第29話 フランツ孤児院

「おかえり!! シスター!!」


「おかえりなさい!!」


 大勢の子供たちがシスター・アイリーンに抱き着いた。



「フフフ… ただいまみんな…」


「おっ… お邪魔しまーす…」



「……」


「あっ… こちらはシンさんとマックスさん…」


「今日から数日間… ここで一緒に暮らす予定だから…」


「みんな… 失礼の無いようにね!!」



「はーい!!!!」



「それでは… お部屋に案内します…」


 シンとマックスは、部屋に荷物を置いた後、夕食まで子供たちと過ごすことになった。 マックスは子供たちと外で鬼ごっこをシンは部屋の中で過ごすことになった。



「ねぇねぇ… おじさんって強いの…?」


 おっ… おじさんだと!?


「あー… 結構強い(かったというべき)かな…」


「じゃあ… 武勇君とどっちが強いの…?」


「あー… あのリーゼント野郎か…」


「んなもん… 俺に決まってるだろ!!」


「えっ!! ほんと!?」


「ふっ… あんな奴… 5分もかからずにボコボコにできるわ!!」


「へー… すごいなぁ…」


「武勇君はね… めちゃくちゃ強いんだよ!!」


「確か前… クマをボコボコにしたって言ってたかな…?」


「なにっ…」


「違うよ!! ライオンだよ!!」


「……」


「嘘だろ…」


「とにかくすっごい強いんだよ!!」


「あっ… あとね…」


「もうすぐ… 武勇君たち漢組のお兄ちゃん達が来るらしいよ!!」



「なんだと!!」



 ブルンブルン!!



「!?」


「あっ!! 武勇君達だ!!」



「ふぅー…」


「武勇くーん!!」


 武勇達、漢組の近くに子供たちが集まった。


「よぉ… おめぇら元気だったか!!」


「うん!!」



「あっ… 漢組の皆さん!!」


「すみません… まだ夕食の準備が出来てなくて…」



「いいんだよ!! シスター!!」


「何なら俺たちも手伝うから!!」


「ありがとうございます… 助かります…」



 武勇達、漢組のメンバーは皆、バイクを降り、夕食の準備に取り掛かった。



「……」


「ねぇ… シン…」


「まさか… あの人たちとここで会うとはね…」


「あー… 俺も驚いた…」


「というか…」


「なんであいつら、あんなに手際がいいんだ!?(みんな人相悪いのに、エプロン姿なのがすごく違和感)」


「ふふっ… でも楽しそうだよ…」


「……」


「そうだな…」



「ん!?」


「誰だ!! そこにいる奴は!!」


「……」


 シンとマックスは漢組の前に姿を現した。


「どっ… どうも―…」


「お邪魔してますぅ…」



 シー―ン……



 くっ… 空気がとてつもなく重い…



「へへへ… 何かあっしらにお手伝いできることはありますかね…?」


「……」


「ふぅー…」


「今、いがみ合ってもしょうがない…」


「じゃあ… そこにある、食器を洗ってくれ…」


「はっ… はい!!」



 シンとマックスは漢組の指示を受けて、夕飯の調理を手伝った。



「……」


「それじゃあ… みなさん…」


「手を合わせてください…」



「いただきます!!」



 ぱくっ…



「!?」


「これは…」



「うんめーーーー!!」



「何だこのカレー!?」


「ふっ… そうだろ…」


「うん!! 確かにおいしいよ!!」


「うんまいな!! こりぁ何杯でもいけるぞ!!」


「おいおい… これはガキどものために作ったんだ…」


「お前がそんなに食ってどうすんだ…」


「あっ!! そうか!!」


「けど… 大量に作ったから、相当の量は食えると思うぜ…」


「あっ… 武勇さん…」


「もう空です…」


「何っ!! ガキどもの食欲恐ろしいな…」



 夕食後、シンたちは、武勇達が持ち寄ったお菓子を肴に子供たちと宴会をすることになった。



「それじゃあ…」



「カンパーイ!!」



「おいしい!!」


「何このお菓子!?」



「ハッハッハ!! これは、隣町の有名なメロンパンの形したクッキーだ」


「うん… だじがにごればどでもおいじい!!」


「おい!! これはお前のために買ったんじゃないぞ…」


「ぞうだよ… ジン!!」


「お前もだよ!!」


「ずみまぜん… わざわざどおぐまでがいにいっでもらっで…」


「シスターもかよ!!」



「ったく…」


 ゴクッ…


「プファーー」


「……」


「あれっ…」


「お前ら… バイクで来てたよな…」


「酒飲んじゃダメじゃね…」


 プフッ…



「ハハハハハ!!」



 漢組は皆、声を出して笑いだした。


「!?」


「えっ…」


「いやー 久しぶりにこんなに笑った…」


「これは…」



「子供のビール!!」


「ジュースだよ!!」



「あっ… そうなのね…」


「いやー お前面白いな!!」



「気に入った!!」



「明日… 俺たちがこの町を案内してやるよ!!」


「いやー… 別にそんなこの町に興味は…」



 シーン……



 やっ… やばい…


 一瞬でお通夜みたいな空気になった…


「あっ… せっかくだから行こうかなー…」


「なぁ!! マックス!!」


「うんそうだね…(ここで断ったら殺される…)」


「だろ!! じゃあ明日な!!」



 ツンツン…


「うん!? どうした坊主!?」


「そういえばさ…」



「このお兄ちゃんがね、武勇君をね“5分もかからずにボコボコにできるわ”って言ってたよ!!」



「……」



「あん!?」



 あっこのクソガキ!!



「テメェ!! そんなこと言ってやがったのか!!」



 武勇は激怒して、シンの胸ぐらを掴んだ。


「まっ… 待て!! 落ち着け!!」


「これが落ち着けるか!!」



「もういい!! 明日の件は無しだ!!」


「5日後だったな… 絶対逃げるなよ!!」



 武勇は止まっているバイクに向かって歩いて行った。


「頭!! 一体どこへ!?」


「帰る!!」



 ブルンブルン……



 ゴーーーー!!!!



「行っちゃった…」


「大丈夫!? シン!?」


「あーなんとか…」


「けど… 大変なことになった…」



 夕食後に行われた宴会は、波乱の展開を迎え、お開きになった。



 シンと武勇の決闘まであと5日……




「あそこか… カラベスって町は…」


「あー… なんでも… とてつもなく強いやつが支配しているらしいぞ…」


「確か、ゲームクリアには… そいつを生け捕りにするか、殺すかのどっちかだったな…」


「ともかく、急ごう…」


「じゃないと…」


「俺たちが殺される…」


 第29話 FIN

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