第21話 マック・スティーブ

 ……


「んっ… ここは…」


「どこだ…?」


「体に包帯がまかれて、手当されている…」



「あっ!!」


「あんた目覚めたんだ!!」


「……あんたは?」


「あたしはキーラって名前だよ!!」


「そしてここは私の家さ!!」



「……」


「あんた俺が何者なのか知ってるのか…?」


「あー… マックス達から全部聞いたよ…」


「……」


「どうして、俺を、手当てしたんだ…?」


「それはね…」


「マックスに頼まれたからさ…」


「えっ…」


「いやー、あいつらがあんたを負ぶってきたときは驚いたよ…」


「とりあえず… 私にできることはやったから…」



「マーーックス!!!!」



「はーい!!!!」



「あとは二人で話し合いな…」



 キーラはマックスを部屋に入れ、自分は外へ出ていった。



「……」


「お前… どうして俺を助けた…?」



「……」


「それは… おじさんが本当に悪い人だとは思わないからだよ…」



「!?」


「お前… 何考えてるんだ!?」


「俺はお前の親父を殺し… お前から現金を奪い取ったんだぞ!!」


「そんな俺を悪いやつだとは思わないだと…」


「人たらしにもほどがある!!」


「……」


「おじさん… 本当は苦しかったんでしょ…?」


「おじさんがドラッグを使った時に「タスケテ……」って聞こえたんだ…」


「!?」


「ふっ… そんなこと言うわけないだろ!!」


「俺は好きで使ってたんだ!!」


「……」



「ほんと… お前はあいつルイスに似ているな!!」



「俺の一番嫌いなタイプの人間だ!!」



「どうして、俺を殺さなかった!?」


「何故、俺を恨まない!?」



「答えろ!! !!」



「……」


「最後の戦いのとき… 僕は父さんに会ったんだ…」


「!?」


「父さん言ってたよ…」



「「あいつナザロフを救ってやってくれ…」って…」



「きっと… 友達として本当にんだと思うよ…」



「……」


「俺もだ…」


「えっ!?」


「俺も、最後にあいつに会った…」



「どれだけ俺が嫌ってもあいつは俺を友として見てくれていたのか…」



 ピタッ……



 ナザロフは涙を流し始めた。


「俺は… 俺は…」



「自分の名誉のために大切な友を裏切ってしまったのか…」



「本当に…」



「本当に、すまなかった… ルイス…」



「……」


「ふぅ―… これにて一件落着ってな…」


 ズキッ!!


「うぉー!! 全身が痛えー!!」


「キーラさん!! 湿布ちょうだーい!!」



 ナザロフは全てを白状し、自首した…。 彼は、今まで犯した罪を償うため、ドラッグを辞め、迷惑をかけた全ての人に謝罪、詫びをし、何十年かかってでも、略奪した金品は全て持ち主に返すそうだ…。



 ー数日後ー


「さてと、忘れ物はないな…」


「ここともおさらばか…」



「おーーい!! シーーン!!」



「!?」


「おーー!! マックス!!」


「やったよー!! 弟は…!!」


「オリバーは数日で退院できるって!!」



「そうか!! それはよかった!!」


 アイツナザロフもいいとこあったんだな…


 まさか治療費を全額負担するとは…


「ところでシン?」


「もう出て行っちゃうんだね…」


「あー… 明日の朝には出ていこうと思う…」


「世話になったな…」


「そうか……」



「あっ!! マックスじゃないか!?」


「キーラさん!!」


「聞いたよ!! オリバー退院できるんだってな!!」


「こうしちゃいられない!!」


「シン!! マックス!!」


「二人とも… こんなめでたい日はないよ!!」



「みんなでお祝いパーティーだー!!!!」



「うん!!!!」



 シン、マックス、キーラのパーティーは、夜まで続いた…。 だが、パーティーの最中にマックスはずっと浮かない顔をしていたのをキーラは気づいた…。



 ーパーティー終了後ー


「それじゃあ… キーラさん… シン…」


「お休みなさーい!!」


「シン!! 明日の朝見送りに来るね!!」


「はいよーー!! 夜道気をつけろよ!!」


「わかったー!!」


 マックスは自宅に帰っていった…。


「さてと…」


「シン… この後、話がある…」


「少し時間いいか…?」


「えっ!?」


「あーわかったよ…」



 ー数分後ー


 キーラは真剣な面持ちで椅子に座っていた。


「……」


「キーラさん…?」


「おーシン… さっきも言ったが話があるんだ… そこに座ってくれないか…」


「わかった…」



「……」


「でっ… 話って!?」


「……」


「単刀直入に言うよ…」



あいつマックスをあんたの旅に……」



「えっ!?」


「……」


「あいつ… あんたがロックオンの話をしていた時、ずっと目を輝かせていただろ…」


「確かにそうだけど…」


「それに… パーティーの間ずっと浮かない顔をしていた…」


「多分… あんたと一緒に旅に出たいんだけど… 言い出せなかったんだと思ったんだ…」


「……」


「キーラさん…」


「確かに、あいつのいる旅は楽しいかもしれない…」


「けれど… 俺の旅は危険すぎる…」


「もしかしたら… 命を落とすかもしれない…」


「ダメだ…」



 キーラは椅子から、降りてシンに土下座をした。



「あいつは… 弟の為にずっと働いてきて… それからやっと解放されたんだ…」


「今度は、自分の為にあいつの人生を使わせてあげたい!!」



「頼む…」



「わかった…」


「!?」


「ほんとか…?」


「あー ただし条件がある…」


「条件…?」


「それは…」



 ー翌朝ー


 キーラの家の前に、キーラとマックスがシンを見送ろうとしていた。


「それじゃあシン元気でな…」


「じゃあね……」


「本当に世話になった… ありがとう!!」


「キーラさん!! マックス!!」


 シンはキーラとマックスを背にし、歩き出した…。



「あっ… もう行っちゃうのか…」


「僕も…」



「おにいちゃーーーーん!!!!」



「!?」


「おっ… オリバー!?」


「どうして… まだ入院中だろ?」


「……」


「お兄ちゃん冒険に出るんでしょ!?」


「えっ…」


「今度帰って来た時に… 冒険のお話してー!!」


「おっ… お前お兄ちゃんがいなくて寂しくないのか…?」


「……」


「お兄ちゃんは… ずっと僕のために、お仕事してたんでしょ…」


「……」


「今度は… お兄ちゃんの番だよ!!」



「お兄ちゃんは自分の為に、やりたいことをやって!!」



「……オリバー」


 マックスはオリバーを抱きしめ、膝から泣き崩れた。


「オリバー… 約束するよ…」


「絶対に帰って来て、冒険の話をしてやるからな…」


「待ってろよ…」


「うん!!!!」



 ポン!!!!



 キーラはマックスの肩を叩いた…


「オリバーは私が面倒を見るから…」



「行っておいで…」



「うん!!!!」



「おーーーーい!!!! シー―――ン!!!!」



「……」


「ふっ…」



「おせーよ…… マック・スティーブ!!!!」



「いや…」



「マックス!!!!」



「うん!!!! 行こう!!!!」



 シンが出した条件…


 それは…


 


 第21話 FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る