第9話 シンVS処刑人

「さて… お嬢さん。 あのランドルが手も足も出ないとは、相当な手練れと見た。」


「…そりぁどうも。」


「けれど、あんた、まだ、本気を出していないだろ?」


「……あー」


「とある事情で、能力は使いたくないんだ。 それと…」


「あんたらみたいな小悪党に能力を使う必要はないしね。」


 ムッ…


「いやーこれは手厳しいな。 まぁ、あんたから本当の実力を引き出せるように頑張るよ…。」


「じゃあ、始めるか…」


「…」


 ゴゴゴゴゴゴ…


「何だ!? 地震か!?」



 能力名:巨岩の騎士フェルゼンリッター



「グオォォォォォォーー」


「あいつ、巨大な岩の化物に!!」 


 師匠、大丈夫か…?


「おいおいおい、チビ助!! そんな戦闘中によそ見してちゃいけないだろ!!」


「誰がチビだ!!」


 まぁ確かに、今はこいつを倒すことに集中しよう。


「ったく。 兄貴、楽しんでやがる。 …まぁいい。 おれもこいつボコって遊んでよ。」



乱れ打ちバレッジ・ウィップ!!」



「うわっ! ととと… くそっ、ムチを避けるのが精いっぱいで攻撃ができない!」


「おいおいどうしたぁ~ 逃げてばっかじゃ、俺を倒せんぞぉ~」


 バン!!


 壁……


 しまった!! 逃げ場がない!!


「へっへっへ… 追い詰めたぞ!! 死にやがれ!!」


「くそっ…」



 ゴンッ!!



「ぐううううう… 痛ってー!!」


「誰だ!? 石、ぶつけやがったのは!!」



 !? 助かったのか…



「ハァハァ… シンさん!!」


「おっさん…!?」


「今のうちに、逃げてくれ!!」


「私だって、能力があるんだ!! 戦ってやる!!」



 ギロッ!!



 ゾクッ…


「てめぇか…? 俺に石をぶつけたのは!?」


「そっ、そうだ!! もうお前たちの好きにはさせないぞ!!」


「そうか… わかった…」


「お前は、本気で俺を怒らせた殺す…」


「まっ まて!! 相手は俺だろ!!」


 レナルドは一歩一歩ゆっくりと近づいて行った。


 あっ、あいつ怒りで何も聞こえてないのか!?


「おっさん!!」


「きっ きやがったな!!」



 能力名:巨大な手ジャイアント・ハンド



「行くぞっ!!」



 グキッ!!



「し、しまった…。 こんな時に腰が…。」


「ハッ!!」


 バチーン!!


「ガ八ッ…」


 !!


「おいじじい! さっきはやってくれたな!!」


「頭にきた、このまま殺してやる!!」


「くっ…」


「クソッ このままじゃ本当に死んじまう!!」


「やめろ!!」


「はぁはぁ… それじゃ、お望みどおり終わりにしてやるよ…。」


 レナルドは、工場長の足首にムチを巻き付けた。


 そして… 高く放り投げた。


「じゃあサヨナラだ…。」



切り裂き打ちリッパーザウィップ!!」



 ガハッ…



「おっさん!!」


「ハハハ やっぱ無抵抗のやつを痛ぶるのは… さいっこうだぜ!!」


「おい… おい… しっかりしてくれ… おっさん!!」


「あーシンさん… どうして逃げなかったんだい…?」


「そりゃ あんたが戦ってんのに逃げることなんてできないさ。」


「はぁはぁ… 嬉しいじゃないか… こんな老いぼれのためにこんなにも沢山の人が集まってくれるなんて… けれど、もうだめだ勝てっこないよ… あの工場はさっさと渡してまた一から…」



「おっさん!!」



 !?



「本当にそんなこと考えてんのか!? あんたのやりたかったことが、あんな奴らにめちゃくちゃにされて悔しくないのか!! 俺だったら悔しくて…」



「シンさん!!」



 涙!?



「ここは私の人生なんです。 そして、多くの人の希望なんです。 それをあんな奴らに渡すなんて…」



「死んでも嫌に決まってるでしょうが!!」



 ふぅ…


「なぁんだ。 おっさん…」



「それを聞けたら十分だ!!」



「あとは俺に任せろ!! 絶対にここを守ってやる!!(ニッ)」


「ありがとう… 後は頼みましたよ… (ガクッ)」


 さてと… 


 その時だった。


 腕輪…!? そうか、師匠が金色のやつ一つつけてるんだっけ?


 結局これが何なのかわからないけど…。 そうだ! おっさん、これ親父の形見なんだ、だからあんたに預けておくよ…。


 カチッ!


 シンは工場長の右腕に金の腕輪、左腕に銀の腕輪をつけた…。


「よし! おっさん、絶対に勝つから、それをつけて見守っててくれ。」


「さてと、おいムチ男!!」


「待たせたな!! 俺が相手だ!!」


「ハッハッハ 見てなかったのかよさっきの! お前もそこのじじいみたいになりたいのか!?」


「……何言ってるんだ? 倒されるのはお前の方ださっさと来い雑魚!!」


「ムッ」


「てめぇ、覚悟しろよ。 減らず口も叩けなくしてやる!!」



「くらえ!!乱れ打ちバレッジ・ウィップ!!」



 落ち着け… あいつの技は一見隙が無いように見えるが。 さっき師匠がやったみたいに一瞬で間合いを詰める… そうすれば… 



 ダッ…



 ほとんど威力のない、両腕の付け根部分にまで近づけるはずだ!!



「このまま、一撃、お見舞いしてやる!!」


「何っ!!」


「落ち着け… こいつの攻撃はほとんどダメージがない、距離をとって返り討ちにしてやる!!」



 そのときだった…


「…さん。 シンさん。」


 おっさん!?(心に語りかけているのか?)


「私は、あなたに出会えて本当に良かった。 そして、あなたが私たちの為に戦ってくれることを本当に感謝します。」




「本当は私にもっと力があれば共に戦えるのだけれども、それが出来なかった。 だから…」


「私の意志をあなたに託します!! 受け取ってください!!」


「おっさん…」


 銀の腕輪がまばゆい光を放った… そして…



 くらえーー!!!!



正義の拳は悪を砕くクリム・フィスト!!」



「何だと!! 拳が巨大に!! グッ…」



 グハッ!!



「はぁはぁ… 今度は、本当にぶっ飛ばしたぞ…」 


 というかさっきのって…


「おっさんの能力…!?」


「それじゃこの腕輪は、つけた人の能力が使えるようになるのか!?」


 だったら師匠の時にはなんで発動しなかったんだ…?


「まぁいいや!! よし、師匠の応援に行くか!!」


「おっさん、ちょっとこの力貸りるぜ… ここは必ず俺が守るからな!! 見守っててくれ…」



「ハァハァ… まずいな… あの岩の体、相当強固だ… どうやってダメージを与えれば…」


「オイオイ、オジョウサン。 ココマデクセンシテ、アンタマダホンキヲダサナイノカ?」


「ハァハァ… 仕方ない… 本当は使いたくないが… 能力を使うしか…」



「おーい!! 師匠!!」


 !?


「加勢に来たぞーっ!! (ニッ)」


「シン!! あんたムチ野郎は!?」


「倒して来た!! 残るはあいつだけだ!!」


「そうか… いろいろ聞きたいことがあるが、とりあえず、あいつを倒してからだ!!」


「わかった!!」


 第9話 FIN

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