第38話 武勇の能力

「ハァ… ハァ…」


 こっ… こいつおちょくってるのか…?


 避けてばっかで、全く反撃してこない…



「おい!! お前!!」



「どうして、攻撃してこないんだ!?」


「……」


「えっ…」


「どうしてって…」


「反撃したら、喧嘩が終わっちまうだろ…」


「!?」


「俺、喧嘩好きなんだよ…」


「特に強いやつと闘うのが…」


「だから… 本来は全力を出したいんだけど…」


「お前弱いから…」


「全力を出すと、喧嘩が終わっちまうだろ…」


「だから… 手を抜いてあげてんの…」



「……」


「ハァ…」


「俺もなめられたもんだな…」


「俺も、この稼業長いけど…」


「こんなに、プライドを傷つけられたのは初めてだ…」


「……」


「なぁ… 知ってるか…」


「この両腕の鋏で何人殺したか…」


「これで、体をぶっ刺すときの気持ちよさと来たら…」


「くぅーっ…」


「たまらんな…」



「……」


「おい… 何1人で話してんだ…」



「おっと… すまない…」


「まぁ… 要するに…」


「俺は… 結構怒っているということだ…」


「だから…」



「お前を殺す!!!!」



 バロウズは両腕を組んでかがんだ。


「なっ… 何だ!?」


「ククク… まぁ見てろ…」


 バロウズの両腕の鋏が段々と細長く、鋭利な刀へと変わっていった。



 能力名:腕刀二刀流ダブルソード・ハンズ



 シュッ……



 バロウズは刀になった両腕を振り上げた。



「くらえ…」



二天飛空斬フライ・スラッシュ!!」



 バロウズは振り上げた両腕を思いっきり振り下ろし、斬撃を出した。


「おっと!!」



 武勇が避けたバロウズの斬撃は、建物の壁を真っ二つにした。



「……」


「フッ… フフフ…」


「ハハハハハ!!」


「えっ!?」


「おっ… お前…」


「俺の斬撃の鋭さを見て気でもおかしくなったか?」


「ハハハ……」


「ハァ……」


「いやっ… 俺はうれしいんだ…」


「あんな攻撃受けたら間違いなく致命傷だ…」


「だから、これからは一切手を抜かない…」


「やっと… 本気で戦えるよ…」



 武勇はポケットから、櫛を取り出し、リーゼントのセットをなおしだした。


「一体何をするつもりなんだ…」


「よしっ…」


「うーん決まったぜ…」


「やっぱこの髪型じゃないとな…」


「さてと…」



「何なんだ…」


「さっきと、雰囲気が変わったぞ…」


「こいつから感じる殺気で、飲まれそうだ…」


「髪のセットをなおすだけで、こんなにも変わるものなのか…?」



「おい… 鋏…」


「刀野郎…」


「一応、言っておくが…」


使…」



 武勇は、ポケットに手を突っ込んで、バロウズにガンを飛ばした。



「そういうわけで…」



夜露死苦よろしく!!!!」



 ふっ… 決まったぜ…



 武勇はポケットから手を出し、両腕でファイティングポーズをとった。


「……」


「何も起こらない…」


「あいつは今能力を使って…」


「!?」


 武勇の両拳が強く光りだした。



「何だこの眩しい光は!!」



 光が収まると、武勇の両拳にある変化が起きた。


「……」


「本来だったら、喧嘩で使うのは気が引けるのだが…」


「俺の能力上、仕方ないんだよな…」


「何だ… その拳にはめている銀色の物は…?」



「えっ… お前知らないのか…?」


「メリケンサックってやつだよ…」


「まぁ… 攻撃力が増す武器ってとこかな…」


「ともかく…」


「覚悟しろよ…」


 武勇はファイティングポーズをとり、その場でシャドーボクシングを始めた。


「一体何を…」



「!?」



「これは!?」



不良の翔拳ヤンキー・ジョブ!!!!」



 武勇がパンチを繰り出したとき、武勇の拳から、拳の形の衝撃波が放出された。


「何だ… 俺の斬撃と似たようなものか…」


「だったら…」


「俺の斬撃で相殺してやる…」



二天飛空斬フライ・スラッシュ!!」



 バロウズは両腕の刀から斬撃を発生させた。


「これで… あいつの拳を防げるはず…」



「何っ!?」


 武勇の拳はバロウズの斬撃を押しのけ、バロウズに向かっていった。


「ぐはっ!!」


 バロウズに強烈な拳の衝撃波が襲い掛かった。


「ふぅ… 知らないのか…」


「グーはチョキより強いんだぜ…(これ鉄則)」


「にしても…」


「流石に、何十発もくらったら、もうギブアップか?」


 仰向けに倒れていた、バロウズはふらつきながらも起き上がった。


「ハァ… ハァ…」


「何だ… あの拳は… 一発、一発がとてつもなく重い…」


「だが… まだだ…」


 バロウズは武勇に向けて走り出した。


「何だ!?」


「まっすぐ走ってきやがった!!」



「くらえ!!」



二天肉裂斬ダブル・スラッシュ!!」



 バロウズの刀が武勇を襲った。



 ドン!!!!



 武勇のメリケンサックとバロウズの刀が衝突した。


「おっ… 俺の刀をもってしても切れないとは…」


「そんなやわじゃねぇよ… これは…」


 武勇とバロウズはお互い距離をとった。



「おい…… いい加減教えろ……」


「どうしてこの町と俺を襲ったんだ!?」


「……」


「いいだろう…」


「これはゲームだ…」


「簡単に言えば、お前を殺せば、俺たちはゲームクリアで…」


「金やら、何やらいっぱいもらえるってことよ…」


「まぁ… 俺たちがゲームに参加する目的は別にあるんだが…」


「……」


「じゃあ… お前らは…」


「遊び半分でこの町を襲ったということか…?」



 グッ…



 武勇は拳を握り締めた。


「許さない…」



「てめぇ… 骨も残らねぇと思え!!」


 第38話 FIN

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