思い出す

Leo

生活の1ページ

信号が点滅し始めた。横断歩道を歩く僕たちは歩む速度を速めた。

右折をしようと、僕たちが渡り終わるのを待つ車に、僕はお辞儀をした。

「おまえってさ、電車の優先席が空いてても座らないタイプでしょ?」

僕は、彼の突拍子のない質問に即座に反応することができなかった。

「仮に自分が満員電車に乗っているとき、目の前の優先席が空いてるのに座らない人を見ると逆に迷惑だと感じない?」

彼は僕に、畳み掛けるように質問を投げかけてきた。

「ジョージ・マロリーだったらすかさず座ってるね。」

彼は、僕の返答を待とうともせず、皮肉を口にした。


6時36分発の満員電車に揺られる僕は彼の言葉を思い出していた。

優先席は一席空いていた。優先席前には、紺色のスーツに身を包んだ30代後半のいかにも真面目そうなサラリーマンが立っていた。

電車はカーブに差し掛かり、重力が僕らに襲い掛かる。

「す、すみません。」

重力に耐え兼ね、姿勢を崩した30代後半のサラリーマンは、彼の後ろに立つサングラスをかけたガタイの良いおじさんに申し訳なさそうにそう言った。


僕は彼の言葉を思い出した。

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思い出す Leo @_le059

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