第12話 チャンスは一瞬

 ラッセルはシンを担ぎ、走り出した。


「いいかチビ助… チャンスは一瞬だ…」


「俺が、放り投げる。 そして、その手がでかくなる能力で空洞の端に掴まるんだ。」


「わかった!!」




 ラッセルたちは、レナルドの足元にたどり着いた。


「あいつの体内はどうなっているのかわからない… だから…」


「俺はおめぇの勝ちに賭ける!!」



「いけーーーーーっ!!」



 ラッセルは勢いよくシンを放り投げた。



「あぁぁぁぁーーーー!!」



「くそっ… やってやるぜ!!」



 巨大な手ジャイアント・ハンド!!



 ガシッ!!!!



「やっ… やった!! 何とか捕まったぞ!!」



 シンは巨大化した両手でぶら下がりながら、レナルドの内部を覗き込んだ。


「おいおいまじかよ… 真っ暗じゃねぇか… まさか、中身は空っぽなのか…」


「いったいどうすればいいんだ!?」


「おーい!! チビ助ー!!」


 !?


「もう、工場が目の前に迫ってきている!! 何があったんだ!?」


「それが、体の中に何もないんだ!!」


「何だって!?」



 いったい… こいつは、どうやって動いているんだ!?


「もし本当に何もなかったら… 攻撃する前に真っ逆さまへ落ちちまう!!」


「一体どうすれば…」



 ……ドクン



 えっ!?



 ……ドクン



 なんだこの音…!?


 鼓動…!?


 ということは…!?



 どこかに心臓があるのか!!



 けれど真っ暗で何も見えない… 黒い心臓があるのか…!?



「くそっ!! もうやけだ!!」



 シンはレナルドの体内へ飛び込んだ。



「チビ助ー!!」



 スタッ…



「嘘だろ… 足に感触があって落ちない…」



「まさか!!」



 シンは下に耳を当てた。


「やっぱり!! 真っ暗なだけで、足場がある!!」


「そして…」



 鼓動がする…



 これは、心臓か!?



 だったら…



 巨大な手ジャイアント・ハンド!!



 シンは手を組んで腕を上げ、それを叩きつけた。


「フンッ!!」


 メキッ!!!!



 !?



 グォォォォォォォォーーーー



「おいおい!! 急に叫びだしたぞあいつ!? チビ助大丈夫か…」


「おー すっげー叫び声!! けれど効いてるっぽいぞ!!」



 ナッ… ナンダ… イマノゲキツウハ… 



 時間がなさそうだな…


「一気に決める!!」



「ハァァァァァァァ……」



正義の連拳は悪を砕くダブル・フィスト!!」



「ハァハァ……」



「もう一回!!」



正義の連拳は悪を砕くダブル・フィスト!!」



 バキッ…



 バキバキバキ!!!!



 巨大な両拳の連打により地面に大きな穴が開いた。



「グァァァァーーーー」



「やっ… やったぞ!!」


「穴が開いた!!」


「そして… 見えたぞ!!」


「動いている茶色い球体… あれが心臓だな!!」


 シンは空いた穴から、体内へ侵入した。



 何だここは… 


 この球体が、太く茶色い管とつながって浮いているだけで、他は何もないぞ…



 スタッ…



「着いた、これを破壊すればいいのか!?」



 スッ……



正義の拳は悪を砕くクリム・フィスト!!」



 ドッ……



「グァァァァァーーーー」



 レナルドは今までで一番大きな叫び声をあげた。


「ハァハァ… クソッ… ナンダイマノシンゾウノイタミハ… マサカタイナイニシンニュウシャガ…」


「ダガモウオソイ… アトスコシデオレノシャテイケンナイダ…」



「うぉー なんだアノ叫び声は… けど、ここが弱点ってことはわかった…」



「あとは…」


「この拳が持つ限り攻撃し続けるだけだ!!」


「ハァァァァァ……」



正義の連拳は悪を砕くダブル・フィスト!!」



「グッ… グァァァァァァァーー」


 レナルドは立ち止まり右手で心臓を抑え始めた。


「おいおい… どうなってるんだ!? なんであの化け物苦しそうなんだ!?」 


「もしかしてチビ助の仕業か!?」



「ハァハァ… ヤハリダレカイルナ… サッキカラ、オカシイトオモッタゼ…」



「ヒネリツブシテヤル!!」



 バン!!



「なっ… なんだあいつ!? 自分の心臓部分を思い切り叩いて壊したぞ!?」



「ふぅー もう少しのはずだ!! やってやる!!」



 バキッ!!



 !?



「まっ… 眩しい…」



「これは外!?」



「ハァハァ… ガキガ… サンザンヤッテクレタヨウダナ…」


「ソウダイイコトヲオモイツイタ…」


 レナルドは右手でシンを捕まえた。



「ぐっ… ぐはっ…」


「フフフ… コノママニギリツブスノモイイガ、コウジョウヲツブシテカラデモオソクナイ…」


「ソノタメノトクトウセキヲヨウイシタ…」


「くそっ… だめだ… このままじゃ壊されちまう…」


「どうすれば…」



「……さん」


「シンさん…」


 !?


「これは夢… おっ… おっさん…」


「すまねぇな… おれ工場を守れないかもしれない…」


「……」


「ありがとうございます…」


「えっ…」


「本当にありがとうございます…」


「僕たちの居場所を守っていただいて…」


「シンさんにはとても感謝しています。 けれど、もうひと頑張りお願いできますか…」


「私もお手伝いしますから…」



「わかった!!」



「ツイタゾ… コウジョウニ…」


「コノママツブシテヤル!!」


 レナルドは左腕を大きく上げ、それを振り下ろした。


「ハハハ!! オレノカチダ!!」



「嘘だろ、もうだめだ……」



 その時、レナルドの右手が光りだした。



「ナッナンダ!? コノヒカリハ!?」



「うぉぉぉぉーーーー!!」



 バーン!!



 シンは能力でさっきよりも10倍以上、大きな手になり、レナルドの腕を破壊した。


 そして、心臓の方へ跳んだ。



「くらえーー!!!!」



正義の拳は悪を砕くクリム・フィスト!!」



 メキッ…



 メキメキメキッ……



 バリン!!



「グァァァァァァァ…………」



 レナルドの動きが止まり体が崩壊し始めた。


「やっ… やったぞ…」


 シンは気絶し、そのまま落ちていった。


「ちっ… チビ助!!」


 ラッセルは、シンを抱き上げ救出した。


「よくやったぞ!! チビ助…」



「くっ… くそっ… あと少しだったのに…」


「まさか… 核を壊されるとは…」


 ガ八ッ…


 壊れた心臓の中から、レナルドの本体が出てきて、落ちていった。


 第12話 FIN 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る