第7話 師匠現る!?

 ウルズ・レイは俺の女師匠だ。身長は今の俺より10cmほど高く、髪は短めで、いつも黒のジャージを着ている。 今年、30半ばを迎えるのにも関わらず、今だ独身。 もちろん相手もいない。 理由は、単純明快、武道一筋の人生だったため、力が馬鹿強く、おまけに超凶暴なため、男が寄ってこな…。



 ――ゴンッ!!



「凶暴で悪かったな!」


「イッテー! 何すんだ! 読者の皆様にわかりやすく説明してたのに!」


「悪意があるんだよ! 悪意が! せっかく、人が助けてやろうと来てやったのに!」


「チッ! いいよ別に、わざわざ破門した、弟子の面倒なんて見なくても…」


「よくねーんだよ! あんたを立派にするって、ライアンと約束したんだから!」


「おっ親父と… どうして!?」


「まぁ色々あってな…。 てか、本当に小さくなったのな!(テレビで見て驚いたよ!) 前は見上げるぐらい身長が高かったのに、今は私より小さいじゃないか。」


「ほっ… ほっとけ!」


「それで、能力も使えないと…。 だから、あれほど、技を鍛えておけと言っていたのに…。 能力に頼るからいけないんだぞっ!」


 ギクッ…


「う…うるさい! 大体、修行なんて、「タイヤを引っ張って走ったり」、「雑巾がけ100往復」だったり…、拳法の練習と関係なかったじゃねぇか!!」


「はぁ… あのなぁ。 これは、体力づくりの修行であって、型だけ学んでも体力が無かったら意味ないだろ! というか… お前、サボってばっかで、真面目に参加してなかっただろ!」


 ギクッ…


「そっ… その通りでございます。」


「ったく… で、どうすんだこれから?」


「うーん パン工場で働いて、ちょっとずつ借金を返していくかな?」


「ちょっ、ちょっとまて! 何年かかると思ってるんだ!?」


「えーっと… わかんない(テヘッ)」


「はぁ… そんなことだろうと思ったよ。 一つ提案がある。」


「何?」


「まず、常にこれを持っておくんだ。」


「金と銀の腕輪が2個ずつ? なんだこれ?」


「それは、‟契約者の腕輪リンクブレスレット”。ライアンが形見として私に託したものだ。」


「へぇー」


「担当直入に言う。 あんた…。」



「もう一度、ブラックと戦うつもりはないか…?」



「えっ… どういうこと?」


「いいか、もう一度言う。 ブラックと戦うつもりはないか?」


「ざけんな… ふざけんな! あんた、今の俺がどんな状態か知ってるだろ!」




「そうさ、俺は、ブラックに負けて、何もかも失った負け組だよ! どうせ、今の俺を笑いに来たんだろ! 世間の奴らもそうだった、あんたもあいつらといっしょだ!」




「挙句の果てには、こんなアクセサリー渡して、死んだ親父の形見だと! いいか、あいつのせいで、俺は、俺は故郷の笑いものだったの知ってるだろ!」




「俺は、あんな奴と同じ血が流れているのが恥ずかしくて、村を出たんだ!! あいつみたいな負け組と一緒にするな!!」


 ……おい。


 !?


 歯ぁ食いしばれ……。



 バチン!!



「イテッ! 何すんだてめぇ!」


「いいか、2度と私の前で、ライアンを侮辱するな!!」


 レイの顔は怒りに満ちており、殺気を感じた…。


 うっ……


「それと、腕輪がいらないなら、返せ。 あんたに期待した私がバカだった…。」


「く、くそっ! ほら、いらねぇーよ! もう2度と俺の前に現れるな!」


「あーそうするよ。 邪魔したね。」


 レイは去っていった。


「けっ 胸糞悪い最悪な日だ…」


 ~翌日、パン工場~



「おはようございまーす」


 ……シーン


 あれっ、聞こえなかったか?


「おはようございまーす」


 ……シーン


「あれー、誰も反応しないや 仕方ない裏口から入るか…」



 あっ! おっさん(工場長)いんじゃーん!


「おはようございま…」


 えっ…



 なんだあの男は? すっげーいかつい(物陰に隠れた)



「だから、この工場は潰すって言ってんだろ!」


「まっ! 待ってください! 借金はもう完済したでしょ!」


 借金…?


「完済だぁ…? おめぇ利子ってもんを知らねぇのか…利子を!」


「そっ、そんな! 契約書にはそんな事書いてなかったじゃないですか!」


「んなもん、今決めた。 とにかく払えなければ、この工場を潰してレジャーランドを作るだけだ!」


 そんなめちゃくちゃな…。


「お願いします! この工場だけは…この工場だけは見逃してください!」


「わかった。 じゃあ、明日までに1億ドール準備しろ! それで見逃してやる!」


 1億だと…。


「いっ 1億ですか!」


「あーそれで手を打とう(まぁ 準備できたらの話だからな) できなければ… じゃ、明日」


「まっ… 待ってくださーい」


 男は去っていった。


「おっさん…?」


「あっシンさん。 困った、恥ずかしい所を見られましたね。」


「今の話どういうこと…?」


「いや、実はですねここの工場、多額の借金して作ったんですよ。」


「そうだったんだ。 なんで?」


「実は、私… 貧しい村の出身でしてね、当時は食べるものがなかったんです。」


 


「そんな中、何日かに一回支給されるパンがとてもおいしくてね。 将来は、誰もがおなかいっぱい食べられるような社会にしたいと思って、作ったのがこの工場なんです…。」


「……おっさん。」


「けれど世の中は、そんなに甘くなくて、まんまと騙されてしまったんですよ。 私のパンがないと生活できない人が沢山いるのに…情けない話です。」


 グスン……




 そんなこともあり、全従業員、休みになっていたらしい。 一億ドールなんて払えるわけもなくて、工場は明日、閉鎖になるようだ……。



 ――シンはベンチに座り物思いにふけていた。


 俺は、今まで何をしていたのだろう。 英雄を気取って、結局は自分の為、結果、周りに誰もいなくなった…。 それに比べて、あの人は、誰かのために人生を捧げ、必要とされる存在になっている…。 俺なんかより、よっぽど英雄だな…。



 俺は……。 情けないな……。



 罪悪感に押し潰されそうになりながら、ベンチで眠りにつこうとしたときだった――。



「起きろ!!」


 ――!?


「しっ… 師匠!! どうしてここへ!?」


 てか、あんなことあったのになぜ?


「いや実はね、朝方、この街を散策していた時、多くの貧困層らしき人たちが、プラカードを作っているのを見かけてね、不思議に思って聞いてみたんだよ。 そしたら…」


「なんと、あんたの働いているパン工場が不当に閉鎖されるって話じゃないか。 なんでも、あそこのパンは彼らのライフラインになってるらしいな。」


「あー、俺も聞いたよ。」


「だから明日、デモをするらしい。 私も、こういうの許せないから、参加しようと思ってさ。 それで、あんたはどうするかと思って……。」


「おっ… 俺はいいよ… 相手強そうだったし、たぶん束になっても勝てないと思うぜ…。」


「そっか…」


 レイが去ろうとしたときだった――。


「シン… 明日来るか、来ないかはあんたの自由だ。 けれどな……。」


 ――!?



。」


 ――はっ


「あんたに、この腕輪を渡しておく、あとは自分で判断しな…。」


 レイは去っていった。


 ~翌朝~


「んっんーん。 なんだまだ朝の6時か。 さてと、トレーニングして、!!」


 第7話 FIN 

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