第二話 誕生
「ん"ぁっ――!っふぅ"ふぅっ"…!!」
私はテディ・イズフォルテ。お腹の中にいる我が子を今出産する為に踏ん張っています。
生命の誕生ってこんなに痛くて辛い物なのね、私のお母様もこの様な経験をしたのでしょうとても、それでも痛みに耐えなければなりません我が子と顔を合わせその成長を見守りたいのだからっ!
メイドが私に「奥様!!もう少しの辛抱ですっ!」と宥める様に語り掛けているのが何となくですが分かります。えぇ、耐えてみせます。もう少しで愛する我が子の顔が見れるのだから
「っ"っうぅ!!っ"――ぁ"っ!!!」
股の下からメリメリと何かが出ていますっ!!我が子っ、我が子なのかしら、早くその狭い所から出て来てっ!!
テディがそう踏ん張っていると扉がバンッと勢いよく開き一人の男が入ってきた。
涙を流し、私の手を握って「テディ!もう少しだ!頑張ってくれ!!」
そう、私の夫のクレイ・イズフォルテ
メイドと一緒に私に応援の言葉を掛けているのが分かります。
「あ"っぁ"っ!!ん"ぁ"っ!!!う"まれでっ"ぐりゅ"ぅ!!!」
メリメリと股から我が子が出てくる痛みが雷の様に全身へと迸る。少しづつではあるがゆっくりと確実に我が子が出てくるのを感じます。
「奥様!!もう少しです体が出てきましたわ!!」
「ああ!テディ!!出てきたぞ!!我が子だ!!」
そう、もう少しなのね!私頑張ります!!
「ん"ぅっ"ぅ"んっ"ぁ"あ"ァ"!!!」
ぬぽんっという効果音が付きそうな勢いで我が子が出てきたのを感じます、はぁはあ、とても達成感があり幸福に満たされていきます。
「男の子ですわ!!男の子!!奥様!!可愛い男の子です!!」
「本当か!?男の子か!?」
「男の子…我が子は男の子ですか、はあ、はあ」
息切れになり、意識が朦朧としている間にメイドが優しく我が子の体をぬるま湯で洗うぴちゃぴちゃという音が聞こえてきました。嗚呼、早くそのお顔を見せて欲しいです。
メイドがタオルで我が子の体を包み私に抱かせてくれました。…この子が私の子供、可愛い。私とクレイの髪の色にそっくり、クレイみたいにイケメンです。
「可愛いな、テディ、この子が私達の愛の結晶だよ」
クレイが私の頬を優しく撫でキスをしてきました、とても幸せです。それからクレイは私たちの子を優しく男らしいゴツゴツとした硬い掌で撫でています、それを見ながら幸福をかみ締めていると。
「この子は、私達が責任を持って幸せにしよう、なあ、スロウス」
「スロウス…?この子の名前はスロウス…いい名前ですね、スロウス・イズフォルテ、今日からよろしくね…」
可愛い、私とクレイのスロウス、幸せにしてあげますからね、私はクレイとスロウスにキスをして少しの間に眠りに着く。その間、スロウスはクレイが抱いていたらしい
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
スロウスと名付けられた。スロウスと付けられた理由は“ゆっくりと柔軟に不規則に”という意味が込められているらしい。
とにかくあれだ、“騎士の身として規則的な攻撃ばかりするな”的なやつだな
というか僕は今――
そう思いながら顔を上げ瞼を開けていく。
「あぁぅ…」
「あら、スロウス起きたの?」
薄らと眩い光を感じながらお母様と思われる美しい声を聞きながら目を細めお母様の顔を見る。僕は絶世の美女、いやお母様と目が合った、暫しもの沈黙の後に「何か喋らないと」と思ったので「だぁ!」と笑って見せた。
すると横からこれまた驚くようなイケメンな男がでてきた。
鼻が高く二重、紫紺の瞳にお母様と同じ緑色の髪。そしてこの屋敷に相応しいであろう見た目をしている、見た目からしてお父様だろう。
あぁ、屋敷だと分かったのはたまにメイドらしき人が部屋に入って様子を見に来たりする声が聞こえているからだ。
するとお父様と思われる男は
「可愛いな、スロウスはいい子に育ててやるからな」
「えぇ、クレイ。この子は間違いなくいい子に育ちますよ、だってこんなにも可愛いのですもの」
まあ、ともかく僕の新しい人生が始まるんだ、今度こそ後悔のない様に程々に頑張っていくぞーッ!
「あら、この子握り拳を掲げているわ、クレイこの子騎士に向いてるかもね」
「そうかそうか、スロウスは騎士になりたいか!いいぞいいぞ!!」
厄介な誤解をされたが、僕のスロウスとしての人生がこれから始まるのだ
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