第17話 盗賊

「発見者の爺さんの話だと… ここか…」


「確かに、大きな落石で道がき止められている…」


「というか…」



「なんだここ!! 崖道じゃねぇか!!」


「一歩足を踏み外したら… 奈落の底か…(ぶるっ…)」



 シンはその場で胡坐あぐらをかいて座り込み、ランタン型のライトをつけた。



「あいつ、いっつもこの道を通ってたのか… 大変だったろうな…」



 ふぁ~っ…


「眠くなってきた…」


「何も起こらないぞ…」


 シンは、右手で頬をついて寝ころんだ。


「ふぁ~っ… 盗賊退治って意気込んで来たが今日は、出な…」



 ドーーン!!!!



 突然、何かが落ちてきて、轟音が響き土埃が舞った。


「なっ!! 何だ!!」



「チッ!! またガキかよ……」


「ガキかよ……? もしかして、お前がマックスを襲った盗賊か!?」


 土埃が晴れて、暗闇から全貌を現した。


 その姿は、2メートルを超えるだろう長身で、やせ細った男だった。


「マックスだぁ~!? あーもしかして、昨日のガキか?」


「あいつ… ガキのくせに500万ドールも持ってやがったからよ……」


「俺が有難く頂戴しておいたんだよ!!」


 ハハハ!!


 男は低い声で声を上げて笑った。



「そうか… よかった…」



「すまないが… 返してくれないか…」


「あれは大切な金なんだ……」



「ハハハ!!」


 男はまた声を上げて笑った。


「オイオイ冗談だろ!! お前あのガキのお友達なのか何なのか知らなねぇが……」


「あの金は全部俺のもんだ!!」


「一銭たりとも渡す気はねぇよ!!」



「あの金は…」


「あの金は… あいつの弟の弟の治療費らしいんだよ…」


「あいつ両親がいなくてさ、必死で弟の為に稼いだんだ…」


「だから… 頼む…」



「そうか… そうだったのか…」


「悪いことしたな…」


「じゃあ…」



「また頑張って稼いでくれや!! ハハハ!!」


「けど… もしかしたら… 治療費、稼ぐまでに弟死んじゃうかもな!!」


「……」



「そうか… わかった…」



「だったら… 力ずくでも返してもらうぞ!!」




「スティーブよ…」


「何… 父さん?」


「いいか… これからの人生、どんな苦しいことがあっても…」


「しっかり、前を見て歩んでいくんだぞ…」


「……?」


「時には、小石に躓くこともあるだろう…」


「疲れて、立ち止まりたくなることもあるだろう…」


「けれど、最後は…」


「一歩でもいいから、前へ進んでいけ…」


「これが、俺との約束だぞ…」


「うん!! わかった!!」



 父さん…



「はっ!!」


「ここはどこ!?」



「マックス!! 目が覚めたのか!!」


 キーラはマックスを抱きしめた。


「よかった!! 心配したんだぞ!!」


「キーラさん…?」


「じゃあ… ここはキーラさんの家か…」


「マックス… 一体何があったんだい…」


「詳しく教えてくれないか…」



「実はね… キーラさん…」


「暗くてあんまり見えなかったけど… 僕を襲った人…」


「どこかで見たことあるんだ…」




「おいおい!! 力ずくって、おめぇ…」


「そんな、小さな体で何言ってんだよ!! ハハハ!!」



 ムカッ!!(155cm)



「誰がチビだ!! マッチ棒みたいな、体しやがって!!」


「マッチ棒……?」


「あーすまない… 姿


「まだこの姿…?」


 男はその場に座り、背負ってきた、巨大なリュックから、ガラス瓶、謎のドリンク剤…


 一本の注射器を取り出した。


 こいつ一体何を…


「ハァハァ… これこそが最高の快楽…」



 ブスリ!!!!



 男は自分の右腕に、注射を刺した。


 その後、すごい勢いで、謎のドリンク剤を飲み、ガラス瓶に入っている大量のタブレット錠剤を飲みだした。


 えっ… こいつ一体何してんだ…


「ハァハァ… いやー最高の気…」



 ドクン!!!!



「ガ八ッ!!」


 男は血を吐き、うずくまって、右腕で自分の心臓のあたりを、抑えた。


「おい!! 大丈夫か!?」


 シンが男に近づこうとしたとき、男の体が、肥大化しだした。


「なっ… 何だ…?」



 変化が終わると、男の体は、初めて会った時とは打って変わり、筋肉隆々になり、身長がかなり高くなっていた。


「ハァハァ… ハァーー」


「いやー この姿、我ながら化物じみてるねぇ…」



 能力名:作られた体ドーピング・ボディ



「さてと…」


「無事に帰れると思うなよ… くそチビ!!」




「マックス… どこかで見たことあるってどういうこと…?」


「とにかく行かなきゃ…」


「いっ… 行くって…?」



「昨日襲われた場所さ…」



「だめだ!! マックス!!」


「あんた、まだ傷が癒えていないし…」


「危険すぎる!!」



「ありがとう!! キーラさん!!」


「いつも僕のことを思ってくれて!!」


「だったらここで安静に…」



「けれど…」



「けれど… 今回は絶対に行かなきゃいけないんだ…」


「えっ!?」



友達シンが僕のために闘ってくれてるんだ!!」



「マックス… あんた… なんでそのことを知ってんだ…?」



「この腕輪… シンのでしょ…」


「温かくてね…」


「頑張れって励まされてるような気がするんだ…」



「それと…」


「不思議な気分なんだ…」


「何か… もう一人の僕がいてね…」


「その人が僕の能力を使っているような感じがしてね…」


「きっとシンが僕の能力を使って、戦ってくれてるんだって確信したんだ…」


「だから僕も…」



「一緒に行って闘うよ…」



「マックス……」



「わかった!!」



 バーン!!



 キーラはマックスの背中をたたいた。


「ギーラざん… いだい…」


「シンと一緒に、悪いやつをやっつてけてやんな!!」


「わがっだ…」



 マックスは身支度を済ませると、外に出た。


「よし…」


 マックスはクラウチングスタートの姿勢をとった。



「よし… 行こう…」



 セット……



 マックスは自分の足に全身の力を込めた。


 そして…



 ゴーーーー!!!!



 それを爆発させたて走り出した。


 シン… 必ず行くよ…



 能力名:走人ランナー



 第17話 FIN

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