第5話寝る時どうするの?


 そう。そうなのだ。


 どこぞの戦闘民族が着ているタイツ……ではなく戦闘服ではないのだ。


 今日、買って来た子供服も下着も着ている人間が大きくなったからといって伸縮自在に伸び縮みなどしてくれない。


 間違いなく、全て破れて二度と着れなくなる事は明白だった。


「どうしよう……」


 本気で困り切った顔で零が言う。解決策は一つしかない。


「裸で寝るしかないな」

「何言っているのよ! この変態!」


 俺の言葉に零は顔を真っ赤にして俺に怒声を浴びせるが、それしかないだろう。


 今は冬だから裸で寝ると風邪が心配だな、と見当はずれな事を考えるが零にとっての問題はそんな事ではないだろう。


「いや、それしかないだろ。じゃないと毎朝、服をダメにしちまうぞ。その度に買いに行くのか?」


「う……」


 正論を浴びせられて零が黙る。毎朝、服を破っていては堪らない。それを防ぐためには零には裸で寝てもらう必要がある。だが、零は必死で反論する。


「い、いやよ! 裸で寝るなんて! お兄ちゃんに襲われちゃうじゃない!」


「俺はそんな事しねえよ!」


 とんでもない嫌疑をかけられたので大声で否定する。裸で寝ている小学生くらいの女の子の寝床に入り込もうとするなんて家族でもアウトだ。

 アウト過ぎる。断じて、俺はそんな事はしない。


「し、伸縮性のいいパジャマを……」


「漫画の世界じゃないんだから、この現代日本に子供が大人のサイズになる程、伸び縮みする服はないと思うぞ」


「そ、それもそうなんだけど……」


 そう思っていると零がショッピングセンターに踵を返す。


「どうするんだ?」


「バ、バスローブよ。バスローブを買いましょう。大人サイズの。それなら子供が着ても隠す所は隠せるし、朝になって私の体が元に戻っても破れる事はないわ」


 それは確かに名案だった。寝る時にはそれを着て寝れば裸になる事はない。もっともバスローブをパジャマの代わりにするなど日本文化ではあまりない事ではあるが。


「バスローブ一丁で寝るのも相当恥ずかしいと思うが……」


「裸よりはマシよ!」


 ごもっとも。俺は重い袋を下げながら零に付いて行き、零がバスローブを一着購入するのを見届ける。


 これでとりあえず夜の零が幼い体になった時に着る服の問題は解決と言った所か……根本的な問題の解決には何もなっていないのではあるが。


 どうすれば根本的な解決になるのかもさっぱり分からないのであった。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

寝る時はロリだけど起きる時は高校生。

それへの対処法などが面白い、兄妹のやり取りが面白い。

そのように思ってくださった方は星評価やフォローをしていただければ嬉しいです。

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