第16話 マック・ルイス

 ー翌日の明け方ー


「大丈夫か!!!!」


「しっかりしろ!!!!」



「んん… 今日はやけに外が騒がしいなぁ…」


 シンは外にでた。



「ったく… 朝っぱらから何の騒ぎだよ…」



「マッ… マックス!!!!」



 そこには、全身傷だらけのマックスが横たわっていた。 シンはマックスのもとへ駆け寄った。


「どうしたんだ!! ボロボロじゃないか!!」



「マックス!! 目を覚ませ!!」



「んん……っ」


 よかった… もう少しで目を覚ましそうだ…



「そうだ!!」



「キーラさん!!」



「キーラさん!!」



「んん~~」


「ど~したんだ~ シーン…」


 キーラが眠そうな顔をして、外に出てきた。



「マックス!!!!」



「一体どうしたんだ!! その傷!!」


「キーラさん!! ともかくマックスを中で手当てしよう!!」


「わかった!!」



 キーラとシンはマックスをキーラの家に入れ、応急処置をした。




「ふぅー……」


「キーラさん!! マックスの容態は!?」


「なんとか… 体調は安定してるみたいで、今は眠ってるよ…」


「そうか… よかった…」



「ところでシン… マックスに一体何があったんだ?」


「何でも、第一発見者の爺さんの話では、隣町に行く途中で倒れていたらしい…」


「キーラさんこれって……」


「昨日言ってた盗賊の仕業じゃ…」



 キーラは椅子に深く腰を掛けて座り、頬杖をついて答えた。



「恐らくそうだろうね……」



「ってか… あいつの親はどうなってるんだ!?」


「マックスがあんな状態になっても顔一つ見せないし… そもそも、子供に働かせて何を考えているんだ!?」



「シン…」


「マックスの両親はもういないんだ…」


「えっ!?」



「20年前の話だ、あいつの父親“ルイス”は短距離走の選手だったんだ…」


「ルイス… ってまさか… “マック・ルイス”のことか!?」


「そうだよ…」



「ルイスって、たしか…」



「“神に嫌われた選手”って言われてた人だよな… (詳しくは知らないけど…)」



「“神に嫌われた”か… 私は神に好かれて…」



「“人間に嫌われた選手”だと思うよ…」



 !?



「“マック・ルイス”は陸上に関して、他の選手とは比べ物にならないほど、秀でた才能があったんだ…」


「どの大会に出ても、圧倒的に他と差をつけ優勝。 何度も自身が打ち立てたワールドレコードの更新など…」



「まさしく、といっても過言ではなかったと思うよ…」



「しかし、ある日… 事件が起きた…」



「それは、ルイスが大会へ行く途中の送迎中に起こった…」



「ルイスが乗っていた車が事故に巻きまれたんだ…」



「あー聞いたことあるよ…」


「確か… 大型トラックとの接触事故だろ…」


「そう…」


「それは… ルイスが乗っていた車を含め4台の車を巻き込む大事故だったんだ…」


「その事故で、乗っていた車は大破、かろうじて、ルイスと運転手は一命を取り留めたんだけど…」


「ルイスは事故の後遺症で二度と陸上が出来ない体になってしまったんだ…」



「その後、トラックの運転手と、この事故を計画した犯人は捕まったんだけど…」


「その犯人が… ルイスの活躍を妬んだ陸上選手の一人だったんだ…」


「その事件以来、ルイスは廃人のようになってしまい…」




 !?


「そして、ルイスの妻(マックスの母)も弟を生んだ後、その現実に耐えられなくて、ルイスの後を追って…」



「マックスは、本当にルイスが好きでね… 選手として活躍するルイスを誇りに思っていたんだよ」



「キーラさん…」


「ん…!?」


「俺は… マックスと知り合えて本当によかったと思う…」



「あいつは… 俺と同じくらいの年齢なのに、必死になって、弟のために働いている…」 


「そんなやつが…」



「なんで、こんな目に合わなければいけないんだ!!!!」



「なぁシン…」



「私もそう思う……」



 キーラから大粒の涙が流れた。


「あいつはね、毎日頑張ってたんだよ、たった一人の家族の為に、それなのに…」



「あんまりじゃないか……」


 キーラは声を上げて泣き出した。


「キーラさん」



「わかった!! もう泣かなくていい!!」



「!?」



「俺が金を取り返してくる!!」



「だから、もう泣くな!!」



「えっ… でも、私… あんたに払うお金なんてないよ……」



「そんなもんいらねーよ!!」



「それに… 一宿一飯の恩義があるからな…」



「ありがとう……」



「おう!!」



 シンは立ち上がり、寝ているマックスの方へ立ち寄った。


「マックスちょっと力を貸してくれ…」


 シンはマックスの右足に金の腕輪をつけた。


「さてと… じゃキーラさん…」


「日が落ちるまで寝てくるわ!!」



 ー日没後ー


 シンはアキレス腱のストレッチをしていた。


 さてと、マックスの能力があんまりよくわかんないけど多分足を使う能力ならストレッチすれば怪我しないだろ。


「じゃあキーラさん…」


「行ってくるよ… マックスを頼んだ…」


「わかった… 気を付けて…」


 シンは自分の右腕に銀の腕輪をつけ、走り出した。



「今のところ何も起きないな…」


 シンが村の外れまで来たときに右腕の銀の腕輪が光りだした。


「なんだ!?」


「これがマックスの能力か!!」


 シンは自分の体に起きた変化に驚いた。


「両足の筋肉が鋼のように固いのに、伸縮性があるのか一歩が踏み出しやすい… そして何より…」


「体が軽く、走ってても全く疲れない…」


 シンは一度止まり、その場で軽くジャンプした。


「これはすごい能力だ…」



「よし… いくぞ!!」


 シンは思い切り走りだした。


 待ってろよマックス… 必ず、取り返してくる……


 第16話 FIN

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