第43話 ラウンド2

「よし… 気を引き締めていくか…」


 武勇は再び、シンに向かっていったが、シンは後ずさりして、距離をとった。


「おいおい!! どうして、向かってこないんだ!?」


「これじゃあ試合にならないだろ!!」


「……」


「ふっ… ただ立ち向かうだけが闘いではないのだよ… 武勇君…」


「そんなに感情的になって、向かってきても…」


「こうやって避け続けられたら…」


「いつか、スタミナ切れで、負けるぜ…」


「!?」


「おっ… 俺としたことが…」


「このままだったら、お前の思うつぼだったというわけか…」



 武勇は構えを崩さずに、後ろへ一歩引いた。



「ハハハ!! 武勇君、闘いというのは常にここ!!」



「頭を使わないといけないんだよ!!(ラッキー!! これで、合法的に逃げ続けられる!!)」



「おーーっと!! シン選手!! まさかそんな作戦があったとは!!」


「意外と彼は、頭を使って闘うタイプなのかもしれませんね…(絶対、ただ怖くて避けただけだと思うけど…)」



 その後、武勇が少し攻めを見せるが、それをシンが避けるという展開が続き…



 カン!!!!



 第2ラウンド終了…


「うーん… なんだか、パッとしないラウンドでしたねぇ… マックスさん…」


「はい… 多分シン選手のあの発言によるものでしょう…」


「このまま、何の進展もないまま… ラウンドだけが過ぎるということにならないよう、願うばかりです…」



 マックスの嫌な読みは的中した。 本当に何の進展もないまま、ラウンド7まで終了した。



「……」


 何だこの空気…


 全く闘いが盛り上がらないから、お通夜みたいになってる…


 あっ… そういえば…


「天流さん…」


「この町って、地図に載ってなかったんですけど…」


「一体どういうことなんですか…?」



「あー… それはですね…」


「この町…」



「ここに住んでいる人たちで作ったんです…」



「えっ…?」


「このカラベスという町は、家も建物も全て、1から手作りで作ってあるんです…」


「だから、おおやけには町として登録されてなくて、自分たちでカラベスって呼んでるんですよ…」


「へ―… そうだったんですね…」


「えー… この町の人たちはみんな何かしらの理由があって、ここに集まってきて、自分たちの町を作り上げたんです…」



「だから… 皆強いんですよ…」



「きっと… こんな争いがあった、なんて、考えられないほど立派な町にしてくれると思いますよ…」



「……」


「わかりました… ありがとうございます…」



 カン!!!!



 第8ラウンドが開始され、シンと武勇はお互い拳を構えた。



「ハァ… ハァ…」


「まずいな…」


「あと3ラウンドで決着をつけないと…」


「体がもたない…」



 武勇は拳を構えたまま、シンに向かって走り出した。


「よしっ… あと3ラウンド全て避けて…」



 バタッ…



 武勇はシンに拳を当てることが出来ないまま、倒れた。



「えっ…」


「おーっと!! 武勇選手!!」


「倒れてしまった!!」


「くそっ… ちょっとつまづいただけだ!!」


「武勇選手!! 再び立ち上がる!!」


「けれど、ふらついていて、いまにも倒れそうですよ…」



「お前…」


「もしかして…」



つまづいただけだっつってんだろ!!」



 武勇は、シンに向かって何度も、パンチを繰り出したが、シンは容易に全て避けることが出来た。



 やっぱり…


 全身筋肉痛なんかじゃない…


 こいつ…



 あの闘いでの怪我をずっと無理して、隠していたのか…



 グッ…



 シンはグローブの中の拳を強く握った。



 情けないなぁ… 俺は…



 シンは拳を構えて、武勇に向かって行った。



「おおーーっと!! シン選手!!」


「ついに攻めの姿勢を見せた!!」



 くらえ!!!!



 右ストレート!!!!



 武勇はシンのパンチを、軽く避けた。


「まだだ…」


「2発目!!」


「ふっ… 何だそのパンチ…」


 武勇は、シンのパンチをまた避けた。


「おいおい!! どうした…」


「闘いってのは、頭を使うんじゃなかったのか…?」


「ハァ… ハァ…」


「うるさい…」


「お前が、やりたいのはこれなんだろ…」


「だったら… やってやるよ…」



 シンは武勇に向かって3度目のパンチを繰り出した。



「ふっ… そんな、攻め方じゃまた…」



 グキッ…



「!?」


「しまった… あっ… 足が…」



 パスッ…



 シンの右ストレートが武勇の頬に直撃した。


「おっ… おおーー!!」


「ついに、シン選手の一撃が、武勇選手に決まったー!!」


「これは、面白い展開ですね…(奇跡が起こった…)」



 武勇はパンチを受けた驚きで、その場で体勢を崩した。



「ハァ… ハァ…」



「どうだ!!」



「俺の一撃は効くだろ!!」



「……」


「いやー… 危なかった…」


「多分、うまく衝撃を和らげられたのだろう…」



「全く痛くなかったぞ…」



「……」


 えっ…



「おおーーっと!! 武勇選手!!」


「まさかの無傷!!」


「これはシン選手、驚きを隠せません!!」



「それじゃあ… 遠慮なく…」



 ドン!!!!



 シンに武勇の繰りだしたボディブローが左脇腹に炸裂した。



「があっ!!」



 シンは、右腕で脇腹を抑え、膝から崩れ落ちた。



「おおーーっと!! シン選手ダウンか!?」


「10!!」


「9!!」


「8!!」


「7!!」


「6!!」


「5!!」



「まずい… 立ち上がらなくては…」


 シンは、ふらつきながらも立ち上がり、拳を構えた。


「おおーー!! シン選手、何と立ち上がった!!」



 カン!!!!



 それと同時に、第8ラウンド終了です!!


 シンと武勇は1分間のインターバルに入った。


 残り2ラウンド、果たして決着は!?


 第43話 FIN

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