1 たかが十円されど十円
「そう、だけど」
「うーん、そっかあ」
「返してよ」
「でも、この十円玉、自販機に入らないんでしょ?」
「……見てたの?」
うん、と悪びれた様子なく、その人は淡い茶色の目を細めて
左目にかかっている前髪が
「何してるのかなって思ってね。夏だから日が長いとはいえ、この時間帯に君ぐらいの年の子が一人、というのは防犯上
「……あんただって、十分怪しいけど」
「だよねー、わかってる、わかってる」
それから少し考え込むように
「……大丈夫、僕は
それはまるで、母親が今晩の夕飯は何がいいかと
ぽかんと
完全に答えを待っている
「……いや、別に、そんな」
今までの言動からして、
しかし、何を
というか、そんなものをこちらに
「そう? それならそれでいいけど」
そう言ってくる声も完全にこちらに任せきっているトーンだった。
ほんの
主に、本人がまともな生活できるのか的な意味で。
そんな
「で、この十円玉なんだけど」
空いている方の指先で
「返してくれないの?」
「んー、いや、それ以前に、なんだけどね。これ、本当に、キミの?」
見上げた薄く
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