第11話ロリは(ある意味)モテモテ、その末の波乱の予感


「あーあ、わたしが元の体ならお酒飲めるのに」

「いや、お前は元の体でも高校生だ。酒を飲ませる訳にはいかん」

「……分かっているわよ、冗談よ、冗談」


 そんな話をしていると聞きつけた男友達が零に声をかける。


「市ちゃん、お酒飲みたいの? まだ10年は待ってね」

「そんなに待つ必要ないんだけどな……」

「あはは」


 本気にせず男友達は笑う。本気にされるはずもないが。大人ぶりたい子供。そんな風にしか、今の零は映らないだろう。


「ああ、わたしが元の姿ならこんな男たちなんて骨抜きにしてやるのに……」

「まぁ、お前の元の姿なら出来なくもないだろうが……」


 スタイルも良い、美人の女子高生である元の零ならそれくらいは出来るかもしれないが、いかんせん、今の零は小学生程度の子供の姿だ。可愛がられる事はあっても性欲の対象として見られる事はないだろう。俺の男友達にロリコンはいないし。


「桐原くん、だっけ。こんな時間まで幼い妹さんの面倒見て大変だねー。ご両親は?」

「両親は出張中でね……」

「へぇ、そうなんだ。いいお兄さんだね」


 女性陣からの俺の評価も何故か高いようであった。男友達に小突かれる。


「おい、総司。お前、まさかこれが目当てでガキの妹連れて来たんじゃないだろうな?」

「まさか。れ……市が付いて来たいって言い張ったからだよ」

「ホントにそうか~?」


 酔いの勢いも回って来たのか、大いに絡まれる俺である。俺は酒にあまり酔えないタイプなのでこういう高いテンションに付いて行くのには苦労する。


「お兄ちゃん、お酒臭い。最低」

「合コンに一緒に来ておいてそれを言うか……」


 オレンジジュースを飲みながら零がそんな事を言う。それなら家で留守番してろよ。それも心細いのかもしれないが。体に引っ張られて精神まで幼児退行している節があるからな。

 それにしても酒臭いと言われる程、飲んでいるつもりはないのだが。子供の感覚で敏感になっているのかもしれない。


「その妹に酒飲ませてもいいんじゃね?」

「馬鹿。やめろ。市は小学生なんだぞ」


 酒が回ったが故の悪乗りを発揮する男友達たちから零を庇う。小学生の体で酒を飲ませるなんてとんでもない。というか店員に知られたら通報ものだぞ。それを分かっているのか。酒のせいで分からなくなっているのかもしれないな……。


「わたしは別にお酒飲んでもいいけど」

「おっ、いいねぇ、市ちゃん。それじゃあハイボールを……」

「馬鹿。やめろって。んな強い酒……」


 わりと真剣に俺は断る。小学生の幼い身にそんな酒飲ませられるか。俺は零を庇っているつもりだったのだが。


「お兄ちゃんは余計な事、言わなくていい……」


 何故か零は不機嫌そうだ。


「あはは、お兄ちゃんは市ちゃんの事守ってあげているんだよ」

「そうだぞー、男ども。こんな小さい子にお酒飲ませようとするなんて最低~」


 酔っ払いつつも女性陣はまだ最低限の常識はあるようだった。そんな事を言って、零用のオレンジジュースの追加を頼む。オレンジジュースと一緒にアイスクリームも運ばれて来て、零はそれを見る。


「なんでアイスクリーム……?」

「市ちゃん、食べるでしょ?」

「いや、食べない……」


 どうやら女性陣が気を利かせてくれたようだが、零は複雑な表情だ。それでもスプーンを手にアイスクリームを食べると幸せそうな表情を浮かべる。


「美味いか?」

「うん、美味し……い訳ないでしょ。子供じゃないんだから」


 アイクリームを堪能しているのは目に見えて分かったが、本人は否定する。子供扱いはされたくないのだろう。それでも凄いペースでアイスクリームを完食してしまう。やっぱり子供の舌にぴったり合っているんじゃないか。


「全く。せっかくの合コンだってのに市ちゃんばかり可愛がられて、女性陣は俺たちに目を向けもしねえ」

「二次会で楽しめばいいだろう。悪いが俺は一次会で抜けるが」

「何言っているのよ、お兄ちゃん。二次会も行くわよ」


 零はこう言うが、流石にこれ以上連れ歩く訳にはいかない。集まったみんなには俺と零が抜けた後の二次会で大いに飲んで楽しんでもらう事にしよう。俺としてもこんな酒臭い空間に幼い零をあまり長い事、置いておきたいとは思わない。

 結局、俺も控えめに酒を嗜み、二次会のカラオケに行くという面々と別れて帰路に着く。零は眠たそうな顔をしていた。


「ふあ~あ、眠い……」

「その体でこの時間は辛いだろうからな」

「だーかーら、子供扱いするなって言っているでしょ」


 あくまでも自分は子供でないと零は言い切るが、今の零は子供の体そのものだ。もう9時も回っているし、家に帰ったら風呂に入らせて眠ってもらう事にしよう。

 どうなる事かと思ったが、なんとか零を連れて合コンを乗り切った形だ。零は終始、子供扱いされて不満だったが。そんな俺のスマホにメールが入る。


「ん?」


 メールの主は俺たちの従姉妹、桐原色葉きりはらいろはからだった。零より少し下の中学生だ。零の元の体程ではないが、それなりの美少女だ。なんだ、と思いながら内容を見ると俺はその内容に絶句するのであった。


 ――ちょっと両親とケンカしたから明日からプチ家出します。そっちの家にお邪魔させてもらってもいいですよね?



 お読みいただき誠にありがとうございます。

 この調子でロリ化してしまう妹と兄のドタバララブコメは続きます。


 ロリの零ちゃん可愛いよ、など兄妹のやりとりがいいよ、などこの先が気になる、など。


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