最強の1歳児 家族の食卓を彩ります

第18話 愛する家族に豪華な食事を!

第2章がはじまりまーす!

よろしくお願いします。


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ちゃりん、ちゃりん・・・・・・


ちゃりん、ちゃりん・・・・・・


ちゃりん、ちゃりん・・・・・・


金属がぶつかる音が響く。


蠱惑的に輝く黄金のコインを指でつまみ、嘗め回すようにみつめる。


ふっふっふ、くはーーーー!


ついに、ついに俺は手に入れたのだ。

革袋にパンパンに詰まった金貨。それをテーブルに積み上げて一枚ずつ丁寧に磨く。


・・・・・・美しい。

金があるって、なんて幸せなことなんだろう。

キランと輝く金貨はどれだけ見ていても飽きることがない。

ふっ、これが給料日を迎えた社会人の気持ちってやつかい?


嬉しすぎるー!


まるで世界が俺を祝福している気分だ。永遠にこの瞬間を味わっていたい。いっそ毎日が給料日ならいいのに。


ああ、いかんいかん。

金の魅力に惑わされて、危うく昇天しかていた。そろそろ現実に戻らないと。


さて、これらはジョーカーから奪った金貨な訳だが、どう扱えば良いか俺は悩んでいた。


最初はそのまま母上に全部献上しようと考えていた。これだけ金があれば、しばらく我が家の食卓は『やせ細った川魚と固いパンだけ』というイカれた修行僧みたいな献立から卒業できるはず。


でも、俺は思ったね。

本当にそれでいいのかと。


だって、初めての親孝行だよ?

無償の愛で長年(1年)、育ててもらったお礼が、現金なんてあまりにも寂しいじゃないか。もっとこう・・・・・・愛の溢れる感じに演出したいんだ。


母上と父上がないて喜ぶような、そんな感じに。


「クー、またお金とにらめっこしてるの? 最近ずっとそればっかり」


声をかけられて、振り向くと幼馴染のリリアが無断で俺の部屋に侵入していた。


「おいおい、こまるよ。ドアくらいノックしてもらないと。としごろの男の子にだってプライベートはひつようなのに」


「だって、扉開いてたもん。いつも扉を閉め忘れるクーがいけないんじゃん。そんなに気になるなら、毎回きちんと締めなよ・・・・・」


「うう・・・・・・」


くっ、くそ!

相変わらず、ああいえばこういう。なんて手ごわい幼女なんだ!

リリアは、異性の部屋にアポなしで突撃する危険性を理解していない。俺がまだピチピチの1歳児だからいいものの、これが健康な青年男児だったら最悪大事件に発展していたよ? いつもボーっとした表情しているこの幼女は、そのへん分かってるのだろうか?


「ま、まあ、つぎから気をつけてくれればいいよ」


「あい」


まるで反省してないように、リリアが適当な返事をかえしてくる。

俺のことを完全に舐めきっている。


「とりあえず、この件はおいといて。じつは、リリアにそうだんしたいことがあるんだ」


「なぁに?」


俺はずっと悩んでいたお金の悩みを相談した。

しばらくリリアは「うーん」と唸った後に言った。


「直接渡すのが嫌ならサプライズとかどう? エリーナさん達には秘密で美味しい料理を用意するの! 余った分のお金はそのままあげればいいんじゃない?」


「お、お前・・・・・・」


天才かよ。

俺が今まで悩んだ時間はなんだったんだ?

ただお金を渡すという無粋を回避しつつ、残ったお金は現金で支給するという、貧困な我が家に配慮した実用的気遣い。なこの幼女、末恐ろしすぎ。


「さいよう! リリアはなんてあたまがいいんだ」


「えへへへ」


「もくひょうはきまった! ははうえ達にはヒミツでおいしいごはんでパーティーをしよう! そうと決まれば、ぜんはいそげだ。さっそくじゅんびをしよう」


俺はお金をしまい外出の用意をする。

美味しいものをいっぱい買って、家族を笑顔にするんだ。

ルンルン気分で部屋をでていこうとすると、リリアが後ろから俺の服を引っ張る。


「なに?」


「クー、忘れてる。私の修行の約束は?」


「あ」


そういえば、そうだった。

無限流の弟子にするって約束をしたっけ。

リリアが不満そうに、ジトっと俺をにらんでくる。


「もしかして・・・・・・わすれてた?」


「ばっ、ばっきゃろう! そんなわけないだろ! おれがやくそくを忘れるなんて、そんな、そんなこと・・・・・・」


「うそ。バレバレだよ。目を見ればわかるから。最近お金ばかり眺めて全然相手してくれなかったから、もう待てない。はやく修業をつけてほしい」


頬を膨らませて、腕を組んだリリアが有無を言わせない態度で俺を見下ろしてくる。完全にお怒り状態だ。ここで下手に抵抗したら、どうなるかことやら。


ぐぬぬぬ、どうしよう。

パーティーを優先したいが、リリアに怒られるも嫌だ。

なにかいい方法はないものか・・・・・・そうだ!


「ふふふ、リリア。きみは、これがただのかいものだとおもっているのかね?」


「ちがうの?」


「うん、これはむげんりゅうの修行のいっかんなのだよ。やってみればわかるから、だまって、ついてきて」


「ほんとう? あやしい」


「おれがいちどでも嘘をついたことある? いいやないね。だから信じてくれ」


「・・・・・・分かった」


こうして、俺は無邪気な幼馴染を言いくるめて、街へとでかけるのだった。

目指すは最高級食材の仕入れだ!

はじめてのお使いをとっくに完了させている俺には、きっと容易い仕事のはずさ。




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