第25話 やっと会えた

 ギギギギギギ……


「……」


「霊花ちゃん…?」


「……」


「はい…」


 霊花は階段奥の部屋から、姿を現した。


「……」


「やっと会えたねぇ…」


「……」


「10年ぶりくらいだね…」



「せっかくこうして、会えたんだから、奥の部屋でゆっくり話そうよ…」


「わかった…」


 カタリベは階段を上り、霊花とともに、奥の部屋に入っていった。


「……」


「霊花ちゃん… 君は本当に変わらないなぁ…」


「実は僕、ずっと君を探していたんだ…」


「一体君は何をしていたんだい…」


「……」



「ずっと… ここにいたよ…」


「!?」


「私も… カタリベ君を待ってたの…」


「けれど… カタリベ君はここに来なくなったったでしょ…」


「えっ…」


「けど… 僕はずっとこの町で過ごしてきたから…」


「だったら… 会いに来てくれればよかったのに…」


「……」


「それはできないの…」


「!?」


「どうして?」


「多分信じられないかもしれないけど…」


「実は私…」



「ゲホッ!!」



「!?」


「霊花ちゃん… 大丈夫!?」


「ハァ… ハァ… 大丈夫だよ…」



「ハァ…」



「実は私、人間じゃないの…」



「!?」


「えっ… どういうこと…」


「私ね… もともとは猫で…」


「不思議な能力を使ってこの姿になってるの…」


「だから… 私の姿は… あの時のままでしょ…?」


「……」


 確かに… 変わらないといっても10年も経てばもう大人になっていてもいいはず…


 あの時の姿のままなのは、おかしい…


「驚いた…?」


「うん… まだちょっと… 信じられないよ…」


「それに… 私… 病気で… ほんの少ししかこの姿になれないの…」


「だから… あなたに会いに生きてくても行けなかったの…」


「そうだったのかぁ…」


「だったら今日は… その姿のままではいられないの…?」


「いいえ… 今日はずっとこの姿のままでいるよ…」


「もう決めたんだ…」




「……」


「それと最後に一つお願いが…」


「えっ…?」


「私は、カタリベ君にあったら最後…」



「この姿に戻ることは多分ありません…」



「!?」


「実は最近… 自分の体が限界だということを感じているんです…」



「だから… 彼との思い出を最後に、霊花としての一生を終わらせようと思います…」



 霊花…


 あいつは、覚悟して、今日を迎えているんだな…


 俺も… 出来る限りのことはするから…



 今日のこの時間を楽しめよ…



「……てか」


「マックス、スゲーな!!(話も上手いし、なんかプロみたいだ…)」


「あいつ、こっちの業界向いてるんじゃないのか…?」



「ゲホッ!! ゲホッ!!」



「霊花ちゃん!!」


 カタリベは霊花の背中をさすった。


「本当に… 大丈夫かい…?」


「あった時よりも、顔色がかなり悪くなってるよ…」


「……」


「本当に大丈夫…」


「ごめんね… せっかく時間を作ってもらったのに…」


「……」


「そうだ… 私たちが初めて会った時の話をしない…?」


「……」


「あの時だね…」


「初めて、僕がこの城に入った時…」


「えー…」



「ププッ!!!!」



「!?」



「ハハハハハハ!!」



「えっ… どうしたの霊花ちゃん急に吹き出して!?」


「ハァ… ハァ… だって…」


「初めてだったんだもん…」


「こんな… 不気味な城に…」


「好奇心で来るなんて…」



「それに…」


「普通… こんな場所で会った人と友達になるー?」


「私だったら、怖くて逃げちゃうよ!!」


「……」


「ハハハ… 確かにね…」


「けど… 僕は… よかったと思うよ…」


「あの時… レイア城にいなかったら… 君に会えなかったからねぇ…」



「カタリベ君…」



「ゲホッ!! ゲホッ!!」



「!?」


「霊花ちゃん!!」



「ハァ… ハァ…」



「ゲホッ!! ゲホッ!!」



 大変だ… さっきよりも咳が酷くなってる…



「霊花ちゃん!! しっか…」


「!?」


 嘘だ… 霊花ちゃんの体が消えかかってる…



「マック・スティーブさんありがとうございました!!!!」


「いやーこんなダークホースがいるなんて…」


「今年は豊作ですねー!!」



「ふぅ… やっと終わったよ…」


「マックス!! お疲れ!!」


「いやーほんとすごかったよ!!」


「そういえば…」


「あの話… 一体どこで仕入れたんだ!?」


「えっ…」



「実体験だけど…」



「えっ…」


「続いては… こちらも、期待の新人…」



「シンさんでーす!!」


「おっ… ついに俺の出番か…」


「頑張ってね!! シン!!」


「あー… 任せとけ…」


 カチッ…


 シンは、自分の右腕に銀の腕輪をつけた。


「よし行くか…」


 シンは壇上に上がった。


「これは私が体験した、怖い話です。」



「ゲホッ!! ゲホッ!!」


「どっ… どうしよう…?」



「このままじゃ… 霊花ちゃんが死んじゃう…」



「ハァ… ハァ… カタリベ君…」


「何!? 霊花ちゃん!?」


「この部屋の屋根裏に、黒い猫がいるから、ここに連れてきてくれる…?」


「わかった!! 黒い猫だね!!」


 カタリベは屋根裏部屋を必死になって探して、倒れて息をしていない、黒猫を見つけ出した。


「霊花ちゃん連れてきたよ!!」


「でもこの子… 息をしていないみたいだし、ピクリとも動かないよ…?」


「……」


「その猫は私なの…」


「!?」


「やっぱり、君だったか…」


「私ね… ずーっと、ここの家族に飼われてたの…」


「毎日、おいしいご飯が出たり… 暖かいお布団で眠れたり…」


「何不自由ない暮らしをしていたの…」


「特に… 長女のレイアちゃんとは、毎日お外で遊んだし、沢山お話したわ…」


「けれど… そんな幸せな生活は長くは続かなくて…」


「ここの家族がね… 遠くに行っちゃうことになったの…」


「私は、ついて行きたかったけど…」


「レイアちゃんがね、泣きながら…」



「ごめんね… あなたと暮らすことはもうできないの…」



「って言ってて…」



「私は、この城で一人で暮らすことになったの…」


 第25話 FIN

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