第4話ロリになる妹との買い物に

 朝と昼は高校生の体でいられるが、夜になると幼い少女の体になってしまうという妹のために翌日、俺は子供用の、もっとありていに言えば女児服を買いに行こうとした。そうしていたら、意外な事に。


「なんで、お前も付いて来るんだ」


「お兄ちゃんには任せられない。とんでもないデザインの服とか買ってきそう」


 今は夜ではないので女子高生の体を取り戻している妹の零が共に服を買いに行くという。


 兄妹二人で買い物なんていつ以来か。


 そんな事を密かに思いつつ、俺は反論する。


「俺のセンスはそこまでダサくねえよ」


「それだけじゃないわよ。下着とかも買わないといけないじゃない。子供用の」


「いくら女性用パンツとかでも子供用のものなら俺が買っても違和感ないだろう」


「私が嫌なのよ! お兄ちゃんに私のパンツを選ばれるなんて!」


 その気持ちは分からないでもない。


 俺としても子供用とはいえ、女性用パンツを買うのは正直、躊躇が残る所だったので、ここは零に自分で見繕って買ってもらう事にする。


 近くの総合ショッピングセンターに兄妹二人で入り、まずは衣服から買う事にする。

 問題となるのはサイズだが……。


「大まかなサイズは私が覚えているから問題ないわ」


 零は自信満々にそう言い切り、服を見繕っていく。


 自分が着る服なのだから自分で選びたいのは分かるが、小学生サイズの服を選ぶというのでやはり不慣れなものがあるようだった。


 零が本物の小学生だった頃は母親が買って来た服を着ていたからそれも仕方がない事だろう。


 男の俺が口を出すと余計ややこしくなりそうだったが、協力出来る限りはする事にした。


「お兄ちゃん、この赤い服と青い服、どっちがいいと思う?」


「うーん、赤、かな?」


「そう。それならこっちにするわ」


 案外、素直に俺の言う事も聞いてくれる。


 これまでの零からしたら考えられない事だ。


 夜に少女になってしまうせいで高校生の体を持つ今でも頭の中が幼児化しているんじゃないだろうな、などと邪推してしまう。


 服やスカートは一通り買い終わり、それらの荷物は当然のように俺が持つ事になる。


 妹とはいえ、女と一緒に買い物に来たのだからこれは男の甲斐性というものか。


「後は下着ね……お兄ちゃん付いて来るの?」


「お前が嫌ならやめとくが」


「……いえ、いいわ。一緒に来て」


 断固拒否されるものかと思っていたが思いのほか、零は俺の同行を許可した。


 下着とはいえ、女児向けのものを選ぶという点がまだ良かったのかもしれない。

 これが高校生の零の下着選びだとしたら絶対に同行は許可されなかったであろう。


「ク、クマがプリントされたパンツ、ね……」


「いいんじゃないか、可愛らしくて」


「私は高校生よ!」


 可愛らしいクマさんパンツを持ち、羞恥の表情に染まる零。


 俺の言葉に怒声を返す。

 とはいえ、夜の幼くなった零にはよく似合っている気がするのだが。


 それでもそこらへんは流石は今時の女子高生、零。女児向けとはいえ、洗練されたセンスのパンツを選んでいく。


 小さくなった自分がはくとはいえ、デザインにはこだわっておきたいのだろう。


 そうしてパンツも一通り選び終わり、ブラジャーのコーナーに入って行こうとする零に俺は声をかける。


「いや、ブラは必要ないだろ」


「あるわよ」


「縮んだお前、真っ平だぞ」


「失礼ね!」


 事実を言っただけなのだが、怒られる。


 実際に少女の姿になった零にはブラジャーなど必要であるとは到底思えないのだが。


 零が行く先に続くと小学生用ブラコーナーと書かれたエリアに辿り着いた。


「最近の小学生はブラを付けるのか……」


 ちょっとした驚きだった。


 小学生でもそりゃ発育のいい子はブラが必要になるかもしれないが、このコーナーは明らかにそういう子ではない、胸がほとんどない小学生の女児も対象にして商品を並べている。


「最近の常識よ。男のお兄ちゃんには知らない事だろうけど」

「ああ。全く知らなかった」


 密かに驚く俺をよそに零は小学生用ブラをカゴに入れて、纏めて会計を済ます。


 服やスカートも買っているので合計すると結構な金額になる。それらを零は自前で出していた。


「俺が払ってやろうか?」


「いいわよ。私のものなんだから。私が自分で払うわ」


 厚意で俺が金を出そうとするのだが、零はそう言って拒否すると自腹で全て買ってしまった。

 重くなった袋を持つのは俺の役目だが。


「あー、いっぱい、買い物した。全部、子供用ってのがアレだけど、買い物は楽しいわね」


「かなり散財したな……」


 一通りの子供服を揃えたのだから結構な額を消費してしまった。


 やはり無理を言ってでも俺も半分くらいは出してやるべきだったかな。そこでハタと気付く。


「あ、ところで零」

「何よ」

「その服とか、夜に縮んだお前が着るんだよな?」

「当たり前でしょ」


 それだと大きな問題がある気がする。


 夜に着れるまともな服がないのも大問題だったが、それ以上に。


「その服のまま寝る気か?」


「それはそう……あ!」


 零も俺の懸念に思い当たったようだ。驚きに口を開き、次に顔面蒼白になる。


「朝になると零の体は高校生の大きさにまで戻るんだから……その時に来ている服も下着も、何もかも破れちまわないか?」



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ロリになりっぱなしじゃなく大人にも戻るが故の悩み

愉快だな。やっぱり妹ポンコツ可愛い。兄妹の買い物が仲いい。

そのように思ってくださった方は星評価やフォローをしていただければ嬉しいです。

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