それも当たり前か。この家に見慣れぬ幼い女の子がいたんだから。
「あ、ああ。父さんと母さんの隠し子で俺の二番目の妹だ。名前は市……」
「…………」
「……なんて言っても信じてくれないよな」
誤魔化す事を早々に諦め俺はため息を吐く。こんな程度の言い訳で誤魔化せる訳がない。
「伯父さんに隠し子なんていたら、私が知らないはずはないでしょう」
「そりゃそうだ」
全くもってその通りでございます。従姉妹の言葉に頷くしかない俺だった。
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ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
秘密がバレた零と色葉のやり取りが楽しみ、色葉も可愛い。兄妹に従姉妹も混ざって今後の展開が楽しみ。
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星を頂ければ注目の作品に載り多くの人に読んでいただけるようになるので嬉しいのですが、そこまでガツガツポイント集めて書籍化! ……とか狙っている訳ではないので気が向いたらポイントをいただけるくらいで構いません。
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