第14話 走る少年

 俺は… いったい… いつまで歩き続ければいいんだろうか…


 師匠はずーーーーーーっと東にある山とは言っていたけれど…


 町も人も… 何にもない道が延々と続いている…


 これじゃあ… 目的地に着く前に飢え死ぬぞ…



 あー…


 俺の旅は始まったばかりだよな… まさかここで終わるのか…


 仲間との出会いや、強敵との闘い、それから芽生える友情みたいな、ワクワクする展開は全くなかったぞ…



 もうだめだ…



 バタン!!



 シンは倒れた。


 あー… やばいな… 目がかすんできやがった…


 前がぼやけて見える…



 ブーーン!!



 それに…


 幻聴も聞こえてきた…


 バイクの走る音が聞こえる…


 こんな場所にバイクなんて通るわけないのに…



 ブーーーーン!!



 くそっ… うるさいなぁ…


 静かに死なせてくれよ…



 ブーーーーーーン!!



「だからうるっせーっての!!!!」



 !?



 あれっ!? 振動がする… これ近づいてきてないか!?


「やった助かった!! やったぞ!!」



 ブーーーーーーーーン!!



「あのーーすみま…」



 バーーーーーーン!!



「あれっ!? 俺の体が宙に浮いている… あっ… まさか轢かれたのか…」



 バタッ!!



 シンは地面に落ちた。


 くそっ… 轢き逃げか… 


 許さん… 死ぬ前に、俺を轢いたやつををこの目に焼き付けて…



 地獄に落としてやる!!



 ギッ!!



 シンは薄れゆく意識の中、大きく目を見開いて前を見た。


 あいつが犯人か… すごい速いスピードで遠ざかっていく…



 あれっ… おかしいな…


 バイクじゃなくて… 人が走ってないか…



 ガクッ……



 シンは気絶した。



「ごめんよーーーー!! あとで助けに行くからねぇ―――ー!!」




「あっ… あんた…」


「あんた…」


「大丈夫かい!?」



「ん… ここは… 部屋の中!?」


「よかった!! 気がついたみたいだね!!」


「あんたは…!?」


「私は、キーラ!! そしてここは私の家!!」


 そこには、20代前半くらいの金髪の女性がいた。


「あんた道端で倒れてたんだってね…」


「それをマックスが担いできたんだよ!!」


「マックス… 誰だが知らんが… 世間にはいいやつがいるんだな…」



 グゥ―――――!!



「あっ…」


「ハハハ!! あんた、何も食べたないのかい!?」


「いいよ!! これから、昼食の時間だからあんたの分も用意してやるよ!!」


「多分、マックスも来るだろうしな!!」


「本当か!! それはありがたい!!」



 ー数分後ー



「うぉーーーーすげーーーー!!」


 そこには大量の料理がテーブルに並べられていた。


「それじゃあ!! いただきまーす!!」



 パクッ!!



「うんめー!! なんだこのカレー!!」


「ハハハ!! それはよかった!! いっぱい作ったからたくさん食べろよ!!」


「あー!! そうするよ!!」



 ー数分後ー



「んんー…」


「どっ… どうした!! まさか口に合わなかったか…」


「いや… 料理はおいしいけど… もう腹がいっぱいなんだ…」


「えっ… 腹がいっぱいってあんたまだ… カレー2皿しか食ってないじゃないか!!」


「何か… アンタが勢いよくご飯を食べて、皿が積み重なっていく… 少年漫画の主人公がよく見せる食事シーンみたいなのを期待してたんだが…」



「何か… すみません…」


「前までは、結構食べれてたんですけどねぇ… 年かな…」


「ハハハ!! まぁいいよ!! 自分の食べれる分だけ食べな!!」


「あー… ほんと申し訳ないです…」



 バターーーーン!!!!



「おーーーーい!! キーラさー―――ん!!」


「おっ!! マックスが昼飯食べに来たみたいだ!!」


「ん!! 本当か!!」


「マックス――――こっちに来てくれ――――!!」


「はーーーーい!!」


 マックスが、玄関からシンたちのいる部屋に入ってきた。



 ん!?



 ん!!!!



「おっ… お前は!!」



「さっき俺を轢いた(ぶつかった)やつ!!!!」



 そこには、灰色の髪、黒いジャージ姿の少年がいた。


「いやー… さっきは悪かったね!!(ハハハ)」


「おかげで死にかけたんだぞ!!」


「まぁまぁ!! 僕がぶつかる前にもう、倒れてたじゃないか!!」


「むしろ、僕がぶつからなかったらそのまま、餓死してたよ!!」


「ぐっ… 確かに… そうかもしれん…」


「へぇー あんたらにそんな面白い出会いがあったのか…」


「まぁ過ぎた話… それより飯だ!! みんなで食べるぞ!!」


「そーするよ!!」




「へー アンタ結構大変なんだねー だから…」


「その小さい体でロックオンなんだ…」


「小さいは余計だろ!!」


「ごめん!! ごめん!!」


「ねぇ、キーラさん…」


「ロックオンって何?」


「ロックオンってのは… まぁ…」


「“やばいやつ”だよ!!」



 ズコッ!!



 シンは椅子から転げ落ちた。


「あのなー… ロックオンってのは…」


「“賞金稼ぎ”のことだ!!」


「えーーーっ!! 何それ!! もっと詳しく聞かせて!!(キラキラ)」


 マックスは目を輝かせながら聞いた。


「あーわかったよ… まずな…」



「現代、世界中の人々が不思議な力を使えるだろ。 その力を利用して、悪さをする奴らがたくさんいるんだ。」


「昔は、政府がなんとか世界全体の安全を統治してきた。 けれど、犯罪の多様化や犯罪者組織の拡大などが原因で。 政府だけでは、対処できなくなったんだ。」


「そこで政府は、賞金稼ぎである“ロックオン”の強さに目を付けた…」


「だから、俺たちは主に政府から受けた依頼を仕事としているんだ。ちなみに、政府から依頼されなくても、犯罪者の確保や治安維持などに貢献することでいくらかもらえるんだ(むしろこっちの方が多いかもしれない)」


「いわば正義の賞金稼ぎってわけ。」



「なんだそれ…」



「なんだそれ… かっこよすぎるだろー!!!!(キラキラ)」


「あーそれはよかった…」




 ゴ――――――ン!! ゴー―――――ン!!




 !?


「ん!? もうこんな時間!?」


「マックス、あんた明日早いんだろ!?」


「そろそろ帰りな!!」


「あっ!! そうだね!!」



「それじゃ―!! 二人ともおやすみなさーい!!」


 バタン!!


 マックスは、キーラの家を出た。


「さてと… とりあえず… あんた、今日はここに泊まりな!!」


「えっ!! 有難くそうさせていただきます!!(ぺこり)」


「それと…」


「せっかくだから、明日、マックスに私たちが住んでる村を案内させてもらいなよ!!」


「えっ… ここら辺、他の人住んでるの!?」


「あれっ… 知らなかったのか!?」


「そうか… 今日、1日中家の中だったしな…」



「シン!! ここは、チホーノ村って言うんだよ!!」



「チホーノ村…? 聞いたことのない村だな…」


「まぁいいや…」


「それじゃ!! おやすみー!!」


 第14話 FIN

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