第22話 幽霊城

「僕は薄暗い城の中を一人でさまよってたんだ…」


「そしたら… 急に… 寒気がしてきて…」


「ふと後ろを振り返ると……」


「何もない…」


「一安心した僕は… 前を振り向くと…」



「オマエダーーーー!!!!」



「ぎゃあーーーーっ!!!!」



…」



「ハァ… ハァ…」


「やはり噂通りだったか…」



「噺家“カタリベ”の本当にあったであろう怖い話…」



「本当…」


「僕が今まで聞いた怖い話で一番だったよ…(絶妙な頬のこけ具合が怖さを倍増させてる…)」



「ハハハ… 光栄だなぁ~…」


「それじゃあ二人で5000ドールだよ~」


「!?」


 シンとマックスは顔を合わせて、財布の中を見た。


 残金5500円


「ありがとうね~」


 残金500円



「ねぇシン…」


「どうしたマックス!?」


「残り500円でどうやって過ごそう…?」


「ふふっ…」


「マックス… 俺に考えがある…」


「本当!?」


「あー… なぜならここは…」



「オカルトの町“ロズ”!!!!」



 シンたちが来ている“ロズ”という町は、かつて幽霊の目撃情報が多発していた(現在は立ち入り禁止)“レイナ城”がきっかけとなり、幽霊が出る町として有名である。


 中でも、噺家“カタリベ”の怖い話はこの町で、一番有名であり、彼の話を聞くために毎日長蛇の列ができている。



「いいかマックス…?」


「ここには世界中のオカルトマニアが集まるんだ…」


「そこでこの…」



「呪いの藁人形、ワラちゃんを売りつける!!(定価1500円)」



「……」


「でっ… 何個作ってるの…?」


「……」


「この1つだけです…」



「だったら1500円にしかならないじゃないか!!」



「それに…」


「両手両足の長さもバラバラだし… なんか変な臭いがする!! こんな人形誰が買うの!?」


「そりゃ… 誰かを呪うためだろ!!」


「……」



「チクショーーーー!!!!」



 シンは呪いの藁人形(ワラちゃんを思いっきり地面に叩きつけた)」


「俺だってわかってたさ!!」


「この町で一攫千金を考えていたけど…」


「この人形が出来たとき、俺何してんだろうって思ったもん!!」


「……」


「そんなこと考えてたんだ…」


「ハァ… ハァ…」


「くそーーーっ… かくなる上は…」


「どっか銀行でも襲うか!?」


「……」


 マックスは思った、この旅は本当に大丈夫なのかと…


 これが… 正義の味方だと聞かされた“ロックオン”のあるべき姿なのかと…



「……」


「おやっ…」


「いや~ 君たち~」


「さっき僕の話を聞いてくれた人だね~」


「もしよかったらなんだけど…」


「その藁人形、僕に譲ってくれないかな~」


「……」



「えーーーーっ!!!!」



「どっ… どうしてこの人形が欲しいんだ!?」


「いや~ なんというか」


かな」


「やった… やったねシン!!」


「じゃあ1500円になりま…」


 ムグッ!!


 シンはマックスの口をつぐんだ…



「すまねぇな… カタリベよ…」


「これは結構高価なものなんだ…」



「もし譲るってなると…」


「1万円くらいになってしまうんだ…」


「それでもいいか…?」


「……」


「う~ん それは、しかたないな~」


「1万円払うよ~」


「そうかすまないなぁー…」



 ニヤリ…



 マックスは思った、こいつはとんでもないクソ野郎だと…




「いやー 儲かった! 儲かった!」


「シン… 僕は、罪悪感でいっぱいだよ…」


「マックス…」



 ポン!!!!



 シンはマックスの肩を叩いた。


「仕方ないさ… ワラちゃんは本来は1万円の価値がある物だったんだ…」


 マックスは思った… こいつは何を言っているんだと…



「うーーん… けど、1万500円だと、すぐ尽きちゃうなぁ…」


「そうだ!! 町の掲示板かどっかに日雇いの仕事を探しに行くか!!」



 ーロズ掲示板前ー


「へぇ~ 結構仕事あるんだなぁ~」


「当分はここで旅費を稼ぐのもありかもな!!」


「……」


「あっ… シン…」


「これどう?」



 ー友達を探してます(報酬5万ドール)ー



「おっ… 人探しか…」


「なになに…」


「10年前にあった女の子にもう一度会いたいです…」


「ご連絡いただければ… すぐに詳細をお話します…」


「せっかくだから… もう一度会わせてあげようよ…」


「うーん… わかった!!」


 シンは近くにあった公衆電話から、掲示板に書いてあった電話番号に電話した。



 プルルルル……


 ガチャ…


「はい、もしもし… カタリベと申します。」


「えっ… カタリベ!?」



 その後、シンとカタリベは電話越しではなく、実際に会って話すこととなり、町の喫茶店で落ち合った。



「……」


「とりあえず…」


「仕事の詳細を教えてくれないか…?」


「……」



「ある女の子を探してほしいんだ…」



「その子は… 僕の初恋の人でね…」



「確か… 名前は“霊花レイカ”だったかな…」



「ほうほう…」


「でっ… その子の特徴を教えてくれないか…?」


「えーっと… 確か…」


「長い黒髪でね~」


「そうそう…」


「赤い靴を履いている女の子だったんだぁ~」



「……」


「えっ… 赤い靴って…」


 シンとマックスは震えだした。


「あのー… カタリベさん…」


「それって、さっきの怖い話の…?」


「……」


「ハハハ!!」


「いやー!! 実はね… その子との出会いがあの話の元ネタになってるんだ!!」


「……」


「ふぅー なんだ… さすがに初恋の人が幽霊だなんてありえないもんな!!」


「そうだね…」 


「せっかくだから… カタリベさん!! その人との出会いを教えてよ!!」


「う~ん… そうだねぇ…」



「あれは10年くらい前の話なんだけどね…」


「僕がまだ幼かったころにこの町に引っ越してきたときに、全然友達がいなかったんだ…」


「そんな時期に… ふと、好奇心でレイア城に入っちゃってね…」


「薄暗いし… 誰もいないから…」


「すぐに出ていこうと思ったんだけど…」


「その時に… 霊花ちゃんに声をかけられて…」


「その出来事がきっかけになって… 僕たちはよく遊ぶようになったんだけど…」


「ある日… その子は急に姿を消した…」


「それ以降… 僕は町の人に聞いても、張り紙を出しても… 彼女は見つからなかったんだ…」


「だから… もう一度会いたいなって、ずっと… 思ってるんだ…」


「……」


「カタリベ…」


「すっげ―いい話じゃないか!!」


「うん!! 僕感動しちゃった!!」


「よし!! 俺たちで絶対見つけてやるからな!!」


「本当…?」


「あー… 俺たちに任せとけ!!」


「ありがとうね!!」



 ー翌日ー


「ねぇ… シン…」


「本当に… 行くの… レイナ城…」


「当たり前だろ…」


「まぁ… まだ午前中だから幽霊なんて出ないさ…」


「じゃあ… 入るぞ…」


 第22話 FIN

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