第8話合コンに連れていくの?

 結局、合コンの事は妹に話す事にした。黙っておくのも手かとも思ったが、後から知られれば文句を言われそうだったので正直に話す。今は昼間。妹も元の高校生の体に戻っている。俺から合コンの話を聞くと妹は即答した。


「行くわ」


「いや、行くわ、ってお前……」


 合コンは夜に行われる。その時、妹の、零の体は小学生程度の幼い少女のものに縮んでしまっている。


 その姿で合コンに参加しようというのか。俺は零の真意を測りかねて訊ねてみる。


「お前は夜になると縮んじまうんだぞ?」


「そんな事は分かっているわよ。私の事だもの。それでも行くって言っているの」


「マジかよ……」


 合コンに見た目小学生くらいの女の子を連れて行って周りになんと言えばいいんだ。


 言っていなかったけど二人目の妹がいたんだ、とでもか?

 それはそれでなんで零を連れてこなくてその下の妹を連れて来るんだという話になりそうだが。


「安心して。お酒は飲まないから」


「ああ……。ってお前、今の姿でも高校生なんだから酒は飲めないだろ!」


 しれっと言った零の言葉に突っ込みを入れる。


 高校生から酒を嗜むなんてとんでもない。零はバレたか、と言わんばかりの顔をする。


 まぁ、飲みたくても夜の零の姿では周りが飲ませてはくれないだろう。酔っぱらった悪乗りで飲ませようとする輩がいるかもしれないが、通報されてしまう。


「大体、合コンに幼い女の子が参加した所で楽しくもなんともないだろう」


「あら、言うわね。自分も合コンで女の子といい関係になった事なんてない癖に」


「俺は付き合いで出ているだけだからな。だが、夜のお前が出た所で目をかける男はいないぞ?」


 むしろいたら大問題だ。正真正銘、そいつはロリコンだ。そんな輩に零が目を付けられるのは避けたい。


「言ってくれるわね。まるで夜の私には魅力がないみたいな言い方だわ」

「いや、ないだろ」

「……あるわよ」


 即答した俺にムッと不機嫌そうに零は返す。とはいえ、夜の零の小学生くらいの女の子の姿では可愛いと持てはやされるかもしれないが、異性として魅力を感じる奴はいないであろう。繰り返すがいた方が問題だ。夜の零が合コンに参加などされれば周りに猫可愛がりされるかもしれないが、果たして零はそれを望んでいるのかどうか。


「どう考えてもお前、マスコットにされるぞ。それでもいいのか?」

「あら、この私の美貌がありながら、マスコットなんて有り得ないわ」

「そりゃ、昼間ならそうだろうが……」


 お前、夜になると体が幼くなる事、忘れていないか。そう突っ込みたくなる。


「いいのよ。夜の私の姿の魅力で男たちなんか骨抜きにしてやるわ」

「それは難しいと思うけれどなぁ……」


 夜の零の姿を幼い体を思い浮かべる。顔は可愛らしいが、それは愛玩の対象としての可愛らしさで異性として魅力を感じる類のものではない。胸はぺったんこ。色気もくそもない。そんな姿でどう男たちを骨抜きにするというのだ。


「仮に出るとして名前はどうする? 桐原零の名は名乗れないぞ。俺の知り合いには元のお前の姿と名前を知っているヤツもいるんだ」


 俺の言葉に零は少し考え込む。その末に言った。


「そうね。私はお兄ちゃんの二番目の妹、桐原市って事で」

「市……?」

「織田信長の妹で浅井長政の妻の名前よ。それくらい歴史オタクのお兄ちゃんなら知っているでしょ」

「いや、それは確かに知っているが……」


 零……ゼロだから市……イチという事なのだろうか。現代ではあまりない名前であるが、とにかく偽名で誤魔化せるのならなんでもいい。


「マジで来る気か……」


 最終確認を取る。俺としては置いて行きたい気満々なのであるが。


「あら、お兄ちゃん。夜の私は幼い少女よ。そんな幼い妹を家にひとりきりで置き去りにして合コンに行こうと言うの? そっちの方が安全上、問題だわ」

「それはそうかもしれないが……」


 一人での留守番が怖いとか本物の小学生かよ。そう思ったが口には出さない。やっぱり幼い体になるようになって精神の方も影響を受けているんじゃないかな……。

 どうしたものかと悩む俺であったがついてこさせるしかないかと諦観にも似た思いを抱くのであった。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ロリな妹を合コンに連れて行ってもお兄ちゃんがしっかり守ります。ゲスな奴らは出て来ませんが。


 意地っ張りの妹可愛い。妹を守ってやれよ総司。

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