第23話 幽霊城の霊花ちゃん
ギギギギギギ……
バタン!!!!
「こんにちはー…」
「って… 誰もいないか…」
「……」
「しっかし… すっげー、でっけー城だなー」
「本当だねぇ…」
「なんでも… 昔、すごい大金持ちが住んでたんだって…」
「へ―…」
ギシッ!!!!
「ぎゃあーーーーっ!!!!」
「……」
「ハァ… ハァ… 何だ床がきしんだだけか…」
「ハァ… ハァ… もう… 驚かさないでよ…」
「確かに… 部屋はすごい広いけど…」
「蜘蛛の巣だらけだし… 壁とか床はボロボロだよ…」
「ともかく… 何か音がしても、気にしないで行こう…」
「わかった…」
シンたちは震えながらも、部屋の中央にある木でできた大階段の前に着いた。
「……」
「こっ… ここだな…」
「幽霊が出るって噂の階段は…」
「……」
「いいかマックス…」
「何があっても… どんな音がしても…」
「絶対に振り返らない… 足を止めない… ってことにしよう…」
「わかった…」
「よし… じゃ俺が先頭を行く…」
シンとマックスはゆっくりと、階段を上り始めた。
ギシッ…
ミシッ…
……
ふぅー…
一歩一歩が死ぬほど重たい…
まるで何かが重くのしかかっているみたいだ…
シンとマックスは一言も話さず、階段を登り切ろうとしていた。
やった… やったぞ… あともう少しだ…
あと一段…
シンは階段を登り切った。
「やったぜ!! なーんだ、幽霊なんて出ねぇじゃねーか!!」
……
「あれっ… マックス!!」
「なんでそんな途中で、止まってんだ!?」
「もしかして、怖いのか!!」
「……」
「……シン」
マックスは震えた小さい声で、話した。
「ねぇ… これって僕の思い過ごしかな…?」
「階段を上っているときに… 後ろからずっと視線を感じるんだ…」
「えっ…」
「それから…」
「ずっと…」
「君の右肩と僕の右肩に 透けた手が乗ってるんだけど…」
「……」
シンとマックスは無意識に後ろを振り返った。
「オマエダ……」
二人の後ろには、白装束を着た女が立っていた。
「……」
バタン……
シンとマックスは、白目をむき泡を履いて倒れた。
……
「あのー… あのー…」
「大丈夫ですか…?」
「もしもーし…」
「……」
「ん…」
シンはゆっくりと目を開けた。
「あっ!! 気が付いたんですね!!」
「……」
「ぎゃあーーーーっ!!!!」
シンは壁の端に高速で移動した。
「おおお… お… おば… おば… お化け…」
「……」
「えーーっ!! なんて失礼な人なんですか!!」
「せっかく私がここまで、運んできたのに!!」
「……」
「運んできた!?(確かにマックスも部屋の隅で伸びてる…)」
「そうですよ!! 男性を担いで、この2階の部屋まで来るのは大変だったんですからね!!(しかも2回!!)」
「……」
待てよ…
幽霊って、実態がある体とかって担げるのか…?
「うーん…」
「あのー… つかぬことをお聞きしますが…」
「お名前は…?」
「名前…」
「私の名前は
「霊花…」
「あっ!!!!」
「目の前には赤い靴を履いた幼い少女が立ってたんだ…」
「赤い靴を履いた幼い少女…」
「あんたが霊花ちゃんか!!!!」
「へっ!?」
「いやー… 探してたんだぞ!!!!」
「えーっと… どういうことですか…?」
「それはだな… あんたカタリベって人知ってるか!?」
「……」
「忘れるわけないじゃないですか…」
「やっぱり!! 良かった!!」
「早速だが、城の外に出て、あいつに会ってやってくれないか!?」
「……」
「それは… 出来ません…」
「えっ!?」
「もしかしてあいつのことが嫌いなのか!?」
「……」
「いいえ違います…」
「カタリベ君は私にとって本当に大切な人でした…」
「……」
「だったらどうして…?」
「……」
「私はこの城から出られないからです…」
「えっ!?」
「……」
「私は… 私の正体は…」
「猫なんです!!!!」
「……」
「えーーーーっ!!!!」
「まぁ… 詳しく説明しますと…」
「私はですね… 特殊な能力を持った猫なんです…」
「その能力は…」
「幽体離脱…」
「私は、自分の体を離れて、この女の子の姿を実体化させることが出来るんです…」
「なるほど… その能力を使っているときに、カタリベと出会ったんだな…」
「……」
「その通りです…」
「でっ… この城から出られないってどういうことなんだ…?」
「それは…」
「ゲホッ!! ゲホッ!!」
「!?」
「おい!! 大丈夫か!?」
「ハァ… ハァ… はい…」
「実はこれが原因なんです…」
「昔はこの能力を使っても城の外に出かけられたんですけどね…」
「今は、私の体の方が弱くなってしまって…」
「ほんの少しの時間しかこの姿になれなくなったんです…」
「……」
「そうか… それなのに俺たちをここまで、連れてきてくれたのか…」
「……」
「昔みたいに、カタリベさんとお話ししたり、一緒にお散歩したいんですけどね…」
「……」
「そうか… わかった…」
「だったら、明日の午後9時くらいにカタリベをここに連れてくる…」
「えっ!?」
「でも… あの人は毎日忙しそうだし…」
「それにこんな話、信じてくれないんじゃ…」
「大丈夫!!!!」
「俺とマックスに任せとけ!!」
「霊花は明日に備えて体調管理しとけよ!!」
「あっ… ありがとうございます…」
「私… 私なんてお礼を言ったらいいか…」
「いいってことよ!!」
「じゃ明日!!」
シンは気を失っているマックスを担いで城を跡にした。
ーシンたちが泊まっているホテルー
「……」
「ん―… なるほど…」
「僕が倒れている時にそんなことがあったんだ…」
「そうなんだよ… マックス…」
「一応、カタリベさんに話したの…?」
「それが… まだできてなくてな…」
「うーん…」
「いや… 一つ気がかりがあって…」
「明日… この町でお祭りがあるらしいんだ…」
「確か… カタリベさんはそこの大舞台で怖い話を披露って聞いたよ…」
「何!?」
第23話 FIN
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます