第24話 レイア祭

 ー翌日ー


「……」


「あー… それは厳しいかもねぇ~」


「今日は、“レイア祭”だからねぇ~」



 “レイア祭”それは、ロズで年に1回行われる大規模なイベントのことで、昔、レイア城に住んでいた貴族が長女の誕生日に住民を招いて、パーティーをしたことが始まりとなっている。


 現在は、オカルトの町らしく、町民はお化けの仮装をしたり、ショーが行われ、毎年多くの観光客で賑わっている。


 一番の目玉は、祭りのために建設された特設ステージでの、話家達の怖い話、カタリベは毎年トリを務めている。


「マジかよ…」


「でも… 最後ってことは、途中まではいなくても大丈夫だろ!?」


「いや~… 実は僕… このイベントで司会も務めることになってるんだ…」


「何!?」


「一体どうすれば…」


「とっ… ともかく霊花ちゃんに報告しよう!!」


「そうだな!!」


 シンとマックスはレイア城へ向かった。



 ギギギギギギ……



 バタン!!!!



「おーーーーい!!!! 霊花ーーーー!!!!」



「……」


「はぁ~い……」


 霊花が2階の部屋から姿を現した。


 だが… 現れた彼女はフラついており、階段前で倒れた。


「!?」


「だっ… 大丈夫か!!」


 シン達は、倒れている霊花に駆け寄った。


「ハァ… ハァ…」


「いったいどうしたんだ!?」


「ハァ… 大丈夫です…」


「この姿になると、たまにあるんです…」


「でも、今日は大切な日だから…」


「嬉しいなぁ… 午後9時であってますよね…?」


 霊花はシン達を見の方を向き少しはにかんだ。


「……」


「あぁ… そうだよ…」


「絶対にあいつを連れてくる…」


「だから… 体調は整えておけよ…」


「……」


「わかりました… ありがとうございます…」


「それと最後に一つお願いが…」


「えっ…?」


 霊花はシンたちに何かを話した。


「そうか…」


「わかった… ゆっくり休んでいてくれ…」


「はい…」


 霊花はフラつきながらも、部屋に戻っていった。


 その後、シン達もレイア城を跡にした。


「……」


「シン… あの子本当に嬉しそうだったね…」


「あー… だから…」


「今日は無理だって言えなかった…」


「一体どうすれば…」


「そうだ!!」


「午後9時じゃなくて、もうちょっと早い時間にしてもらったら…?」


「ダメだ… カタリベは、祭りの運営で手一杯らしい…」


「そっか…」


「……」


「ん!?」



「あっ!!!!」



「!?」


「えっ!? どうしたの!?」


「いい案を思いついた!!!!」


「これだったら… 出来るかもしれない!!」


 シンはマックスを連れて、ホテルを飛び出した。



「一体… いい案って何なの!?」


「ふっ… これだよ…」


 シンはマックスに腕輪を見せた。


「腕輪…?」


「クックック…」


「カタリベが話す怖い話ってのは、あいつの能力が使われていると思うんだ…」


「だから… この腕輪を使って、あいつの能力を借りる…」


「そして…」


「俺は壇上で長めの怖い話を披露して、少しでもあいつと霊花が一緒にいれるようにしてやるんだ…」


「シン……」


「厳しいかもしれないけど… 僕、応援してるよ!!」


「……」


「何言ってるんだ… マックスも参加するんだぞ!!」


「えっ…」



「えーーーーっ!!!!」



「ともかくカタリベのとこに行くぞ!!」



「……」


「確かにねぇ~ 僕の話は、僕の能力を使ってるんだけどねぇ~」


「けれど… あくまで話の環境づくりにしか使ってないから…」


「肝心な話の部分は… やっぱり経験を積まないと厳しいかもねぇ~」


「……」


「よし!! わかった!!」


「俺とマックスは今から死ぬ気で練習するから…」


「お前は… 俺たちが話している間は… 霊花に会ってやってくれないか…?」


「……」


「わかった…」


「なんだか緊張してきたよ…」


「何しろ10年ぶりだからねぇ~」


「霊花ちゃんはどうなってたぁ…?(きっと、美人さんになってるだろうなぁ~)」


「あっ… それは… 会ってのお楽しみだ!!」


「そうか… それは… 期待しちゃうなぁ~」


「それじゃあ… 僕は引き続き、祭りの準備に戻るよぉ…」


「君たちの出番は僕の出番の直前の2枠に入れてもらうことにするよぉ…」


「わかった!!」


「それじゃあねぇ~」


 カタリベは祭りの準備に戻った。


「……」


「そういえば、シン…」


「カタリベさんは、霊花ちゃんが年を取ってると考えてるみたいだけど…」


「霊花ちゃんって、女の子の姿の時って…」


「……」


「そうなんだよ、マックス…」


「霊花はカタリベと初めて会った時の姿のままだ…」


「けど… こればっかりはどうしようもない…」


「そこは… あいつらがどう感じるかだ…」


「そうだね…」


「ともかく俺たちは…」


「カタリベの為に少しでも霊花と一緒に入れる時間を作ってあげよう…」


「そのために、今から死ぬ気で練習するぞ!!」


「そうだね!!」



 シン達は本番までの時間を利用して、必死に練習した。


 そして、午後6時前…



 レイア祭のメインイベント“怪談話大会スケアリー・ナイト”が始まろうとしていた。



「……」


「ふぅー… いやー緊張してきたな…」


「そうだね…」


「一応スケジュールでは、カタリベさんが午後9時30分から午後10時までのトリを務める予定で…」


「僕たちは、その前2つの枠で怖い話を披露する…」


「あー… まずはマックス… そのあと俺の順でな…」


「カタリベは司会として話の後にコメントしなきゃいけないらしいが…」


「2つ前、マックスの出番の時には、自分の準備ってことで席を外せるらしい…」


「それで… 俺たちは25分くらいの少し長めの話をするから…」


「マックスの番が午後9時くらいだとして…」


「結果的には、夜9時50分までの約50分間、霊花との時間が出来るってわけだ…」


「そうだね…」


「……」


「そろそろ始まる時間だ…」



 午後6時… “怪談話大会スケアリー・ナイト”が始まった。



「みなさーん!! 本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございまーす!!」


「今日は思う存分怖がってくださいねー!!」


「司会は私、町役場に勤めている、幽子と…」


「カタリベが進行を務めま~す!!」



「……」


「ついに始まったね…」


「そうだな… というか、すごい数の人…」


「まぁ… メインイベントだからね…」


「僕緊張でドキドキしてきたよ…」


「俺もだ…」



「それじゃあ、さっそく… 一人目の噺家の方、お願いしまーす!!」


「はい…」


「これは、私が体験した本当にあっただろう怖い話です…」



 一人目の講談師を皮切りに次々と、壇上で怖い話が披露されていった。


「みんなすごいね… 本当に話が上手いよ…」


「あー… あと、大体10分くらいでみんな切り上げてるな(果たして、25分も持ちこたえられるのか…)」


 イベントは順調に進みついにマックスの出番が近づいてきた。


「……」


「ふぅー… 緊張するよ…」


「頑張ろうマックス… 何が何でも成功させるぞ…」



「いやー 本当にどのお話も怖いですねぇ~」


「そうですねぇー あっ!!」


「すみません… 僕は最後にある出番に向けて準備の為にいったん席を抜けますねぇ~」


 カタリベは、舞台の裏へと移動した。


「……」


「さて!! みなさん!!」


「このイベントも終盤に差し掛かってまいりました!!」


「ですが、最後までお付き合いくださいねー!!」


「では次の方…」


「マック・スティーブさんよろしくお願いします!!」


「……」


「ついに… 僕の番だ…」


「おう!! 行って来いマックス!!」


「ありがとう!! 行くよ!!」


 マックスは壇上に上がっていった。


「……」


「…シンくん?」


「!?」


「おう!! カタリベ!!」


「僕はこれから… レイア城に行くよぉ~」


「頑張ってねぇ~」


「ありがとうな… お前も、楽しんで来いよ!!」


「うん!!」


「あっ… あと…」


「この金の腕輪をつけてくれないか…?」


「えっ… いいよ(何だか知らないけど)…」


 カチッ…


 カタリベは自分の右腕に金の腕輪をはめた…


「それじゃあ… もう行くね…」


 カタリベは小走りでレイア城に向かって行った。


 よし… いったんカタリベの心配は終わりにして…


 自分の出番に集中するぞ!!


 第24話 FIN

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