第5話 シンVSブラック

 いいか、落ち着けよ俺、ブラックは過去の人物だ、今なら勝てる。 何も考えず、ただいつも通り戦えばいい。 


 ――そして、


 今回は本気で行く!


 ハァァァァァァァァァァ


 右腕が、だんだんと太く、大きくなっていく、そして、ミサイルほどの大きさへと変貌を遂げた。


「ハァハァ いいか、ジジイ容赦なんて一切しない、お前を殺すつもりで行く、覚悟しろ!」


「ほう」


 一気に距離を詰めて、正面からこの右腕であいつをぶっ飛ばす。死ぬかもしれないが、犯罪者だ、やってやる。


 ――ビュン


「正面からくるか」


 拳の圏内に入った、相手は何の構えてないし、行けるっ! ハァ―ッ!



「覇王の一撃≪オーバーロード・バンプ≫!!」



 ゴゴゴゴゴゴゴ、その一撃は地ならしを起こし、地を割るすさまじい一撃だった。 普通の人間だったら、命の保証はまずない。


「ハァハァ 吹き飛ばしたか、衝撃が強すぎて何の感触もなかったけどな」


 土煙舞う中、シンは勝利を確信していた。


 しかし


 ――もう終わりか?


 噓だろ!?


 そこに、立っていたのは、無傷のブラックだった。


「あっ、ありえない! 技を外したのか、それとも効かないのか!?」


「いいか、冥土の土産に教えてやる。 表社会では名の知れたロックオンかもしれないが、裏ではこのレベル、


 く、くそっ きっとうまく当たらなかっただけだ、今度は右拳であいつを叩き潰す。


 行くぞブラック! 


「愚かな、無謀という言葉を知らんのか?」


「うっせー! 覇王の≪オーバーロード≫」



「裁き≪ジャッジメント≫!!」



 おっ おいどうなってるんだこれ!?


 なんで?


 なんでこいつ――



「おれの拳を小指で支えているんだ!?」



 ありえない!? ミサイル並みの破壊力があるんだぞ!?


「皆、そのようなことを言っておったわ、よほど自分の力に自信があるのだろうな」


 しかし――



「その自信が、身を滅ぼすのだ!」



「るさい… うるさい!」


「俺は覇王なんだぞ! そして今、一番強いロックオンなんだ! こうなったら、あいつを何発、何十発、何百発もぶん殴って、倒してやる!」


「そして、現実を受け入れることが出来ないため、過去にすがりつき、思考停止で戦おうとする――」


「醜いな――」


「黙れ! 黙れ! 黙れ! てめえを倒して、俺が一番になるんだよ!」


「はぁ――」


 シンは何も考えず、ブラックに殴り掛かった。 しかし、ブラックの体に触れた時、力が抜けてしまうため、ダメージを与えることが出来ず時間と体力だけが消耗していった――


「ハァハァ なんなんだよこいつは、触れた瞬間、力が抜けていく」


「もう終わりか、早く、我に能力を使わせてくれ」


 !?


「なん… だと!?」


 バタン!!


 絶望だった――


 今まで、ロックオンとして、順調すぎる日々を過ごしてきた。だからこの、恐怖への対処が分からない。


 俺は死ぬのか――


 ピタッ!


「雨か… 強くなりそうだな」


「汝よ、もう戦いは終わらせる、覚悟しておけ」


 ブラックは、仰向けに倒れている俺の顔に自分の手をかぶせた。俺は戦う気力など、とうになく、ただ死を待つのみだった――


 そして、ブラックは何かを唱えだした。



 汝に絶望を、死よりも深い絶望を――



 ザー ザー ザー ザー



 雨が強くなってきた…



 これが死か… 心地いいな…



 シンは、深い眠りに入った――



「ふぅ ただの賞金稼ぎに正義を期待した我が馬鹿だったか――」



 ブラックは、その場を去っていった。



「んっ…… んー ここは……? あの教会?」


「生きているのか?」


「帰るか」


 雨は上がり、雲一つない快晴だった。 しかし、これから過酷な運命が彼に待ち受けていることをまだ知らない。


 ん? なんか、教会が大きく感じるぞ。


 第5話 FIN

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