第一章
第一話 過労は死を呼ぶ
僕――いや、俺の名前は
28歳の高卒であり、しがないサラリーマンだ。
朝早くから出勤し、夜遅くまで働く、仕事が終わらない場合は家に帰してもらえず、ボーナスはない。安月給であり、やりがいもなければ彼女もいない。
なんとも普通とは言い難い、簡単に言えばブラック企業だ。…彼女が居ないことは関係ないがな。
「はあ、やっ……と仕事が終わった…」
仕事を終わらせ帰り支度を始める。既に時間は11時であり、家に帰ってもご飯を食べずに寝なくてはならないし、家に帰れても明日も仕事だ。
「はっきり言って…ここは地獄だ…」
俺はそう言いながらも会社の階段の手すりに掴まりながら降りていく
「裏口…なら開いてるわな…」
この会社に定時なんてある訳もないのだが、俺の上司は社長と飲みがあるとかどうとかで早々に帰ってしまったのだ。無論警備員以外に今この会社には俺しかいない。
「あいつらも、飲みに行ってんのかな…」
そう言って7段目の階段を降りていく。久しぶりに歩くので足も腰も痺れていておぼつかない、歩くのなんていつぶりだっけ。そんな些細な事を思っていると、手すりがバキッと折れてしまった
「え?」
この会社、以外にもボロかったのか?と脳内思考を巡らせると足がつるんと滑り呆気に取られた声を出して転がり落ちてしまった
「っ"っ――!?ぁ"っ!?がっぁ!??」
身体全身が痛い。1番痛いのは、口だ…
「っげほっ、ぉ"ぶっ…!!」
血反吐を吐いた。その中に混じっていたのは分厚い肉塊、舌であった。どうやら転げ落ちる際に噛み切ってしまったみたいだ。
冗談じゃない。過労で体が痺れて会社で死ぬなんて、あんまりじゃないか!!自分のしたいことも出来なかった。これじゃ生まれてきた意味もない!
そう後悔を滲ませていると意識が朦朧となる。出血多量で死ぬ、気持ち悪い最後に童貞卒業位したかった。
自分の運命を憎み目を閉じる。だんだんと自分から失われていく体温を感じながら人生の幕を下ろしていく、彼が思う事はただ一つ
“過労は身を滅ぼす、だから転生なんて物が本当にあるなら程々に生きていこう。”
そして、彼は死んだのだ――
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺は、死んだのか。何も見えない、と言うよりは真っ白な世界で何も無い。ここが天国ってやつか?
《ほっほっほ、それはちと、違うのぉ》
――!?何もいないのに、見えないのに声が聞こえる!!というか、声が出ない聞こえはするのに何か気持ち悪いなこれ
《神を気持ち悪いとは罰当たりじゃのぉ、せっかくお主を生き返らせてやろうと思っとるのに、
あぁ、姿は見せなくても良いじゃろう。だってワシ、姿が決まっとる訳じゃないからのぉ》
中性的にも聞こえる声の主は、自称“神”らしい
《自称じゃないわい、神じゃわい。》
というか、思ってること丸聞こえじゃないのか?これ、プライバシーの侵害ってレベルじゃねぇぞ。
《まあ、細かいことは良い。今からお主を別の世界へ異世界に転生させるのじゃ、簡単に言えばふぁんたじー?な世界へ魂を送るわけじゃ。今世が余りにも惨めじゃったからの…》
勝手に人生を見られて惨めとは。どうやら神様にとっても俺の人生は悲惨なものらしい。というか異世界に転生だと?それは、剣とか魔法もあるのだろうか
《あるぞ、お主が働いてからは趣味を優先できていなかったみたいじゃが、小説や漫画とやらを読み漁っては右手が疼くとか言っていたみたいじゃし、ぴったりじゃろ》
こ、この神。勝手に俺の恥ずかしい歴史を暴露してやがる。まあ、いいや。魔法とかがあるなら魔力とかも魔物とかもそういうのがあるのか、少し興味が湧いてきたぞ?
《そうそう、魔物もいるんだった。じゃからお主に
《ちーと、なるものはよく分からないのじゃが、まあ、
ぐっ、
《おお、もう時間切れじゃ、それじゃ、異世界の生活を楽しむんじゃぞ〜》
あっ、ちょ!!まだ話したい事が―――
そこで俺の意識は途切れ目の前が白いはずなのに黒くなって行った
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